アルカ、英雄殺しの旅

柊オレオン

プロローグ

第1話 当たり前の日常が終わりを迎えた日

 魔法は素晴らしいものです。だって、私たちの生活を豊かにしてくれますし、悪い人を追い払ってくれるからです。


 私は魔法使いになりたいです。


 お母さんのように優しい魔法使いに、お父さんみたいに強い魔法使いに、弟を守れる魔法使いに。


 欲張りな私は、よくよく周りから無理だと言われるけど、私は思うわない。


 だって、無理なんて存在しないから。だって私たちには魔法があります。


 この奇跡の力に感謝を……。弱者である私たちには魔法を与えてくれてありがとう神様。


 私は今日も、神に祈りをささげる。


「すばらしい、祈りでしたよ、アルカ」


「あ、ありがとうございます!!」


 私は今、とある教会で祈りをささげていました。私たちが住む発展都市『クリスタリア』は神の導きにより、魔法がもたらされ、発展した都市。


 日々魔法に感謝し、暇あればこうして神に祈りをささげる。


 まぁ、私みたいに毎日、2時間祈りをささげる人はいないけど。


「元気がよくてよろしい、今日も外で魔法の練習かい?」


「はい!魔法は日々精進しなければなりませんから!すべて、立派な魔法使いになるため!!」


「いい心がけです。しかし、アルカもまだ13歳、まだみんなで遊ぶ年ごろでしょ。息抜きでたまには練習なんてせずに、遊んだら?」


「それでは、立派な魔法使いになれません!私は魔法使いになるためにこの人生をささげたいのです!!」


 私の意志は硬い。誰が何を言おうと、この人生のすべてを魔法に捧げる。


 それが、私の人生。いや、そんな人生にしたい。


「そうですか……意志は固いようですね」


「はい!!ってもうこんな時間だっ……それじゃあ、私はこれで!!バイバイ!!」


「バイバイ……」


 私は手を振って、そのまま教会の外に飛び出した。


 すぐに右手にほうきを吸い付くように引き寄せ、そのまままたがった。


「いくよっ~~!」


 魔力がほうきの先端に集中し、そのまま炎が噴き出したかのような威力で魔力が放射され、空を舞う。


 空気を切り裂くように空を飛ぶケルン。スピードは魔力を込めれば込めるほど加速、もし、自分の身を気にしなければ、音の速さを超えられる。


 気持ちよく加速しながら、都市を離れ、広い草原に到着する。


「よし!今日も魔力操作は良好っと」


 発展都市『クリスタリア』から少し離れた広い草原。


 私が10歳の頃に偶然見つけた場所で、ここでなら魔法を大胆に使っても、迷惑にならない。


 まさしく、私のためにあるような場所。


「それじゃあ、早速!始めますか!!まずは、基礎魔法から」


 魔法にはいろんな種類が存在するが、大雑把に分けると、主に三つに分類される。


 基礎魔法、応用魔法、超越魔法の三種類。一般的には、基礎魔法、応用魔法が日常的に使われている。


 超越魔法はごく限られて魔法使いにしか使えない魔法なので、特に気にしなくていいと私は思ってる。


 だって、私は別にすごい魔法使いになりたいわけじゃないから。


「ふぅーーーーー【ファイヤーボール】!!」


 杖を構えて、言葉を交えながら、振り下ろすと、杖の先端から火の玉が生成され、そのまま発射された。


 火の玉は狙っていた木に直撃し、瞬時に燃え盛った。


「うん、上々かな。次は【ウォーターブレード】!!はぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 杖に水の刃を生成させ、そのまま焼き尽くされる木に一撃を与えると、炎は瞬く間に鎮火した。


「これも、上々だね。【ウィンドスラッシュ】!!」


 杖に風が纏い、そのまま横に振ると、風の刃が放たれ、その場にあった木が一瞬で伐採された。


「うん。そして、最後に【サンダーボルト】!!」


 杖の先端を木々に向けて、口にすると、強烈な雷が散乱に放たれ、一瞬で塵と化した。


 基礎魔法は主にこの4っのみ。応用魔法はこの4っを完璧に扱えて初めて学ぶことができる魔法。


 今日の目的は基礎魔法の最終チェック。これを終えれば、私は応用魔法に手を付けることができる。


「うん。我ながら、完璧な基礎魔法。これなら、応用魔法に移れる」


 魔法の練習を始めて、3年間。やっと基礎魔法をまともに使えるようになった。あとは、効率を重視して、無詠唱で基礎魔法が使えれば、文句ないんだけど……。


 無詠唱で魔法が使えるのは、魔法使いの中でも少ない。コツをつかめれば、簡単だという魔法使いもいるけど、そこらへんは個人差がある。


 今は無詠唱を習得するよりも、もっと魔法の知識を学んだほうがいい。


 無詠唱を習得するのはそのあとでも遅くないはずです。


「よし!どんどん、魔法を使っていくぞーーー!!」


 私は夕日が落ちるまで、基礎魔法を連発して使っていった。魔法使いたるもの、常にどんな状況でも魔法を正確に使えないといけない。


 その切迫した状況を作るために、一度、魔法を使いまくる。そうすると、魔力が徐々に減っていき、精度が低くなっていく。


 その精度が低くなるところを、がんばって高くする。あくまで疑似体験だから、実際に状況は違うけど、経験しておいて損はない。


 それに魔力をからにすれば、次に日には少しだけ魔力が上がるから一石二鳥。


「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ……つ、疲れた」


 気づけば、夕日が落ちており、空がオレンジ色に染まっていた。


「そろそろ帰ろうかな……」


 魔力がほとんどない私はほうきを手に持って、歩いて帰ることにした。


 さすがに、魔力を使いすぎたと反省するも、そこまで距離があるわけじゃないし、大体2時間も歩けば、発展都市『クリスタリア』に到着できる。


 問題は、確定でお母さんに怒られるということ。


「お母さんに怒られる……覚悟しておかないと」


 歩いて2時間が過ぎた。


 そろそろ都市が見えてくるというところで違和感に気づく。


「あれ……明るい」


 目先に都市『クリスタリア』が見えた。しかし、なぜか、その都市は真っ赤に染まっていた。


 燃え盛る炎、かすかに聞こえる苦痛の叫び声。


「…………なぁ」


 アルカは膝から崩れ落ち、苦痛の叫びで埋め尽くされた燃え盛る都市を眺める。


 いったい何が起きたのか、アルカは理解が追い付けない中で燃え盛る炎の中、人影が見えた。


「あははははははっ!!死ね死ね死ね!!死んでしまえっ!!我が名は、聖騎士パラダイン!!死と共にわが名を刻めぇぇぇぇぇ!!!」


 一振りの白銀の剣を持った男性らしき騎士。


 その男は高らかに笑い、叫びながら、人々を蹂躙していた。


 


 

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