14:最終日の覚醒

 4日目の朝、昨日の夜明け前程ではないがそれでも朝の5時に目が覚めてしまった。


 今日は午前10時にプレハブ小屋に行って鈴森さんと合流し、ゲート退場手続きをした後ゲートを退出、その後富士山麓ゲート前にあるゲートシーカー研修センターにて昼食をとり、レクリエーション後の結果報告や今後の活動に関する相談やガイダンスなどを受けて、夜はちょっとした会食があるそうだ。


 会食には鈴森さん、力堂さん、良野さん、さらには一応同期といっていいのかな?の人達が数名参加するそうだ。そして研修センターで一泊した後、次の日の朝に帰宅することになっている。


 そんなわけで今日も朝早く起きてしまったので

まずは食堂に向かった。昨日は和食の朝食を食べたので今日はトーストセット、いわゆるモーニングを注文した。カウンターを見ると蜂蜜入荷!早い者勝ち!と書かれていて大きなガラス容器に透明な琥珀色の蜜が入っており、スプーンが添えてあったのでせっかくなのでタップリとトーストに塗った。


 周りを見ても今日は誰も和食を食べておらず、皆トーストにかじりついていた。早速自分もトーストにかじりついたのだが、一口頬張った瞬間にその芳醇な蜜の甘味に後頭部の奥がキーンとなるくらいの衝撃的な美味しさに感動した。


 食後ゆっくりコーヒーを飲んでもまだ5時半で、とりあえず草原に向かうことにした。何か後方で「あちゃー! もう売り切れかよォー!」という矢吹さんの声が聞こえた気がした。


 草原に到着したがイノシシの姿も他のシーカーの姿もなく、そのまま草原を素通りして昨日熊を倒した現場に向かった。


 昨日の小川にたどり着くとそこかしこに割れた石やら岩があり、そして例の自分の背丈程もある大きな岩の塊が真っ二つに割れているのを発見し、我が事ながらこれは本当に現実のことなのかと考えてしまった。


 その感触を確かめるべくまたしても素振りをし始めた。何度も何度も何度も、わずか数日間の出来事を振り返りつつ、一心不乱に素振りを繰り返す。そのうち心と身体、呼吸も一つになった気がしてきた。さらに小川のせせらぎや小鳥のさえずりなど、周りの自然の温もりを感じて自分自身も自然の中の一部になったような気がした。


 いつしか動作は深呼吸に合わせたゆっくりしたものになっていて、身体は動き続けているのに眠っているかのような気分になり、頭のてっぺんから自分の魂が抜けだして空中に漂い、いつしか空から素振りをしている自分を眺め下していた。


 どれくらいそうしていただろうか。そんな瞑想状態で素振りを続けていたら、左手が光りだしたので我に返った。ステータスを確認してみたところ以下のようになっていた。


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冴内 洋(さえない よう)

20歳男性

★スキル:チョップLv15⇒Lv20

★称号:熊殺しの黒帯チョップ⇒チョップマスター

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 まさか最終日の朝にさらにレベルアップするとは思わなかった。しかも黒帯だったのがマスターになっているしレベルも5上がってる。


 昨日ですら身の丈程の岩を割ることが出来たくらいだから、果して今はどれほどの威力があるのだろうか。


 すぐにでも試してみたい気持ちになって周りを見渡すが、適当な岩が見当たらない。時刻を確認するともう9時になっており、瞑想素振りだけで3時間以上も行っていたことに驚きつつも、岩探しで探索する時間もない。


 どうしたものかと考えながら目の前の小川を見ていると、ふと何を思ったの小川に向かってスタスタと歩き、川べりについたところでいきなりチョップを地面に叩きつけた。


 その瞬間大音響とともに川が一瞬割れた。

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