香港競馬
四連単とオールイン
香港競馬
「え、これだけぇ…?」
九龍城ネオン街きっての風俗店【宵城】の最上部、朱塗りの柵に囲まれた部屋の中。
「オメェの借金引いたらそんなもんだろーよ。利子つけてねぇだけ感謝しろや」
先週末の競馬、
「いいもん、これを元手にまた増やすから。勝ち分オールインしてやる」
「自重しろよクソ眼鏡。無くなっても知らねぇぞ」
「博打うちはチマチマやんねぇの!
「たりめーだろアホ」
「また三連か?」
「いや、四連」
「複?」
「単」
「馬鹿だな
選んだのは四連単───4着までの馬を着順を含め予想するやり方で、当然3着までを的中させる三連単より難易度は上がる。
ちなみに‘単’ではなく‘複’であれば選んだ馬の着順はバラバラでもかまわないのでハードルは下がるが、もちろん配当金も下がってしまう。
基本、
【東風】に集まるメンツの中でも
両者勝率は悪くないが、最終的に財布を膨らます
だが、
「
「ん、これで宜しく」
「
「上から3頭はな」
「え、嘘!?4着何にした!?」
「1番」
「あー!!迷った!!」
頭を抱える
「一騎打ちだな…」
テレビをつけながら呟く
間もなく出走時刻、出走馬がパドックからゲートへ続々と移動していく。
テレビから流れる映像とアナウンスに静かに耳を傾ける2人。そして────
《さぁ全頭出走!!3番は少し出遅れたか!?》
「よし!!いいぞ!!」
3番は人気の馬だったが、今回はあまり落ち着いた様子を見せていなかったため好スタートを切れないのではと推測をしていた。くわえて相性が良くない騎手とのコンビだ…追い上げるのも難しいだろう。そんな理由により、
結果その姿は馬群に沈んでいき、展開は今のところ狙い通り。
1頭抜け出して逃げている馬は2人共2着に数字を入れている。現在中団で足をためている栗毛の馬が最後の直線で先頭に躍り出るだろうという予想。
3着は同じく横並びで走る黒鹿毛の若武者、逃げ馬を追い上げるものの今一歩届かずとなるはず。
第1コーナー、第2コーナー、順調だ。
問題は4着に食い込んでくる馬である。正直、3着までならこのレースはまぁまぁ堅くオッズも大した事はない。
4着まで買うからこそ配当金が跳ね上がり、まさに一攫千金と言えるわけだ。
…そもそも‘それだけの額を賭けている’からではあるが。
第3コーナー。中団に動きがあり1番5番が僅かに前に出て、思わず
《第4コーナー、直線!!》
最後の最後、勝負どころで全頭一斉に残された力を振り絞る。
栗毛の馬の末脚は恐ろしく、あっという間に先頭を抜き去りトップをかっさらった。それでも2番手は譲るまいと逃げ馬は懸命に芝生を駆けて、黒鹿毛はギリギリそれに追いつかずか。
1番と5番も馬群から飛び出してフルスロットル、4着に食い込むのは果たして。
「行け行け行け行け!!まくれ!!」
「差せ!!!!」
1番と5番が並び
火花散る接戦、ほぼ同着のような滑り込み、しかしハナの差でゴール板に先に到達したのは─────…
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ただいまぁ」
カラカラと【東風】の扉を引く
並べられた2つの皿の上には豆腐のみ。かろうじて乗っかっているネギが若干の彩りを添えているも、どうやら味付けは
「あれ、何この夕飯」
「豆腐デス」
「競馬負けたの?」
「ソウデス」
鋭い
今日競馬するって言ってなかったはずなんだけど…普通にバレてるな…そんな事を考えながら
「いいよ別に。これ買ってきてる」
手に持っていたビニール袋をテーブルに乗せる
「えっなんで!?」
「
セールの時間帯だったし安かったからちょうど良かった、ちゃんと2人前あるよと言いつつ席に座って
「うぇぇ…ありがとう
「全額賭けちゃうのやめなよいい加減」
「うん…次回は…」
涙声の
「ちゃんと
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「
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