第三十八話 撤退
「ッッッ!!!なにこれ二人ともボロボロじゃん」
サリシアは剣に魔力を纏せ二人を切り裂きまとわりついていた黒いモヤを引き剥がした。
その時二人の本当の体があらわになった。
聖女と呼ばれいろんな怪我人を見てきたサリシアですら一瞬絶句してしてしまうほどボロボロな体をした二人を。
黒いモヤで無理やり動かされていた弊害かな?もしくはこの黒いモヤを使っている奴との戦闘した結果こうなったのかな?
初め見た時は二人の体は無傷だったのに……黒いモヤが二人を動かす為に一時的に治していた?
応急処置みたいなものなのかな?もしくは補助具みたいなもの?
「大体は私の理解の範囲内で終わるんだけど、今回はそうも言ってなれなそうだね」
簡単に人を操るすべなどこの世界にはない。
サルマニアに現れた可能性があるリアラの怪物。
魔力とは何か違うかもしれない黒いモヤのようなもの。
二人にまとわりついていた黒いモヤの正体は………考えるのは後にしてまずは一人ひとり回復魔法をかけてあげないと、まだ助かる人がいる。
どんな重症だろうと聖女として治してみせる。
◆◆◆◆◆◆
「おや?この感じは二人にかけた強制支配が解けたかな。でも時間は稼げたからいいかな」
元々あの二人はあそこに向かうつもりだったみたいだし、一旦僕がこの場所から離れるための足止めに使えたからいいや。
なんか面白い物も持っていたし。
本来は全部を支配したんだけどこの前僕のデュラハンを一気に消し飛ばした奴みたいのがいっぱい居たら支配どころの話ですらないからね。
万全の状態の僕ですら負けかねない、そんなの相手にしてる暇はないし。
いずれはあいつも支配してみせるが今は無茶する時じゃない。
稼げる時間は確保しておかないと。
それに良い実験になった。
人間の支配は初めてだったが強制支配もできるならやれることの幅が増えたしこれからだね。
「あ、そうだ。この間に僕の名前を考えてもおいてもいいかもしれない。いずれは世界の支配者なのに名乗る名前がないのも困るしね。何がいいかな~」
二人を支配し操ていた少年はこの場所を離れるため歩いているがそんな時にのんきに自分の名前を考え始めた。
サルマニア以外へと足を向けて移動する間に。
サルマニアで生まれた少年の姿をしたリアラの怪物はこうしてサルマニアから人知れず姿を消した。
◆◆◆◆◆◆
木々が生い茂った場所をどこかへ向かうように高速で移動する二つの影。
「なぁゲムあそこから撤退する必要あったから?」
「当たり前だ。魔力の水源が開けられその力を我々に振るわれても困るしそもそも私達では勝利できんだろう。それ程なんだ水源というものは。それに向こうの護衛騎士に何かあったのだ、ああいう隙に撤退できるのであればしたほうがいい。これから怪物のことも考えねばならんしな」
二つの影は北門から撤退したゲムとフユイであった。
ラルクの盾糸が不自然に消えてからなにごこもなかったかのように北門から撤退していた。
「あのまま二人の王子共と殺りたかったけどそうも言ってらんないか〜。私もキオみたくやりたかったけど仕方ない」
「そう言うな、まずは本部か各地にある支部へ行って今回の報告だな」
これからのことを考えると大変だな、特に怪物は。
目的がわかれば多少は対応しやすさが変わるんだがな。
「このまま急ぐ」
「了解〜」
二人の影は木々を縫うようにどんどん北門から離れていった。
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