第6話
壱が僕の心にいる事が当たり前だった。離れている時も不安はなかった。今もいるけれど遠い気がする。寂しいかと自分に聞くと寂しい。
どうしたらいいかなぁと独り言が出た。
ゆっくり考えようかと思った。働いているうちに何か見えてきそうな気がした。
月曜日、朝早く起きてゆっくり身支度をした。少し早めに出たら、早く早医院に着いた。
裏口の鍵が開いていたのでホッとして中に入った。
「成先生、おはようございます」と、少し遠い待合室の方から声が聞こえた。受付の鈴木さんだった。
「鈴木さん、おはようございます。少し早く来すぎたかなと思ったよ、開いていて良かった」
僕は金曜日の歓迎会のおかげで、スタッフの女性達とは、砕けて話せるようになった。
早先生とはまだ距離感がある。
当番で1時間早く来て鍵を開けて掃除をしていると、鈴木さんが教えてくれた。
僕は医院長室のソファで新聞を読んでいたら早先生がきた。
「おはよう御座います。歓迎会ありがとうございました。楽しかったです」と、立ち上がって僕は挨拶をした。
「おはよう、あぁ楽しかったね」と、笑顔で言って、部屋の隅にあるコーヒーメーカーからコーヒーのを入れ僕にもくれた。
なんかめっちゃくちゃかっこいい…あれ僕どうしたんだろうと思っていると、婦長が顔を出して、朝の挨拶をして、金曜日の御礼を早先生に言ってまた近いうちにお食事会しましょうと言っていた。
「そうだね」って笑顔で早先生は答えていた。
こう言う会話がいつもの事なんだろうと僕は思い、仲間ってこの感じなのか新鮮だった。
ミスも度々しながらなんとか仕事を初めてひと月が過ぎた。
「ひと月過ぎましたので来週の月曜日から一日勤務にしませんか」と、早先生から金曜日午前中の勤務が終わって帰り際に言われた。
ひと月過ぎたらと、ちょこちょこ軽く言われていたので僕は、
「はい、宜しくお願い致します」
と返事をした。
「給料とかこのままアルバイトか社員か細かい事決めたいけど、今日の夜か明日の夜どっちがいい?一緒に食事しながら話そう」
「僕はどっちも暇です、早先生が良い方でお願い致します」
「じゃ明日、…場所はこの前の歓迎会の時のホテルに美味しい台湾料理の店あるから、ロビーで落ち合おう午後6時ね」
「楽しみです。おつかれ様でした」
僕は帰り道、心がワクワクしながら歩いた。僕の中にこんな気持ちってあったんだ。晴れ渡った空が背中を後押ししてくれた。
ピロンと携帯がなった。
(そろそろ良い返事くれ)
と、壱からだった、毎日こんな感じのメッセージばかりだった。連絡が来た嬉しさと煩わしさが半々の気持ちだ。
(来週からフル一日働くよ 成)
返信をした。
(!!)と返信が帰ってきた。
壱の事は好きだが、ちゃんと考えようと思いつつ、ひと月が過ぎた。仕事辞めないと別れるって変だよな、顔見て話し合いをしようか迷っている。
壱が折れる事はない…だろう。
壱の顔を見たのは三週間前か、日帰りでも東京に帰ろうかと考えたが、壱が仕事なら会えないし、明日は早先生と会うので来週か…どうしようかな迷った。
とりあえずフル一日勤務をひと月くらい続けて僕の心の変化を見て決めようと考えた。
歩きながら考えていたら、あっと言う間ににアパートに着いた。
ジャージに着替えていつものようにソファでゴロゴロした。
ピロンと携帯がなった。
(元気? )
愛ちゃんからだった。
(元気だよ。今、働いてひと月たった)
返信した。
(!!、今、電話できる?)
