第十一話 進軍
「お前ら怯まず打ち続けろ」
「デュラハン相手には弓なんて効きませんよ!」
「効かなくても邪魔くさいはずだしそれで止まれば時間ができる。それにサリシア様がラグナに来ておられた。時間をかけて耐え続ければ間に合うはずだ」
ラグナは突然現れたゴブリンの群れとデュラハン達相手に混乱していたがラグナに存在する守備隊が体制を整え迎撃を仕掛けていた。
「住民の避難は!」
「最低限進んでます!」
「怪我した者たちは後ろに下がって治療を受けろ。大きな怪我じゃなきゃまた戻って来れる。サルマニアの回復魔法の使い手達ならすぐに治せる」
基本的にはゴブリンと一体と対峙したとしても対処するのは容易い。
だがあまりに数が多すぎた。
前線で怪我人が増えその者たちが下がると囲まれることも増える。
だが世界有数の回復魔法の使い手達がいる国だけあってか大きな怪我ましてや死んでしまうほどの一撃を受けない限り前線ヘの復帰にはさほど時間がかからなかった。
大量のゴブリン達に囲まれようとも代わる代わる人を向かわせてなんとか持ちこたえることが出来た。
だがそれは相手がゴブリンだけの場合のみそこに別の強者デュラハンがいると話が変わっていく。
「くわっ」
「かっ」
「おいおいおい、こいつら普通のデュラハン達よりも強くないか」
デュラハン達にとっては飛んで来る矢や目の前にいる人間達の足止めなど進軍するために取り除く障害でしかない。
デュラハン達は止まらず進軍し続ける。
自分たちの支配者の命じるままに前へ。
「間違えてもラグナの中には入れるな」
「そうは言ってもこの数相手はきついですって。ラグナには強固な壁があったり要塞があるってわけじゃないんですから」
「それでも今いるもの達で何とかするしかないんだ」
(サリシア様申し訳ありませんが今はあなたに頼るしか……)
ラグナだけではなくここサルマニアには強者と呼べるほどの者は片手で数えるほどしかいない。
優秀な回復魔法の使い手が多い分前衛に出ての白兵戦を苦手とする者が大半を締めていた。
ゴブリン達ならともかくデュラハンのそれも通常よりも強いと思われる相手にはどうしても苦戦を強いられていた。
(それにしてもこいつ等全員どこにいたんだ?これだけの数が街の近くにいても見つからないことはそうそう起きないぞ。俺ら守備隊や他の警備隊もましてやここにいる住民達全員にさえ一切気づかれないなんてことあるのか?)
今回のラグナの強襲には誰も気づかなかった。
いきなりゴブリンやデュラハンが現れ襲いかかって来ていた。
「まずいな、そろそろ潮時か」
前線に行ける兵士が怪我人となり下がる。
下がるとそこで最低限の治療を受けてまた前線ヘ戻る。
それを繰り返し耐えていたが前線にいる者達が下がるたびに敵に押され前線が下がっていた。
「全員下がれ最悪ラグナは捨てる。生きてさえいれば良い」
開戦から一時間がたとうとした頃完全に前線の維持ができなくなった。
だがその間ラグナには一体たりとも侵入を許すことはなかった。
「ごめんなさい遅くなって。よく耐えたね」
「いいえ、申し訳ありません。残りをお任せすることになります」
◆◆◆◆◆◆
「間に合うか?」
サリシアは自身で出せる全速力で駆けていた。
ラグナに対する強襲に間に合うかどうか分からなかったから。
だがそれでも駆けて駆けて駆けた。
間に合うかどうか分からないなら間に合うようにいつも以上に全速力で駆ければいいと。
ちょっとでも気を抜いて後悔はしたくないからね。
だからもっともっと急げ。
私が着けば救える命があるのなら。
敵を倒して味方を助ける。
私は剣帝で聖女だ。
一気に駆け抜けて見えた景色にサリシアは安堵した。
ギリギリ間に合ったかな。
ラグナには入り込んでいなさそうだ。
良かった、全速力で駆けて正解だった。
「ごめんなさい遅くなって。よく耐えたね」
「いいえ、申し訳ありません。残りをお任せすることになります。サリシア様」
「うん任せて、もう大丈夫だよ」
サリシアは自身の得物たる剣を構える。
「いこうか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます