第26話

「行って来ます。」

俺は何も無かったかのように、出ていった。いつもみたいに、あいつに会いに行きに。

「リティ、遅い。」

「ごめん。ウィル。」

こいつとなら、バレるような事は無い。

「待って。リティ。」

「何だ?」

「何か、あった?」

「…。何も。」

一瞬、黙りかけたが言葉を紡ぐように、すぐに返した。もちろん、笑顔で。

「いや、顔に書いてある。」

「…。」

「リティ、いつもと顔が違う。何日いると思うの?」

「…。は、はは。何、言ってんだよ。違う?大丈夫。大丈夫、だ、から。」

「じゃあ、何で、」

ウィルは俺の頬に手を当て言う。

「泣いてるの?」

「えっ?」

俺も頬に手を当てると、涙が手に伝わる。

「え、何で、だろう。だい、じょぶなのに。俺、は泣か、ないの、に。何で、な、何で、」

「素直に言って。何があったの?」

「言える、訳。」

「馬鹿なの!?そうやって自分で抱えてないで、ちゃんと私にも言ってよ!」

「言いたいよ!でも、あれのせいで、人の事を信用出来なくなったんだ!」

「…。」

「だから、俺は忘れたい。なのに脳にこびり付いて消えない。」

「じゃあ、私が信じさせてあげるよ。」

「えっ?」

「フレムは誰の事も信じなくていい。でも、私の相棒は、リティは、私を信じて。相棒として、一緒のパーティとして、信じて。」

「…。」

俺はどうするべきか。

分からない。だけど。

「信じて。か。」

「?」

「良いよ。話すよ。」

「はや。」

「まぁ、な。」

「で?」

「俺は、生前の記憶を持っているんだ。」

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