泥酔して部屋を間違えた謎のお姉さん、まさかの学校の先生だった件。
あげもち
プロローグ マシュマロ。
……。
なんていうか、柔らかくて、暖かくて……ずっと触っていたくなるような感じがした。
夢でも見ているのだろうか。……いや、夢しかあり得ない。このマシュマロみたいな柔らかさも、ふわふわと手のひらに伝わる温かさも。まさに小さい頃、雲の上に乗った時の夢のそれと同じ感覚だった。
今日も学校だからそろそろ起きなくてはいけないのに、もう少しだけこの柔らかさを感じていたい。
そんな風に、夢と現実の間で指を動かす。
するとその瞬間だった。
「……んっ」
柔らかいマシュマロから艶やかな声が漏れたのだ。
夢にしてはなんだかはっきり聞こえてきた声と、さっきからほんのりと漂うお酒のような香りに、俺の意識がどんどん浮上してくる。
そして、ゆっくりと持ち上がった瞼の先にとらえたのは……。
「……は?」
白い素肌に浮かぶ小さなホクロと、あらゆるものを挟んで離さないような、豊満なI時の谷間だった。
まるで、効果音に『デデンっ!』というのがつきそうな迫力と大きさに、一瞬、これはお尻なのでは? と思ったがそんなわけがない。
俺の常識が間違ってなければ、ケツにブラはつけない。
そうなればこれは消去法的におっぱいになる。いや、もうそれ以外あり得ない。
だが、何を思ったのか、それで妙に納得した俺は、再び目を閉じる。学校までもう少し寝るか……。
ぼーっと眠気に身を任せるように再び瞼を下す。しかしその瞬間。
「……んっ、ん〜! よく寝たぁ……って、え?」
そんな華奢な声に俺は、ゆっくりと瞼を持ち上げる。そして、少し上に視線を向けた時、彼女と目があった。
クリっとした大きくて純粋そうな瞳と、ストレスなく櫛が通りそうなほどツヤツヤな黒い前髪。
端正に筋の通った鼻と桜色の大人っぽくて薄い唇。やんわりとした顔の輪郭。
まさに可愛いと美人の間のような顔をした、綺麗なお姉さんが口をぽかんと開けて俺を見つめていた。
黒い瞳の上を何度か長いまつ毛が上下する。そしてきっと彼女もはっきりと目覚めたのだろう、カッと目が見開かれる。
故に直感で感じた。あぁ、やばい。
「あ、あぁ……とりあえず、おちつ」
「きゃああぁぁぁぁあ! 妖怪添い寝お化けぇぇ!」
お姉さんの絶叫と共に、俺の左頬に可愛くないビンタが飛んできた。親父にも殴られた事のない俺の初ビンタは、謎の美人お姉さんによって奪われたのだ。
……つーか、妖怪添い寝お化けってなんだよ、せめて変質者であれよ。
とある日の早朝。桜が散り始めた新学期の一日目は、こんな思い出だった。
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