【RTA異世界転生】 〜人生最大の幸せに、喜び過ぎて死んだオレ。異世界転生し『愛がパワーになるチート能力』を使い、最速で魔王をぶっ倒しにいく〜

日比野クロウ

第1話

 【織田おだ龍馬りょうま】が死んだのは、告白が成功してから一分も経たないうちだった。



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「ず、ずっと前から佐々森さんのことが好きです。オレと付き合ってください!!」



 放課後の校舎裏。高校二年生の織田龍馬は勇気を振り絞って告白をした。数年間片思いをしている学校一の美少女【佐々森ささもりさき】に。



 佐々森さんは満面の笑みで大きくうなづいた。ショートボブの短く柔かそうな髪を揺らしながら。



「えっ、マジで!?」



 龍馬は目が飛び出しそうなほど驚いた。大きな丸い目にプクッと膨れた唇が特徴的で可愛い佐々森さんが、平凡でなんの取りえもない自分の告白にOKしてくれるとは思ってもいなったから。もちろんフワッとしたショートボブも似合ってます。可愛いです。



「マ゙、マジでオレと付き合ってくれるの? 佐々森さんが? 信じられねえ」


「うん、マジだよ。だって私も、ずっと前から龍馬くんのことが――好きだから」



 ズキュン。頬を赤らめながら龍馬の顔を見つめてくる佐々森さん。それだけで最高に幸せなのに、さらに自分のことを『好き』だと言ってくれた。もう幸せ過ぎだ。死んでもいい。そんなことを龍馬は思ってしまっていた。



「あのね、私が龍馬くんを好きになったのはね、覚えてないかもしれないけど、中学二年のときに」


「――――うぐあああああああっ!!」


「ど、どうしたの龍馬くん!?」



 龍馬は左胸を押さえながら地面に倒れた。隣町にまで聞こえそうなほど、とてつもなく大きな悲鳴をあげながら。



 心臓を締めつけられるような激痛。あまりの痛みに歯をギリギリ食いしばるが、まったく痛みは引いていかない。



「大丈夫!? 顔が真っ青だよ、汗も凄いし。すぐに救急車呼ぶから」



 佐々森さんが慌てながらポケットからスマホを取り出し、119番に電話をかけている。このとき龍馬は思った。



 …………佐々森さんはどんな表情でも可愛いな、と。



 これが織田龍馬が、現世で最後に思ったことになった。



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 龍馬は深い眠りから目を覚ました。



「ど、どこだここは!?」



 視界に入ってきたのは見知らぬ白い天井。龍馬は戸惑いながらゆっくり立ち上がる。



「はじめまして、織田龍馬様」



 立ち上がった龍馬の正面には一人の少女がいる。龍馬とテーブルを挟み、イスに座っているその少女は高校一年生くらいの歳の少女だ。龍馬より一歳か二歳ほど下に見える。



 ピンク色で長くフワフワの髪。白く輝くヒラヒラのドレス。丸顔で垂れた目の優しそうな顔。Eカップはありそうな巨大な胸の少女がイスに座ったまま、さらに口を開く。



「私の名前は【ルルン】導きの女神です。龍馬様はここがどこか気になっていると思いますので、ここに来た経緯も含めて簡単に説明しますね」


「――そんなことはどうでもいい!!」


「えええっー!! こ、ここがどこで、どうして来たのか知りたくないんですか?」



 龍馬は、予想外の反応に驚いているルルンの両肩を勢いよく掴んだ。「えっ、あ、あの? なんですか!?」戸惑うルルン。だが龍馬はそんなことなど気にもしていない。なによりも大事なことを聞きたいのだから。



「佐々森さん! 佐々森さんはどこにいるんだ!!」



 怒鳴るように大声を出しながら、両肩を掴んだままルルンを前後に激しく揺らし問いただす。「あわわわわわー」激しい揺れに目が回るルルン。「答えます、答えますから揺らさないでくださーい」この言葉にようやく龍馬の手が止まった。



