読切【異人種間においての酒は共通の友】

「いらっしゃいませ、当店は初めてでいらっしゃいますか?」

黒いスーツで客を案内する長身で細身の男、それとカウンターには整えられた髭がトレードマークの渋い男。街の一角にある、色んなカクテルを飲めるBAR、その名も『BAR サンライト』

今日もそこに集まる常連たちは、美味い酒を飲むのだった。


「マスター、いつもの」

テンガロンハットの男は言う。

「さて、なんだったかな」

マスターは素っ気ない。

「何、また言ってんの?」

と、艶やかな女性がテンガロンハットの男の隣に座る。

「マスターも覚えてるくせにぃ」

とテンガロンハットの男がいうと、ふっ、と笑いながら、ウイスキーロックを差し出した。

「今度な、いい酒が手に入る予定なんだ。それも二本!格安でお前らに飲ませてやる。」

このマスター、口は悪いがその道ン十年のベテランだ。


「ワタシニモ、イッパイ、イタダコウ」

鎧を纏った獅子が、カウンターに座った。

「マスター、この方は騎士様でいらっしゃいます。」

と案内係の男が、マスターへ伝えた。

「へぇ、珍しいね。お酒は大丈夫なんですか?えーと…」

「失礼。我ガ名ハ、ドブロクニア王国騎士団所属ノ、リオン、ト申シマス。」

「じゃあリオンさん、こんなお酒はどうでしょう?」


ドライジンとドライベルモットをシェイカーに入れ、これを軽くステア。

カクテルグラスへ入れて、オリーブを添えて…


「はい、お待たせ致しました。『マティーニ』です。我々の世界では、カクテルの王として有名な物です。」

「ホウ…デハ」と、リオンはグラスを傾けた。


「ウム…素晴ラシイ味と香…美味イ!」と咆哮した。

「そらそうさ、なんたってこのマスターの作るカクテルにはハズレなんて一切ねぇんだぜ!俺はガンマン!」

横にいたテンガロンハットの男も笑顔でリオンに話しかける。

「他にも色んなカクテルあるから、いっぱい飲んで行けばいいのよ。ウフフ、あたしはニキータって呼んで頂戴な。」

「アリガトウ、御両人。ソウサセテモライマス。」


この日も、笑いの絶えない、楽しい一夜になりました。


ここは異世界から流れ着いた者が行き交うBAR。

ひと時の安らぎを是非、『BAR サンライト』で。

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