廊下側にひかり
Ai
#1 おもんねえ
「おまえ、おもんねえよな」
「……は」
一瞬、首の筋肉が固まって、顔をあげて瀧を見つけて、初めて少し苛立った。内容と言うよりも、その声の出し方とトーンに。吐き出すような一言だった。瀧は、教室のドアから廊下に足を踏み出しかけて止まっていた。
「正直」
何を含んでいるのかわからない声が、こんな時ばかりまっすぐ届く。いつもはジョークを吐く瀧の口が、冷たく乾いている。私は口をあけた。なにおまえ失礼過ぎ、と言えると思ったのにできなかった。
「キャラ作って必死で話合わせてる人間、全員きしょい」
思わず立ち上がった。足の下でがしゃんと大きな音が響く。廊下を足音が遠のいていく。寝起きなのに耳障りだな、と妙に冷静な自分に気づき、苛立ちを再び思い出す。足元を見ると、椅子がカバンの紐をまたいでいた。倒れた椅子を起こす指がうまく動かない。追いかけてやろうかと思った。頭皮に冷たい汗をかいているのを感じる。なに、あいつ。
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