大乱闘と身柄確保
偶像崇拝9
【天堂會】本部、その向かいの建物の屋上に陣取り数時間。夕飯の
そこからどうなったのかまだわからない。
充分に人数が集まったら【天堂會】にカチこむのだろうが、現在どの段階なのか不明だ。
【天堂會】メンバーは裏口を使ってるのか?これだと中に何人いるのか把握が難しい。
とはいえ例え全員居ようが大した数ではないし、【天堂會】と【和獅子】がぶつかるのであれば残り物──相手をしなければならない人数──はかなり少ないと思うけれど。
それにしても、暇。もうすぐ真夜中になる…今日は突入しないのだろうか。
そんな風に思いウトウトとしかけたところに
「
「あ、
「え、ほんと?まだ誰も来てな…」
言いながら正面玄関に視線を落とすと、ついさっきまでは人影が無かった路地にワラワラとたくさんの人間が集まっていた。
獅子柄を身に着けている者が多い。なるほど、いかにもチーマーといった風体。
「来た。ほんとだ。様子見て俺も中入る」
「気ぃつけてな?無理したらあかんで」
「うん、わかった」
通話を切り、
でも別にバレたらいけないわけでもないし、仲間を殺されて怒っている【和獅子】は全面抗争上等なのだろうからそれも妥当か。
【天堂會】も【和獅子】も言うなれば只のヤンキー集団。マフィア同士であれば話は多少変わるが、これはヤンチャな奴らの喧嘩に等しい。
そして────ガラスが割れる派手な音が、いきなり夜の静寂を裂いた。
【和獅子】のメンバーがなんの前触れもなく【天堂會】入り口の扉を叩き割ったのだ。お洒落なガラス張りのドアが粉々になる。
唸り声を上げながらどんどん建物内部へと突入していく人影。間を置かず、何発も銃声が響いた。
始まってからは早い。今まで散々待っていたのが嘘のようだ。
こちらも急いで
【和獅子】は
けど
だが1階は今大混乱。出来れば参加したくはないし、ボイラー室ならそのまま隠れていてもらおう。せっかく屋上にいるんだ、上から見ていくか。
そう考え、
数メートル下がり、助走の距離を取る。軽く走って柵を足掛かりに一気に跳躍。
張り巡らされた電線を避けるためにクルッと空中で回転し、難なく【天堂會】の屋上へ着地した。
そのまま正面玄関とは逆方向へ。窓のある裏路地側の壁へと向かう。
14階は資料やデータがある特別な部屋だって
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「えっ何!?」
独り言にしてはかなり大きな声量で
急に聞こえたガラスの割れる音、それはまだいい。問題は何発も鳴り渡る銃声。
戦闘が始まったことは明白だったがマフィアがここまで早く動く可能性は低い。となると、一体どこのグループの襲撃で、どうしてこんなに突然なのか。
もしかして…撃ったのは
いや、あいつらはそんな目立つ事はしない、多分。そもそもきっと
他の組織だろう、しかしだとしたら窮地だ…
【天堂會】側にはやはりスパイだと判断されるだろうし、仕掛けてきた側からすれば【天堂會】の一員に見えるという最悪のパターン。板挟みになりどちらにしてもお陀仏。
どうするのが最善だろうか?両手にドラッグ抱えて喜んでる場合じゃない。
とりあえずバリケードを作るべきか。
あとは隠れていられる場所…待てよ?これだけの騒ぎの最中であれば、ドサクサに紛れて窓を割って逃げられるのでは?
そう閃いた
弾が顔の数センチ横の壁に着弾する。
「あっぶな!!」
また大きな独り言が出た。被弾ギリギリだったので許してほしい。
襲撃してきたグループが【天堂會】のメンバーだと思って発砲したのだろうか。
そりゃあ、こんな時間に【天堂會】のビルから顔を出していたら普通に考えてそいつは【天堂會】幹部以外の何者でもない。
違うんだといくら訴えたところで認めてもらうのは無理がある。
仕方無しに隣の部屋に逃げ込む。例の薬の段ボールがたくさんある部屋その2。
この箱でもバリケードを作るか?そんな物は秒で突破されそうだけれど無いよりマシか。
あたふたしていると今度はすぐ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
バレないようにこっそりと窓から中を伺う。部屋では何人かの人間達がバタバタ慌ただしく武器の準備をしていた。
「おい、なんの騒ぎだ!?」
「どこかのチームの奴らが襲撃してきやがった!!1階で何人かやられたぞ!!」
「抗戦するのか!?
「
口々に物を言う【天堂會】の面々、随分と忙しそうだ。
「
ん?薬師?
ピッキングスキルはないんだよなぁと思い、
どの部屋に居るんだ?手前端だと近いから助かるんだけどと考えた矢先、銃声がして2つ向こうの窓のそばに弾が着弾した。
下の路地に居た【和獅子】の発砲。幸い、非常階段が暗いので
「あっぶな!!」
聞き慣れた声が
バタンとドアの音がして、間髪入れずもう一度同じ音がする。ドタドタと歩き回る気配、どうやら真横の部屋に移動してきたようだ。
その音の方向を確認しに向かった【和獅子】の姿が見えなくなると、
コンコン。コンコン。気が付かない。
仕方ない。
その身体を、ガラス目がけて爪先から思い切り振り下ろす。
ガシャァン!!!!
ガラスを割って
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