過日残夜
育毛剤と五十肩
───少しだけ、あの夜を思い出していた。
過日残夜1
「頼む、この通り!
目の前で両手を合わせ、ペコペコと頭を下げる男。俯く度に薄くなった頭頂部が見える…育毛剤、オマケでつけてあげようかしら…思いながら
「何で俺なのよ?他に居るでしょ頼れる人」
「いないよぉ!!いないからお願いしてるんだよぉ!!」
涙目のオッサン───
新宝公司という建設会社の敷地内に、一緒に潜入してほしいとの依頼だった。
新宝公司は貧民街やスラムなど、下層階級の若者を集め山奥で何やら土木工事を請け負う業者。ここ最近城砦内でチラホラ名前を聞くようになった比較的新参の会社…
「老い先短いジジィの最後の頼みだと思って!ね!後生だから!」
「そんなに歳食ってないじゃないの。還暦もまだでしょ」
「もう近いよぉ」
「そうだっけ?んじゃ
「え?本当?
のらりくらりとかわす
侵入となると‘鍵開け要員’が要る。ピッキングは確かに得意技、前に鍵を無くしピィピィ言っていた
にしても、こういうの【天堂會】以来だな…ボケっと考える
仕方ない。
「わーかったよ!行ってあげる!てかなんでそんなに入り込みたいのよ
了解の返事をもらい明るい雰囲気を見せた
「
「
「地域の
首を傾げる
「端午節で街がバタバタしてる今がチャンスだと思うんだ。工事現場も
場所も調べてあるんだよっ!と
「準備いいな。物知りね
「この山林は美東村に所有者が居た区画でね、城砦福利の
感心する
「…俺も行く?」
きたる祝日端午節に備え、香港及び九龍城砦は熱気が上昇中。街を包む祝賀ムード、始まりだすイベントの数々、この祭事に付き物の
唯一の趣味である大食い──大食いが趣味のカテゴリに入るかはさておき──を取り上げるわけにはいくまい。
「だいじょぶよ。お祭り楽しんできて?ま、ヤバそうだったら呼ぼうかね」
決行は早い方がいいか、今日も別に暇だし。暗くなったら行ってみましょと提案する
「ありがとう
「なに?五十肩?」
変なポジションで固まる
また夜に戻ってくると言って店を出て行く
「どっちの
お
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