ル・パンダ慕情
菜月 夕
第1話
「ル・パンダ慕情」
「そう、こうしてル・パンダはここを去ったのです。あの黒マントがキモだったのです。あの時、空中に散らばった書類の影に隠れて自分の黒マントに包み、そこに有ったゴミ袋に同化して翌日、他のゴミ袋と共に回収され、そこから逃亡したのです」
そこに登場していたのは少年探偵・有栖川だった。
ル・パンダ現れるところに彼は必ず押しかけ、ル・パンダの手口を解き明かすのだ。
「なんと、我々がそんな事を見逃すとは。さすがル・パンダ!」
神宮寺警部はその大胆な手口に舌を巻きつつ、傍らの事件現場に
紛れ込んだ少年をみつめ、「この闖入者の少年を放りだせっ!」と周りにいる刑事たちに号令をかけた。
まったく、事件現場を荒らすとは。
神宮寺警部は有栖川少年の推理の鋭さに感銘しながらも業務は遂行するのであった。
事件現場を放り出された有栖川少年は路地裏に隠れ、その扮装を解いた。
「ふっ、苦しかった」
探偵帽子を取るとそこから長い髪が現れ、脱いだ上着から膨よかな胸がシャツを押し上げていた。
そう、少年探偵・有栖川の本当の名は他之倉アリス。
かってル・パンダに救われ、借金の形に裏社会を支配していた黒塚にメイドとしてこき使われながらあわや美味しく頂かれるところであった矢先にのル・パンダ襲撃であった。
黒塚の悪事は暴かれ、彼女の借金も黒塚の偽装であったために解消され、形として取られていた黒塚邸も彼女の元に戻り財産を得、こんな真似も出来るようになったのだ。。
「そう、あの時。私は確かに助けを求めた。そしてル・パンダ様がやってきた。あの時から私の心はル・パンダ様のもの。」
彼女はル・パンダに助けられたと思い込み。吊り橋効果を通り越し、ル・パンダに恋してその現れる所に駆け付け、押しかけ、乱入してしまうのであった。
怪盗には少年探偵、そう確信した彼女はその姿を変えて少年探偵として活躍し始めてしまったのだ。
「ル・パンダ、ル・パンダ、ル・パンダ。ああ、アナタは私の物。私だけの物。絶対に絶対に一番最初に私の物になるのよ!」
ただし、少しヤンデレ化していた。
その様子を周りの住人は観て見ないふりをする事で彼女の秘密は守られるのであった。「あんな風になってはダメよ。」
その頃、ル・パンダは「今回、出番が無かった。」とぼやいて昼寝の続きをするのだった。
そしてその頃、とある英国風の一室でロイヤルドルトンの紅茶セットでほうじ茶を飲んでいる男、写楽ほうじ茶がつぶやいた。
「そろそろ私の出番だろうか」
こうしてうやむやのうちに謎は深まり、人々は集い、新たな物語を始めるのであった。
次回「ル・パンダ炎上」に続くかも知れない。
ル・パンダ慕情 菜月 夕 @kaicho_oba
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます