【中編】亜人の王[The King Of Demi-Humans] −汝は亜人なりや?−【5万字以内】
石矢天
序・燎原よりいずる
〇 亜人(デミ・ヒューマン)
それは“人”という種の亜種を意味する。
亜種という言葉が、元の種の下位に位置付けられた区分であることを
故に人は、亜人を見下し、そして搾取する。
従わない者がどうなるかは語るまでもない。
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燃え盛る炎は肌を焦がし、家はもちろん、ボクが生まれ育った村の全てを焼き尽くさんとしていた。父も、母も、紅蓮の炎の中に消えていった。
弾け飛んだ火花が頬に触れ、刺すような痛みが走る。
「――――――ゔうっ!!」
痛みを訴える声は、掠れたうめき声のまま、炎の中へと吸い込まれていく。
ノドはすっかり煙に
パチパチと炎が
家が崩れて重低音と共に空気が震えた。
不意に響き渡る悲鳴と、愉快そうな
誰かが襲われているのだ。
だけどボクには、仲間を助けに行けるような勇気もなければ力もない。
ただ逃げるように、声が聞こえる方向とは逆に足を向けた。
――なにが『逃げるように』だ。
逃げているのは、まぎれもない事実ではないか。
我が身可愛さに村を捨て、仲間を見捨てて逃げている卑怯者。
せめてボクにあいつらに抗うだけの力があれば……。自らの小さな体躯と、細い手足に歯噛みすることしかできない。
ふらつく足腰に精一杯の力をこめて、ボクは村の裏手にある林を目指した。
「おいっ! こっちにも亜人がいるぞ!!」
背中に
思わず振り向いたボクの目に、人影がふたつ飛び込んて来た。
恐怖でもつれる足を必死で前に出す。
しかし林に入ったところで、ついに追いつかれてしまった。
もう追いかけっこは終わり。
ニヤニヤと愉悦の笑みを浮かべるふたりの男が、ボクに一歩、また一歩と近づいてくる。
なぜボクたちが、こんな目に遭わなくてはならないのか。
そんなことは誰かに問うまでもない。
――彼らが『人』であり、ボクたちが『亜人』だからだ。
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