72:特別緊急依頼
冴内は勘を取り戻すためアリオンと共にしばらく乗馬練習をした。アリオンも心得たものでなるべくあるじ様が落馬しないように気を使いながら人馬一体になるよう徐々に慣らしていった。そこそこ慣れてきて危なげなく乗馬出来るようにはなったが、それでもアリオンはかなり大きいのでやはり馬具は必要だなと冴内は思った。とりわけこれからはアリオンと遠出することになるであろうから・・・
一通りアリオンとの乗馬練習を終えて落ち着くと既に昼近くなったので、アリオンを久しぶりの厩に戻し冴内は久しぶりの野外食堂に向かった。
いつもの食堂にしては珍しくスパゲッティがあった。料理名がピリ辛ボロネーゼのキタッラと書かれていて「キタッラ」と呼ばれる少し太めのちぢれた生麺パスタにシシ肉と熊肉ミックスのピリ辛ミートソースをのせたもので、このキタッラにピリ辛ソースが非常に良く絡んで絶品だった。野外食堂の料理人シーカーも研修センター食堂のコックに負けないくらいの腕前だと感動した。食後のデザートにはスライムの「パンナコッタ」を食べた。ババロアのような感じのスイーツなのだが、なんかイタリアンフェアでもやっているのだろうか?
と、大いにイタリア料理を楽しんでいると、突然携帯端末から非常警報のようなアラームが鳴り響いた。自分の端末だけでなく周りの人全ての携帯端末のアラームが一斉に鳴り響いた。驚きと共に携帯端末を見てみると、これまで見たことがない画面が目に飛び込んできた。
そこには次のように書かれていた。
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【!!とくべつきんきゅういらい!!】
すぺしゃるいらいなんばー:001
いらいぬし:かみのなかのかみ
ばしょ:どこか
おねがい:りゅうをさがせ
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【!!とくべつきんきゅういらい!!】
すぺしゃるいらいなんばー:002
いらいぬし:かみのなかのかみ
ばしょ:どこか
おねがい:りゅうとさえないをひきあわせろ
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【!!とくべつきんきゅういらい!!】
すぺしゃるいらいなんばー:003
いらいぬし:かみのなかのかみ
ばしょ:どこか
おねがい:りゅうにうまいことはなせ
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【!!とくべつきんきゅういらい!!】
すぺしゃるいらいなんばー:004
いらいぬし:かみのなかのかみ
ばしょ:どこか
おねがい:またなにかわかったられんらくする
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全世界のゲート機関に属するシステム部署のシステム管理者たちは悲鳴を上げていた。ゲートの内外を問わず、それぞれの国はそれぞれで独立したシステムをもっていたにも関わらず、世界同時に突然システムに見たこともないコードが書き足され、全世界の携帯端末に見たこともない特別緊急依頼情報が送信されたのだ。しかもそれは外部からのハッキングの形跡も痕跡もなにもなく、突然自然発生的にシステムに上書き追加されたのだ。
コンピューターの登場発展に伴い、ゲートに関する情報管理がシステム化されてから40年程になる。インターネットの登場により世界ネットワーク通信網が確率されて以降、確かにサイバー攻撃を受けたこともあるが、それでもその度にセキュリティを強化し続け、常に24時間365日監視して今では鉄壁といえるほどの堅牢さを誇るシステムなのにいとも簡単に乗っ取られてしまったのだ。
しかもその特別緊急依頼の内容ときたら、幼児のいたずらかというレベルのもので、最後のものなどはもはや依頼ですらなかった。
その後わずか5分という世界最速記録で全世界ゲート機関局長会議が開催された。
さすがの冴内も今回ばかりは自分が当事者であることを強く認識せざるを得なかった・・・
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ピリ辛ボロネーゼのキタッラは埼玉県川口市にある「イタリア小皿料理ヴォーノ」というお店で食べられます。お店のオーナシェフは自分のバイク友達でとても気さくな良い人です、キクメンの小説を見てきたというとちょっと驚いた後に喜んでくれるかもしれません。JR川口駅から徒歩4分程で着くので是非とも行ってみてください。あっ、さすがにピリ辛ボロネーゼのソースはシシ肉と熊肉ではありません。スライム製ではないですがパンナコッタもありますよ。
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