後ろの席の平野江さん、なんでそんなに構ってくるんですか?

ラムココ/高橋ココ

第1話 プロローグ 順調だった日常の崩壊

 小学生2年生の時、俺に初めて好きな女子ができた。いわゆる初恋というやつだ。

 だが当時バカだった俺はバカな行動に出た。やったら嫌われるのは当たり前なのに。


 小2のとき、クラスに新しい女子が転校してきた。

 やってきた女子の名前は矢並 沙耶。なんというか・・・・ちょっと体型がアレな女子だったのだ。

 そのせいで、転校生ということもありクラスに馴染めず、体型のせいで男子からはいじめを受けていた。デリカシーのカケラもなかった俺も一緒なっていじめていた。


「おーい子豚! お前ハンカチ探してるんだって?」

「あ、遠坂くん・・・って、それ私のハンカチ・・・・っ返してよ!」

「おまえのハンカチは俺が貰った! 返してもらいたかったら追いかけてこいよ!」


 そう言って走り出す俺。しかし、矢並が泣き出してしまった。


「うぅ・・・・ぐすっ・・・・」

「ちょっ・・・・何泣いてんだよっ! ほれ! ハンカチは返す。お、俺は知らないからなっ!」


 そう言って逃げるように走ってく俺。



 ・・・・・・・いや今思い出しても最低だな俺ッ!?


 へーいこんちは。遠坂涼斗でーす。高一16歳でーす。

 あ、俺不良じゃないよ? ないからね?


 あれ、なんでいじめるようになったんだっけ。

 たしか他の男子にいじめられて泣いてるところを見かけて、その時の、彼女の子豚のようなつぶらな瞳から溢れる涙がかわいいなと思って、もっと見たいって思ってそれで・・・・


って言い訳しても無意味だな。いやホントのことだけど。あの後彼女は小4になると同時にまたどこかに転校してしまった。謝りたかったけど結局出来なかった。それにあの後俺は学んだのだ。


 いじめは陽キャがやるものだと。


 小学校高学年になると、段々とみんな陽キャ、陰キャのグループに別れていき、それぞれ同じ属性の友達同士で固まるようになった。


 俺はどちらかと言うと陰キャ寄りだった。別段暗くはないが、そんなに活発で明るいと言うわけでもない、でも勉強は好きな方でよく読書もする、女子とも全く接点がない、どちらかというと陰キャのグループに入る男子だ。


 中学に入ってからは、俺はいじめをやるようなカーストの者ではないと、さらに実感するようになった。


 女子に絡んでいいのは陽キャの男子だけだ。


 中学高校では、陽キャが住む日向の裏の日陰で大人しくしとこうと決めたのだ。


 今は中学を卒業、家から電車で1時間ほどの進学校に入学し、高校での日陰ライフは順調だ。


 今の時間は朝。朝礼前のフリートークタイムだ。


 高校に入学し新しくできた友人の一人、戸浪歩が話しかけてくる。


「なあ涼斗。今日転校生くるらしいぜ。知ってるか?」


「マジか、知らなかった。 女子か? 女子だといいな。できればむっちり美少女志望!」


「キモいな。美少女といったらやっぱ飯塚さんだろ! あのツインテールに小柄な体躯。俺の好みど真ん中だ」


「そっちこそキモいぞ。このロリコン」


「なんだと! 飯塚さんとは同い年だ! ロリコンじゃないぞ俺は」


「歩よ。それはロリコンの言うセリフだ」


「だから俺はロリコンじゃーーーー」


「みんなー。朝礼はじめるぞー」


 歩をからかっていると担任が教室に入ってきた。


「今日新しくクラスメイトが増える。入っていいぞー」


 あ、歩からかうのが楽しくて転校生のこと忘れてた。


 先生の合図と共に転校生が入ってくる。


「平野江沙耶です。みなさんよろしくお願いします」



··········

 鈴を転がしたような声。第一に、その一際飛び抜けてる容姿にみんな、とくに男子が見とれていた。


 俺もあんな美少女は芸能人以外見たことないぞ。


 染めてない、天然物の薄い茶髪、灰色がかったライトブラウンの瞳。とても整ったハーフのような顔立ち。


 卵形の顔にバランス良くおさまっている、パッチリと大きなアーモンド型の目と、小ぶりな鼻、形のいいピンク色の唇。ほんのりと紅潮した頬。


 そしてその極めつけは、女子のなかでは低めの身長のわりに、一際存在を主張するその胸部。くびれた腰に、スカートから覗くスラッと細い脚。



 100人中100人が美少女と言うであろう、完璧な美貌とスタイルを、新しい転校生である彼女は持ち合わせていた。


 ん? 待てよ?


 沙耶·····なんか小学生のころ俺がいじめてた初恋の女子を思い出すな。


「小4まで日本にいたんですが、事情があってついこの間までアメリカにいました。ちなみにこの名字は旧姓で、前の名字は矢並でした。私のことは沙耶とでも呼んでください。皆さんと仲良くできると嬉しいです」


ペコリ



 オーマイガー·······

矢並沙耶·····まんま俺がいじめてた彼女じゃん!!


 しかも痩せてめっちゃ美少女になってるし!

俺への復讐か、そうなのか!?

いや考えすぎか。


 どうする、どう切り抜ける!?

あ、いや、彼女が忘れてる可能性もあるよな? 

もし俺のこと覚えてたら知らない覚えてないで通そう!

だって六年以上前の話だぞ? 忘れてたっておかしくはないさ! そうだよ!


 一人で悶々としていたら不意に彼女と目が合った。

口元が言葉の形に動く。


よ・ろ・し・く・ね



 その瞬間、俺の日陰ライフ終了の鐘が頭に響いた。



オーマイガー·········





初めての現代ラブコメ····!

完結まで行けるといいな







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