第44話 さらに五年後。

 さらに五年。

 幾度かの、光の侵攻を退け。町全体が、俺たちのテリトリーとなった。


 子供たちもあらたに生まれ大きくなって来ると、おもしろいことに、俺の子供は闇を操れた。

 心配していた花蓮も、無事に子供が出来たが、杏果の方が先に2人目が出来て悔しがっていた。


 そして、里村のじじい。

 疾(と)うに八十歳は越えたはずだが、無茶苦茶元気。

 どこかから、レーザーカラオケを見つけてきたようで、張り切って歌っている。


 

 そんな平和を享受している折、遠くから来ただろう、気圧の変化を感じる。


「でかいチーム同士がやり合ったか。それとも、核でも誰かが使ったのか?」

「だが、光とかは、見えないし振動も無かったのう」

 里村のじいさんと、圧力の来た西の空を見つめる。


「これまで、文化的生活を必死に守ってきたが、一度周りを見てきた方が良いのかもしれんな」

 里村のじいさんが、ぼそっとつぶやく。

「そうだな。俺たちと同じように、光も遺伝をするのなら、時間と共に勢力を増す。司など、まだ十歳にもなっていないのに、力はかなり強い」

「あー司坊な。わしたちとは違い、魂との親和性が高いのか、手足のように扱っておるからの」


 遊ばせている、あいつらに仕事をさせるか。

「カメレオン部隊に偵察をさせるか?」

「そうじゃな。たまには仕事をさせるか」

 そう言って、里村のじいさんもにんまりする。


「と、言うことだ、明智。仕事をしろ」

 壁に向かって、話しかける。


「どうして、分かるんだ?」

「秘密だ。七彩を、連れて行って良いから」

「本当か?」

 それを聞いて、明智の顔がほころぶ。


「ああっ。でも、おまえを受け入れるかどうかは知らん」

 七彩は神御との戦いの後、俺の首を落とそうとした女の子。

 今では二十五歳になり、立派な娘になった。


 かなり、ボーイッシュで活発だが、みんなには人気がある。

 能力も、明智より上だろう。


 大体明智も、千夏との間に五歳の男の子と三歳の女の子。子どもが二人居る。

 よしんば、手を出せば、夫婦喧嘩になるのが目に見える。


 それに、明智には内緒だが、2週に一度くらいは、俺の寝所へ忍び込んでくる。


 この世界、ともかく人を増やさないといけないので、自由恋愛を主として、生まれた子供は全員が見て育てている。

 無論夫婦もいるが、法的なものでは無く、周りに言えばそれは守られる。


 それに、闇による支配で、同意なしの行為は制限がされていて出来ない。

 その辺りは、実に平和だ。


 数日後、正式に明智達へ偵察を頼む。


 変化前の物だが、地図を渡す。

 あと、白地図も見つけたので一緒に渡す。周囲で、光の集落があれば偵察。

 距離と、規模。それを調べ、帰ってこいと言って送り出す。


 今回の偵察。異変のあった西側だけでは無く、七彩の意見で三方位に同時に出る。

 明智は泣いていたが、各方面の隊長と言うことで、泣き笑い状態。

 同じく、カメレオン能力者。各チーム五人ずつ。


「全員。無事に帰ってくること。物理的トラップもあるかもしれない。気を付けろ」

 だが、出がけに「行ってきます」そう言って、七彩が俺にハグとキスをして、明智のみ士気が落ちたようだ。

 だらだらと、各方面に走り始める。


 さてその間に、俺たちは日課になっている、インフラのチェックとメンテナンスを行う。

 特に、上水近くは、きっちりチェックと警戒をしないといけない。

 俺たちには毒など効かないが、他の住人には弱い者達もいる。



 農産物の備蓄と、海産物の冷凍庫。大分くたびれてきているが、何とか稼働している。

「冷媒を造るプラント、どこにあったかな?」

「エアコンを作っているメーカーが、持っていたイメージじゃな」

「その辺りも探すか」

「馬鹿な、光たちが壊していなければ良いがな」

「そうだな」

 備蓄用には、海側にあった倉庫を利用している。

 魚の冷凍も重要だが、米なども、十度以下で低温貯蔵しないと虫食いになる。

 温度を、チェックする。

「何とか、大丈夫そうだ」

 用心の為、此処の電源は、専用の発電機を使っている。


 光たちは、特に僕(しもべ)になっている奴らは、自由意志がない為安全だが、能力者が力に振り回されておバカになる傾向がある。

 破壊と、略奪が大好物。

 そのため、食い物が無くなると移動をする。

 イナゴの大群、蝗害(こうがい)と同じだ。


 そう言いながら移動して、じいさんと目の前に広がる田んぼを見る。

 少し前までは、麦が植えられていて、完全二毛作。


 隙間隙間に、大豆を植えている。

 大豆は必需品だし、多少は、緑肥になる。

 それに、大豆は日本食すべての基本。

 醤油、豆腐、味噌。

 無くてはならない。


 今はすでに、人の住んでいない家屋は潰して畑になっている。

 無論その他の野菜も、種を取っているが、品種改良されているものは種ができても育たないとか、育っても別物になったりする。

 そのため、腋芽とかで挿し芽を使って増やすらしい。

 農家のじいさんから、詳しくて教えて貰った。


 こういう知識の伝承は重要だ。

 本屋の本もきっちり保護してある。


 余談だが、確保した本は意外と人気があり、大部分の住人は、その先が続かない物語を読み、その先を考えて創作品が生まれている。人は意外とたくましい。

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