7:武器屋にて

 その後、ゲート付近の最初の場所に戻った。ゲート付近の辺り一帯は「ゲート村」と呼ばれるそうだ。

 換金所と呼ばれるところに行ったり、他の何人かのゲートシーカーの方に挨拶したり、野外食堂に行って霜降りイノシシ肉を持って行って調理してもらいその旨さに舌鼓を打ったが、4人ではとても食べきれないので近くにいたゲートシーカーの方にもふるまったところ、大いに喜んでもらいそのおかげで色々と話しもはずみ自分を見知ってもらうことが出来た。皆自分よりも年上で気さくで良い人ばかりだと思った。


 生まれて初めてお酒も飲んでみたがビールは苦手で、甘い桃のジュースのような酒を程々に美味しくいただいた。

 その後大型テント内にある共同風呂で汗を流し、木製ロッジの2階にある個室部屋で寝ることになった。

 翌日、力堂さん、良野さんは本来の探索行動に戻っていった。しばらくはイノシシ狩りをするとよいとアドバイスをいただき、何かあれば気兼ねなく携帯端末に連絡をくれといってくれた。


 携帯端末には富士山ゲート内にいる全員の連絡先があらかじめ登録されており、さらにはそのステータスまでもが、秘匿されることなく閲覧することが出来た。


 その日の午前中は鈴森さんに各施設を案内してもらった。その際またしてもちょっとした出来事が起きた。それは武器屋でのことだった・・・


 鈴森さんに案内されて武器屋に入ると、そこにはズラリと並ぶ武器の数々。目につくのはやはり剣でそれこそゲームに出てくるような見た目の、カッコイイものが沢山置いてあるので興奮しないわけがない。


 ところがそこで問題が起きた。


 試しに持ってみますかと鈴森さんがいってくれたので、目の前の剣を持とうとしたのだが、触ることが出来ないのだ。剣の柄を握ろうとするとまるで立体映像のように手を通り過ぎてしまうのだ。


 当然目の前でそれを見ていた鈴森さんは絶句。近くにいた他のシーカーの方々も驚きの声をあげる。さらには店主と思しき人も出てきて騒ぎ始める始末。


 武器にもレベルというものがあり、高レベルの武器を低レベルのシーカーが持とうとしても、重たくて持つことが出来なかったり、また剣によっては鞘から抜くことが出来なかったするのだが、いくらなんでもまるでホログラムのように手を通り抜けてしまうなどということは前代未聞のことだそうだ。とにかく第三者が見ても異様な光景なのでどんどん人だかりが出来た。


 自分の周りのシーカー同士であれこれと議論が始まったが、そんな折、フラリと一人のシーカーが自分に近づいてきた。

「オレと同じ拳闘士なんじゃね?」と言って近づいてきた彼は、矢吹(やぶき)と名乗り彼がはめていたグローブをはずし「これならどうよ、ハメてみ?」といって、彼にとって恐らく大事な相棒であろうグローブを自分に渡してきた。・・・が、なんと両手で受け取ろうとしたら、やはり自分の手を通り抜けて床に落ちてしまった。

「えっ!?マジかよ!!コレもすっぽ抜けんのか!?」

 彼の大事なグローブを床に落としたことを謝罪したが、全く気にしてないようで「こんなヤツぁ初めてみたぜ」と言った後笑いながら去って行った。


「とりあえずこの件は機関に報告しておきますね・・・」と、鈴森さんが言ったので同意して武器屋を後にした。


 続いて防具屋に向かったのだが、「まさか防具まで装備出来ないことはないですよね」と、鈴森さんが心配してくれたが防具に関してはちゃんと装備することが出来た。

 ただ、防具に関してもレベル制限があって、高レベルの防具に関しては重くてとても装備出来なさそうだった。


 とりあえず動きの邪魔にならない胸当てやスネ当て、エルボーパッドにニーパッドなどのカーボンプロテクターを装着した。装着したまま店の出口付近のカウンターに行き、「これ全部で幾らになりますか?」と尋ねたら、鈴森さんが初回装備は機関の方で出すと言ってくれた。初級シーカーは高レベルのアイテムを装備することが出来ないので、それほど高額にはならないのだそうだ。


 その後道具屋に行って回復ドリンクを3本もらった。柔らかくて軽い素材で出来ており、割れる心配がなく、転んで押しつぶした程度では破裂しない容器に入っており、大きさ的には栄養ドリンク程の大きさで、一応飲みやすいようにフルーティな味になってるとのこと。打ち身や浅い切り傷程度ならすぐに回復するそうだが、骨折や深い傷にはあまり効かないとのこと。それでも痛みや出血はある程度抑えてくれるらしい。もちろん効果については個人差があるそうだ。


 今回もらった回復「ドリンク」ではなく回復「ポーション」になると、さらに回復力は高くなるそうだが、値段もかなり高くなるので、さすがに無料配布とまではいかないとのこと。


 他にもあちこち鈴森さんに連れて行ってもらい、それぞれの場所で説明を聞いた後で昨夜の野外食堂に行き昼食をとった。いったんこれで鈴森さんからの説明は終わり後の行動は自由となったが、鈴森さんには昨日の草原でイノシシ狩りか薬草採取をすると伝えた。鈴森さんからは元の世界に戻る際は連絡をくれと言われて了解した。

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