フライの行進

ミンイチ

第1話

 揚げ物店の中の人間が全員眠りに落ちた時、売れ残ったフライたちが動き出す。


 まずはとんかつ達がショーケースから飛び降り、クッションの代わりになる。


 次に、エビフライ達が飛び降り、踊るように動きながら周囲に生物がいないか警戒する。


 周りが安全なことを確認すると、コロッケのような体が柔らかいフライ達が飛び降りる。


 そして全員が揃うと、電話線の近くに向かう。


 そこには、近くの飲食店、惣菜屋でつながっている端末がある。


 そこでは、次の日に廃棄される食品達専用のコミュニティサイトへと接続できる。


 そしてそこで、どこの地域で作られた(とられた)食品で自分達は作られ、そしてどのような人につくられたかを自慢し合っている。


 最近は国内の、そして同じ地方、都道府県で作られた食材が、そしてギャルっぽい見た目の真面目な女の子に作られることが誉のようだ。


 それぞれの店の食材達が意見の交換をしているうちに、店主が起きる時間になったのか、別れを告げる投稿が多くなってくる。


 この店の店主もそろそろ起きる時間だ。


 フライ達は廃棄される食品専用のトレーに戻っていく。


 まずはとんかつ達が上に上がり、コロッケ達を持ち上げていく。


 その間にもエビフライ達は周りを警戒する。


 コロッケ達が登り切ったらエビフライ達が登っていく。


 そして、全フライが上り切った瞬間、店の厨房に店主が現れた。


 店主はいつものようにフライ達を小さく砕き、一つの粒が足の爪ほどの大きさになると、店の裏にある小さな広場にそれを撒く。


 撒かれた途端に、それを待っていたかのように鳩や雀のような鳥達がそれを食べに降りてくる。


 鳥達がきたのを確認すると、店主は店の中に戻っていく。


 それから少しして、鳥達が全て飛んでいった後にはフライ達はひとかけらも残っていなかった。

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フライの行進 ミンイチ @DoTK

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