抜刀術と熊猫曲奇
青松落色3
飲んでいるうちに揉めたのだろうか。フードで顔はよく見えないが、転がり出てきた男の身体のいたるところにガラスの破片が突き刺さっている。灰色のアスファルトに真っ赤な血が飛び散っていた。
「おい、うるせぇぞクソカスが。裏でやれよ裏で。俺のいい気分が台無しだろ死ねボケ」
歯に
しかも、裏でならいいのか。
やられている男を助ける気など
中華風の丸いサングラスをかけた
「なんだチビ、お前から殺すぞ」
「あ?テメェこそケツの穴みてぇな顔して喋んじゃねぇよ。目障りだから消えろつってんだ」
どんな顔だというのだ。
その
「口の形かな…」
「くはっ」
真剣に考えた
ますます怒りを買ったようで、暴言を吐かれた男は
「
「え?俺のせい?どうしよっか」
「ハッ、この
言うなり、
これは意外な展開だ、自分が蒔いた種とはいえあの面倒くさがり屋の
「アレ、見られそうだね」
「
「見たことはあるけど…」
キンッ。
と…成金男がかけているサングラスが、急に上下に真っ二つに割れ地面に落ちた。その
「ちゃんと見えたことはないね」
斬られたと気付いた男が、慌てて顔に手をやって後ずさる。もうちょい前に出てたら目玉切れてたぜ、お前足が短くて良かったなと
‘居合’だ。
居合術に関しては達人の域で、抜刀から納刀までが恐ろしく速い。来るとわかっていればギリギリ視界には
不意打ちであれば刀が見えすらしないだろう。
「次は誰が斬られてぇんだ?」
薄笑いを浮かべる
「
「あ?」
「丸腰の相手に、武器はよくない」
「真面目か!!」
思ってもない事言いやがって、いや思ってるホントホント、嘘つけ思ってねぇって顔に書いてあんぞ、などとギャアギャアしているうちに、成金達はスタコラ逃げ出していた。
男を追いかけようとした
「なんで追っ掛けようとすんの、あんまり暴れたらレストラン出禁になっちゃうでしょ」
車が発進してからもまだ不満げな表情の
「店内で暴れたんじゃねぇし平気だろ。なったら
「俺とばっちり過ぎない?」
「笑ってたじゃねーか、あの笑いが引き金だぞ」
「それは…そうかもね。あははっ」
お土産の
「てか、あそこの地域にもああいう荒っぽい感じの喧嘩あるんだね」
「そりゃ九龍なんだからあんだろーよ」
「けど確かに、あの辺では珍しいかな…他の街から来たか最近金持ちになった人達なんじゃない?」
住んでみるとわかるのだが、九龍は各地域によって住人タイプも犯罪タイプも種類が違う。
スラムでは殺人や人身臓器売買などの凶悪犯罪が
一方、富裕層地域では詐欺や脱税等金融関係の犯罪に関わる者が大半で、表立った争いを避ける傾向にあるため路上では口論すらあまり起こらない。
ふと
ひとつちょうだいと
この子たちは
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