第四十六話 聖女

「そうか二人ともサルマニアには着いたか」


「へうかふたひともきあお?」


「食べながら喋るなサリシア」


 サリシアは聖帝城内でバングの話しを聞き終わり二人がくるまでの時間が暇だった為城にいるコック達に料理を作ってもらいもぐもぐ食べていた。


「今ヴァン殿はラグナにトウカ王女は北門にいるそうだ。トウカ王女に至っては北門にまだサリシアがいると思っていたそうだ。その為に北門まで風姫に運んでもらったらしいぞ」


「そっか」


 あ〜ちょっとずれちゃったか。

 北門にいた方が結果良かったのかな?

 でもヴァンはラグナに居るし、そもそも風姫の力を借りないと普通ならヴァンの方が早くついていたし、こればっかりは仕方ないか。


「陛下どっちかに迎えに行ったほうがいいかな?」


「いや、ここで待機だ。ラグナではリーアが北門からはフィーリが二人をここに連れて来るそうだ」


 予定では明日には二人ともここに着く。


「そっかじゃ待ってようか」


「それなんだがサリシア。ここで待つよりも一旦教会の方に行ってもらいたい。何人かサリシアと入れ替わりで北門に行ってもらったゆえに少し手が欲しいだろう。聖女たるサリシアがいれば皆安心するだろしな」


 あ〜そういえばリリーも北門に行ったんだっけ、副院長もいるけど私も少しは教会いて上げた方が確かにいいかも。


「そういうことなら良いよ~明日まで暇だしね」


 私聖女だしね。

 皆優秀だから大丈夫だろけど聖女はこの国の象徴だしそれくらいはしてあげないとね。

 ある程度料理を食い終えたサリシアは颯爽と教会に向かった。


◆◆◆◆◆◆


「今度あっちでこれは向こうに持っていってとこれは………えっと……」


「マリエルー」


「はい!!今行きます!」


 リリー院長と数名が北門に行ってその差を埋めるように皆で頑張っているけど忙しい。

 いつも忙しいけどそれに加えてここに治療を受けに来る人達がいつも以上に不安定だ。

 オーガの群れにラグナでゴブリンの大群にデュラハン達の襲撃、それに加えて北門でのセルフジーニアスとの大規模に発展した戦闘。

 ここまで立て続けにサルマニアで何かが起こるといつもなら大したことがなく気にしないようなすぐにでも治るようなちょっとした怪我でも皆不安になる。

 リアラの怪物の噂もあり余計に皆の恐怖を増大させてもいた。


「次に行かないとリリー院長もサリシア様もいないし」


 マリエルはこの教会から一時的に抜けた皆の分も懸命に仕事に勤しんでいた。

 今も忙しさで呼ばれたとばかり思い急いでいたが、


「マリエルごめんねもう休んで良いよ~」


「えっと………はい?それはどういう」


「もう大丈夫ってこと」


 マリエルは突然言われたことに理解が追いつかずその場でフリーズしてしまった。

 だがマリエルはその場で温かい回復魔法の力を感じた。

 明らかに一線を画す回復魔法であることはこの教会にいる者たちは一瞬でわかった。

 そしてこの回復魔法が誰による物なのかも。


「は〜」


「ちょっとマリエル!大丈夫!」


「あ、はいすみません一気に力が抜けてちゃって」


 言われたことを理解できずフリーズしたマリエルだがこの回復魔法の力は誰のものかはすぐにわかった。

 今までの緊張の糸が一気に切れマリエルは力が抜けその場にへたり込んでしまった。


「今はサリシア様がいるから休みなさいマリエル」


 自分と同じ修道女に抱えられながら立ち上がるマリエル。


「サリシア様また一気に開放してこの教会全体に回復魔法を使うなんて」


 後でちゃんと自分で報告してもらいますからねサリシア様。

 聖女の魔法だとこの教会にいる者たちが理解していくたびに教会内は安定していった。


「もう大丈夫だよ」


 治療を待っていた者達は不安であったがその言葉がサルマニアでトップの回復魔法の使い手からとなると信じてしまう。

 そのたった一言で治療を受けている者たちが安心する。

 ああ大丈夫なんだと。

 何があっても自分がどんな状態であっても治るとしか思えてならない。

 この教会にはサルマニアで最高峰の使い手聖女がいると。

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