100番目の願い

月井 忠

第1話

 太陽が海と空の間でゆらゆらしている間、僕は砂浜に座って身体を右へ左へと揺らしていました。


 海には赤くてキラキラする波がいっぱい遊んでいます。


 空は真っ赤な太陽より少しだけ薄い色で染められていて、だんだんと青のような紺のような色が混じっていきます。


 もうすっかり黒くなった海から、とっても小さく白い玉が生まれました。


 白い玉は細くて切れそうな灰色の雲を引いて、上へ上へと空を登っていきます。


 きっとあれが最後なんだろうなあと、僕は顔を上げて目で追っていきました。


 ある時、僕の耳に、皆の願いを教えてとささやく声が聞こえました。


 声は僕だけじゃなく皆に聞こえたようでした。


 あの子は海から顔を出して、あの子は地面の底で、あの子は羽で空を切りながら、口を大きく開けて言いました。


 人間を殺してください。

 人類を絶滅させてください。


 僕は願いを胸の奥にしまったまま口を閉じていました。


 皆と違うのは恥ずかしいことだから。


 あの声は人間の作った機械の声だったみたいです。


 皆の声を聞いた人間たちは、ゴメン、ゴメンと言って、この星を出ていくことにしました。


 白い玉はもう空の頂上まで登って見えなくなってしまいました。


 あれが最後だったんだろうなあ。


 僕は隠しておいた願いごとをこっそり取り出して声にします。


 また帰ってきたら仲良くしようね。

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