「佐々森咲さんがいるのは、現世です」


「現世!? じゃあここはどこなんだ?」


「ここは時の部屋。現世で死んだ方が来られる場所です」


「な、何言ってるんだお前。そんな言い方をされると、まるでオレが死んだみたいに聞こえるじゃねえかよ」


 その言葉にルルンは目を閉じ、ゆっくりと静かに頷いた。死を自覚できていない龍馬の代わりに悲しむように。



「オレが…………死んだ。嘘だろ! なんでそんな急に。トラックでも突っ込んで来たってのか?」


「いいえ。龍馬様は病気で死んだんです。ハッピーハート症候群という珍しい病気で」


「ハッピーハート症候群? それ本当に病気の名前なのか。なんか幸せそうだな」


「いいところに気づきましたね、龍馬様。そうです、幸せ過ぎて死んでしまうのがこの病気なんです!」


「はぁ! なんだその漫画みたいな病気は」


「信じられないのは分かりますが、本当にある病気なんですよ。たとえば宝クジが当たるとか嬉しいことが起きて幸せなときって、ワァーっと凄く興奮しないですか?」


「まあ、三億とか当たれば跳び上がって喜ぶだろうけど」


「ですよね。そんな感じで急にとてつもなく興奮すると、心臓がビックリして止まっちゃうことがあるらしいんです。そして、そのまま死んでしまう、なんてことに」


「冗談だろ」


「実例があるらしいです。プロポーズをされた。お孫さんが産まれた。応援しているスポーツチームが優勝した。なんてことがトリガーとなって死んでしまったケースが」


「じゃあオレは、佐々森さんへの告白が成功したことが幸せ過ぎて死んでしまったってことなのか」


「ざっくり言うと、そうです。正確には告白が成功した興奮で心臓が限界点に達してまして、その状態で佐々森さんから『好き』と、言われたことで興奮がさらに増して心臓が止まってしまったって感じですけどね」


「クソっ、なんだよそれ。不幸過ぎるだろ! 何年も片思いしていた佐々森さんとようやく付き合えたってのに。デートもできず、手を繋ぐこともできず、キスもできずにオレは死んだってのかよ!」



 龍馬は怒りを込めて机を殴った。やり場のない怒りを込めて。



「実はそんな龍馬様に良い話があるんです。佐々森さんに会える唯一の方法です」


「会える! 佐々森さんに!?」


「はい。ただし、この道を進むのなら辛く大変な思いをする覚悟が必要になりますよ。それでもよろしいでしょうか?」


「――前置きなんかいらねえ。オレは佐々森さんに会えるなら、どんなことでもするぜ。早く教えてくれ」



 ルルンが「分かりました」と、答えながら指をパチンと鳴らす。するとルルンの後ろに大型バスでもそのまま通れそうなほど巨大な扉がスーッと、なにもない空間から現れた。



 中世の城の城門のような木と鉄で作られたその巨大な扉はギギギギギと自動で開いていく。開いた扉のなかからは優しくも眩しい光が溢れ、先がどうなっているのか知ることはできない。



「この旅立ちの扉を通れば異世界に転生できます。そして、その異世界で魔王を倒すことができたのなら、神がアナタの願いをなんでも叶えてくれま――――って、なんでもう半分入ってるんですか!?」



 体の正面から半分が扉のなかの光に包まれている龍馬を、ルルンが学生服のベルトを掴んで部屋に引き戻そうとする。



「離せ! オレは一秒でも早く佐々森さんに会いたいんだ。最速で魔王を倒してくるから行かせろ」


「待ってください! まだ説明の途中なんですから」


「そんなの必要ねえ。オレは佐々森さんに早く会いたいんだ」



 龍馬は強引に扉のなかに向かって飛び込んだ。



「ちょ、ちょっと――うわあああああぁー!」



 龍馬の学生服のベルトを掴んだままのルルンも巻き添えとなって、二人は扉のなかの光に吸い込まれていった。




――――――――――――――――――――――

読んでいただきありがとうございます!

私はここまで読んでくれたあなたのことが

大好きです(⁠*⁠´⁠ω⁠`⁠*⁠)


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