転生先触手はちょっと……
鯖の味噌煮缶
プロローグ
クリスマス、バレンタインetc.
どうしてこうもリア充共は何かにつけてイチャイチャしたがるんだろうな。
クリスマス辺りからホワイトデー辺りにかけて、リア充が出来上がっては壊れ、出来上がっては壊れ……。
どうせすぐに別れるんなら付き合うなよ!
せめて1年は持たせろよ!
と、彼女いない歴=年齢(18年)の俺が言ってみたものの、現実が変わるはずもなく。
イチャイチャを他人に見せつけてすぐに別れるカップルが今日も増えていく。
何が楽しいんだよクソが!
「よお、翔馬」
なんてことを考えていると、後ろから肩を叩かれる。
色白の肌、整った顔立ち、サラサラの髪。
俺の1番の敵であり、1番の親友の男だ。
「どうした、海斗。また女作ってフラれたか?」
園崎海斗。
今まで作った彼女の数は未知数。
女だけでなく、男にまでモテるヤバい男。
で、何故か俺しか友達がいない。
男も女も含めて。
「いや、フラれたけどさ。関係ないだろそれ!」
やっぱりか。
顔は良いくせに浮気性のため、最長で2ヶ月しか持たなかったとか。
因みに、今回フラれた彼女はまだ付き合って2週間だ。
「やっぱりか。で、憂さ晴らしに俺と遊ぶと」
こいつが振られた時は毎回こうだ。
何故か俺にバレないように誘ってくるが、こいつが俺を誘う時は彼女にフラれた時か新作のアニメ映画が公開された時ぐらいだ。
「よくおわかりで。……で、どこ行くよ?」
「ワック。クリスマス限定のチョコパイが食いたい」
ご存知今日はクリスマス。
俺がキレた理由。
「りょーかい。けど、先にコンビニで漫画買って良いか?」
「ご自由にどうぞ」
ということでコンビニにやってきた。
特に買いたいものもないし、適当に漫画でも――
ダァン!
何かが破裂した音。
火薬の匂い。
レジ前にいる男が持っている、鉄の塊。
銃だ。銃声だ。
その場にいた全員が直感で分かった。
コンビニ強盗。
まさかこんなのに巻き込まれるとは。
人生って何があるかわかんねーな。
「全員動くな! 少しでも妙な動きしたら、ぶっ殺すからな!」
血走った目。
見た感じ、強盗は1人しかいない。
けど、逆らったらヤバいやつだ。
多分、まじで殺される。
「この袋にあるだけの金を詰めろ!」
男が袋をレジに投げつける。
店員は、男の要望に応えるように金を詰め始めた。
誰だってそうする。
俺もそうする。
「早くしろ!ぶっ殺すぞ!」
強盗も焦っている。
ここまで派手にやれば、直ぐに警察が来るからだろう。
下手な動きをするなと言われているが、そんなことせずとも警察は来る。
俺はそう思っていたが、突然のことで冷静に判断出来ない人も当然いる。
強盗の斜め後ろの女性が、スマホを取り出した。
「おい、てめぇ! 何やってんだ!」
当然、強盗がそれを見逃すことは無い。
銃口が女性へ向けられる。
「言ったよな? 妙な動きしたらぶっ殺すって」
それと同時に、俺は女性の方へ走った。
ダァン!
「キャーーー!」
強盗は銃を撃ったが、女性は無傷。
代わりに、俺の服は胸の部分が真っ赤に染まっていた。
「クソ、てめぇ!」
強盗は再び女性に銃口を向ける。
だが、
ウーウー! ウーウー!
「チッ!」
パトカーのサイレンだ。
強盗は、女性を無視して逃げていく。
「翔馬! 大丈夫か!?」
海斗が近づいて来る。
大丈夫なわけないだろ。
まあ、心配させない方がいいか。
「大丈夫だ……。病院行けば治る……」
その声は、自分でも驚くほど弱々しかった。
逆に心配させちまうな。
「大丈夫じゃねえだろ!? 今救急車呼ぶから!」
あーあー。
そんなに泣くな。
せっかくのイケメンフェイスが台無しだぞ?
なんて言いたかったけど、声が出なかった。
「――! ――!」
海斗の言ってることもわかんねえ。
終わったな、俺。
村瀬翔馬。
コンビニ強盗から女性を庇い、撃たれて死亡。
享年18歳。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます