貰われた娘の話

@asaasaasa_5han

昔々、

 とある山の少し開いたところ、山神様が守る土地にその娘はおりました。その娘は両親と共にその村へよそから来て、たまたま名前がこの土地のものと同じだったため、村八分を免れました。ただ、その娘と家族は大変貧しく開発地域にあたっていたその場では一番悪いところに住んでいたのでした。衣服はいつも清潔でなく、食べるものがないのか痩せこけていて、伸びた髪が人を驚かせました。娘は人々のことを怖いと思うようになり、そしていてはいけないものだとはっきり自覚するようになりました。その娘についたあだ名は幽霊。娘は、その幽霊らしく振る舞い、成長していったのでした。

 とある日、成長した娘が家業に勤しんでいるとても背が大きくて顔が怖い男に会いました。聞くと、娘を買いたいとのこと。娘は戸惑いました。そんな、裕福なお方が私なんかを? こんな幽霊だと思われている私を買う? 容姿も良くないのに売り飛ばすの? いいえ、違いました。男はその容姿から人に怖がられ働きは十二分なのに酷い目に遭っていたそうです。娘の唯一の姉と慕うこの村から外へ出た娘から聞いてきて、むすのところへやってきたそうです。

男はいいました。

「おまえを助けてやる。その代わり、俺を好きになれ」

 娘には難しい条件でした。しかし、夢みがちな娘はすぐに承諾しました。この場所から逃げたかったからです。

 そとの世界は、どこもかしこも違いました。価値観、綺麗さ、人の良さ。そんな扱いを受けたことがない娘はありがたがり、一生この人に恩返しをしようと思いました。

 男と共に暮らすようになり数ヶ月、娘と男は夫婦の契りを交わしました。娘は幸せでした。なにより、助けてくれた男が幸せそうに隣で眠っているのを見るのが好きだったからです。

 しかし、男はそれまでと違い娘を乱暴に扱うようになりました。いえ、昔からそうだったのですが、娘は男の悪いところを見ようとせず騙されに行っていたのです。男は他の人間に金を借り、娘を襲う。娘は嫌になりました。こんなところから逃げたい。でも、男の家族は優しく娘にも、本当の娘かのように歓迎して扱っていました。

 娘は逃げようと決意し、村の偉い人のもとへ行きました。しかし、娘は嘘つきでした。話がまともにできず、ことを大きくすることで有名でした。なので、まともに取り合ってもらえず、娘は泣きながら帰ってきました。

 娘が仕事を黙々としていると主人である男はずっと街の会合に行ったっきり帰ってきません。

 娘は居場所はあるもののひとりぼっちでした。

 あるとき、娘が病に陥りました。男は、何を思ったのか必死に娘の看病をしました。娘の体温が下がっているのを知ると昔のように添い寝をし、体を温めました。娘は思いました。あのときの旦那様だ。あのときの旦那様が戻ってきた。ずっとこのままだったら、なんていいだろう。娘は男の体温を感じながら寝入りました。夢ではありませんように。

そして、娘が目を覚ますと男は泣いて喜びました。背は大きいくせに怖く見える幼い顔立ちがくしゃくしゃになっています。

 娘は言いました。

「私とまたやり直しましょう、旦那様」

 娘と男は何度も話し合いをして、互いに打ち解けました。

 それからというもの、二人は猫を飼ってのんびりと添い寝をしながら日々を送っていったとさ。おしまい。おしまい。

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