第36話



 新橋から原宿に向かった。原宿の駅の周りに人の流れを誘導する警備員さんが多くいた。こんなに多くの人達が集まるんだとつくづく思った。

 人が多いとわかっていたので例年は来る事はなかった。


「凄いな」

と壱が言うのを聞いて、なんとか人混みの中で壱の腕を引っ張って流れから外れた。


 2人で相談して明治神宮とは逆の表参道に向かう事にした。


 結局、銀座散策は今年で終わりにしようと壱に言えなかった。

 いつ岐阜に帰るんだって聞かれ明後日と教えた。

 夕飯は一緒に空いている居酒屋で軽く飲みながら食べた。別れ際に、


「成、これからは頻繁に連絡する、俺、時間だけはたくさんある。

 これからの事を成に相談しながら進める。

 俺、いい男を目指す」


「あぁ、そう。うん、わかった」

僕の返事に壱は満足したようだ。


 僕は満足させる返事をしたつもりはないが、長くなりそうなので良しとした。


 今日一日、言葉を変えても全て復縁の話だった。疲れたので寝よう。


 夜寝る時、連絡アプリに

(今日ありがとう 壱)って送信がきた。


(おやすみ 成)って返信した。


なんかラブラブカップルっぽい、嫌だと思った。

 

 ボードゲームが振り出しに戻った感じか、違うオプションに進めと誘導された感じか、なにはどうあれ思っていない方向へ流れ出した気がする。


 困ったが、まず仕事の事を考えよう、壱の事はその後だ。

 明日はどういう風に言おうか考えていたら寝てしまった。


 

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