と、返信がきたので僕から電話をかけた。
「成だよ」
「働き出したの?ずいぶん行動早いね、私がそっちに行ったのひと月くらい前だよね」
「愛ちゃんには感謝しているよ、僕も心の何処ではこのままではダメだと思っていたんだ」
「壱には言った?」
「あぁ言った、三週間くらい前このアパートに壱が来た」
「この前実家に壱が来て少し話たけど成の事は、ひと言も言っていなかったよ。壱も納得したのかなあ?」
「うぅん、仕事辞めないと別れるって壱が
言うんだ。まだ話し合い途中みたいな感じだよ」
「そうなんだ、成はどうしたい?」
「仕事かなぁ、よく考えるよ」
「考え途中ね、決まったら教えてね」
「あぁ、わかった。じゃあまた」
「またね」
愛ちゃんも色々言いたいことはあると思うが随分あっさりと引いてくれた。たぶん進み具合が早く驚いたのだろう。
目を閉じて考えた、なぜ働くと別れるんだ。たしかに今までは、壱の言う通りに生きて来た。こっちで学生生活を一人で始めた時も毎日一日の出来事を電話して2週間毎に東京に帰って一緒に過ごしていた。
全て壱が言う通り行動した。研修医時代もそんな感じで、研修医終了後、働かないで欲しいと言われた。で、もう28だよなと独り言が出た。
なんだか考えすぎて頭が疲れて眠くなった。
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壱が僕の心にいる事が当たり前だった。離れている時も不安はなかった。今もいるけれど遠い気がする。寂しいかと自分に聞くと寂しい。
どうしたらいいかなぁと独り言が出た。
ゆっくり考えようかと思った。働いているうちに何か見えてきそうな気がした。
月曜日、朝早く起きてゆっくり身支度をした。少し早めに出たら、早く早医院に着いた。
裏口の鍵が開いていたのでホッとして中に入った。
「成先生、おはようございます」と、少し遠い待合室の方から声が聞こえた。受付の鈴木さんだった。
「鈴木さん、おはようございます。少し早く来すぎたかなと思ったよ、開いていて良かった」
僕は金曜日の歓迎会のおかげで、スタッフの女性達とは、砕けて話せるようになった。
早先生とはまだ距離感がある。
当番で1時間早く来て鍵を開けて掃除をしていると、鈴木さんが教えてくれた。
僕は医院長室のソファで新聞を読んでいたら早先生がきた。
「おはよう御座います。歓迎会ありがとうございました。楽しかったです」と、立ち上がって僕は挨拶をした。
「おはよう、あぁ楽しかったね」と、笑顔で言って、部屋の隅にあるコーヒーメーカーからコーヒーのを入れ僕にもくれた。
なんかめっちゃくちゃかっこいい…あれ僕どうしたんだろうと思っていると、婦長が顔を出して、朝の挨拶をして、金曜日の御礼を早先生に言ってまた近いうちにお食事会しましょうと言っていた。
「そうだね」って笑顔で早先生は答えていた。
こう言う会話がいつもの事なんだろうと僕は思い、仲間ってこの感じなのか新鮮だった。
ミスも度々しながらなんとか仕事を初めてひと月が過ぎた。
「ひと月過ぎましたので来週の月曜日から一日勤務にしませんか」と、早先生から金曜日午前中の勤務が終わって帰り際に言われた。
ひと月過ぎたらと、ちょこちょこ軽く言われていたので僕は、
「はい、宜しくお願い致します」
と返事をした。
「給料とかこのままアルバイトか社員か細かい事決めたいけど、今日の夜か明日の夜どっちがいい?一緒に食事しながら話そう」
「僕はどっちも暇です、早先生が良い方でお願い致します」
「じゃ明日、…場所はこの前の歓迎会の時のホテルに美味しい台湾料理の店あるから、ロビーで落ち合おう午後6時ね」
「楽しみです。おつかれ様でした」
僕は帰り道、心がワクワクしながら歩いた。僕の中にこんな気持ちってあったんだ。晴れ渡った空が背中を後押ししてくれた。
ピロンと携帯がなった。
(そろそろ良い返事くれ)
と、壱からだった、毎日こんな感じのメッセージばかりだった。連絡が来た嬉しさと煩わしさが半々の気持ちだ。
(来週からフル一日働くよ 成)
返信をした。
(!!)と返信が帰ってきた。
壱の事は好きだが、ちゃんと考えようと思いつつ、ひと月が過ぎた。仕事辞めないと別れるって変だよな、顔見て話し合いをしようか迷っている。
壱が折れる事はない…だろう。
壱の顔を見たのは三週間前か、日帰りでも東京に帰ろうかと考えたが、壱が仕事なら会えないし、明日は早先生と会うので来週か…どうしようかな迷った。
とりあえずフル一日勤務をひと月くらい続けて僕の心の変化を見て決めようと考えた。
歩きながら考えていたら、あっと言う間ににアパートに着いた。
ジャージに着替えていつものようにソファでゴロゴロした。
ピロンと携帯がなった。
(元気? )
愛ちゃんからだった。
(元気だよ。今、働いてひと月たった)
返信した。
(!!、今、電話できる?)
と、返信がきたので僕から電話をかけた。
「成だよ」
「働き出したの?ずいぶん行動早いね、私がそっちに行ったのひと月くらい前だよね」
「愛ちゃんには感謝しているよ、僕も心の何処ではこのままではダメだと思っていたんだ」
「壱には言った?」
「あぁ言った、三週間くらい前このアパートに壱が来た」
「この前実家に壱が来て少し話たけど成の事は、ひと言も言っていなかったよ。壱も納得したのかなあ?」
「うぅん、仕事辞めないと別れるって壱が
言うんだ。まだ話し合い途中みたいな感じだよ」
「そうなんだ、成はどうしたい?」
「仕事かなぁ、よく考えるよ」
「考え途中ね、決まったら教えてね」
「あぁ、わかった。じゃあまた」
「またね」
愛ちゃんも色々言いたいことはあると思うが随分あっさりと引いてくれた。たぶん進み具合が早く驚いたのだろう。
目を閉じて考えた、なぜ働くと別れるんだ。たしかに今までは、壱の言う通りに生きて来た。こっちで学生生活を一人で始めた時も毎日一日の出来事を電話して2週間毎に東京に帰って一緒に過ごしていた。
全て壱が言う通り行動した。研修医時代もそんな感じで、研修医終了後、働かないで欲しいと言われた。で、もう28だよなと独り言が出た。
なんだか考えすぎて頭が疲れて眠くなった。
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