第62話 大総選挙1

 ◇◇◇◇◇


 今日は、大総選挙の日です。


 正式名称は、日本探検者協会主催2050年秋季エクスプローラ侍四天王サムライフォーおよび女神七柱メガミセブン選抜大総選挙というらしい。

 年に2回、春季と秋季の後期の部である。


 今日は朝からテレビやネットでは特番が組まれ、お祭り騒ぎだ。

 こんなに世間が騒いでるのに、今まで気づかなかったとは……。

 しかも、女神七柱は聞いていたので知ってたけど、侍四天王という男性版もあったなんて聞いてないよー!

 自分も投票対象だったなんて!

 逆に知らない方が良かったよ。


 なお、投票は午後12時から18時までの6時間で、ネット投票が行われる。

 国民1人につき1票で、国民IDを使って自宅で投票できる。投票率はかなり高い。


 日本探検者協会の特設ページには、全国のエクスプローラの情報が掲載されている。

 この情報には、協会が開示している基本情報に加えて、自ら情報を追加することができるので、投票数を稼ぎたいものは、アピール出来るようになっている。


 基本情報は、至ってシンプル。

 登録時の顔写真、氏名、登録年。

 現在の所属クラン名、エクスプローラランク、それに加えて今回から国内ランキングが記載されている。


 追加情報として、自分で加えた写真や情報が表示されている。


 ちなみに俺の情報は当然基本情報のみ。


 今まで興味もなかったから良かったが、顔写真が出てるなんて知らないから、変な写真で今更ながら恥ずかしい。


 この情報も大総選挙の前日午後18時から当日の午後18時の24時間しか掲載されないため、前日の夕方からは、みんな家に篭って投票のための情報収集をしているらしい。


 昨日、ゲートから帰って来てから、夢咲さんから連絡があって、一緒に結果を見るからクランハウスに来るように言われている。

 食事はクランで準備しておくから気にしないでいいということだ。

 クランの運営補助費ってほんとにざるだな。



 俺は言われた通りにデスガ150に乗って、クランハウスDー318号室に向かった。


カレン:「あ!天堂くん!おはよう。早かったね。」

龍太郎:「うん。おはよう。そっちこそ、もう来てたんだな?」


カレン:「あ、うん。それなんだけど。

 言ってなかったんだけど、私たち、少し前からここに住み始めたんだよね。」


龍太郎:「え?そうなのか?」


カレン:「うん。この前の例の件があったじゃない?

 だから、一緒にいた方が安心かなって思ったんだけど、引っ越すのも大袈裟だし、それならクランハウスがいいかなって。

 協会に連絡したら好きにしていいって。

 だから、必要最小限のものだけ購入してここに運び込んだの。

 一応、マンションも解約してないから、いつでも戻れるしね。」


龍太郎:「なるほど。いいんじゃない。

 そっちの方が安心だし。」


 龍太郎がカレンと話していると、寝起きの美紅が別の部屋から出て来た。


美紅:「げっ!天堂さん!なんで、もういるのよ!」


龍太郎:「お前こそ、今起きたのかよ。」


 美紅は寝起きでパジャマのままだ。

 ちょっと、人には見せられない格好をして出て来たが、俺はお子様には興味がない。


美紅:「ちょっと〜!こんな格好で恥ずかしいじゃないの?出ていきなさいよ!」


龍太郎:「俺はロリコンじゃないから大丈夫だ。」


美紅:「どういう意味!?バカにしてるの?」


龍太郎:「いや、女性として見てない。安心しろ。」


美紅:「ちょっと〜!女性として見なさいよ!

 ノーブラなんだから!ほれ!」


 美紅は胸を張って強調している。

 幼女と言えど、流石にこれはマズイ。


龍太郎:「こら!やめろ!」

カレン:「もう!美紅ちゃん!早く着替えて来て!」

美紅:「は〜い。」


 くそ〜!焦った。

 我ながらこういうのは耐性がないな。


カレン:「天堂くん。チェックして来た?

 ネットでも、テレビでもやってるよ。」


龍太郎:「いや、チェックはして来てない。

 夢咲さん一択だからな。」


カレン:「ふふふ。ありがとう。

 じゃあ、一緒に見てみようよ。」



【顔写真】(・_・)

【氏 名】天堂龍太郎

【登録年】2048年

【ランク】D

【国 内】2600位

【クラン】無所属


龍太郎:「俺のも載ってるんだな。」


カレン:「天堂くん!2600位って!」


龍太郎:「ん?おお!スゲー上がってる!

 あれから結構頑張ったからな。」


カレン:「いくら頑張ったからって、こんなに急に上がるものなの?」


龍太郎:「レベルも3まで上がったんだよ。

 スキルも結構充実して来た。

 もう、初級モンスターは楽勝だな。」


カレン:「へぇ!すごいじゃない。

 頑張ってるんだね。良き良き。」


龍太郎:「そっちはどうなんだ?」


カレン:「まあ、ボチボチだね。

 あんまり、変わらないよ。

 それより、私のも見てよ。」


 夢咲さんの情報は盛りだくさん。

 追加情報が山ほどある。


カレン:「どう?綺麗に撮れてるでしょ?

 プロのカメラマンにいっぱい撮ってもらったから、今回は写真多めにしてるんだよ。」


龍太郎:「おお!綺麗に撮れてるな。さすがプロだな。実物よりいいぞ。」


カレン:「ん?それってどういうこと?」


 あれ?なんで?怒ってる?



 それから、早乙女さんの情報も見たが、これもプロのカメラマンに撮ってもらったらしく、写真がいっぱい載っている。

 ただ、夢咲さんと違って、なんかそういう趣味の人はいいんだろうけど。ロリータ?



 ちなみに前回春季の結果は、侍四天王と女神七柱の紹介ページに掲載されている。

 簡潔に説明すると。



 侍四天王。通称、サムライフォー。

 投票数上位4位までがその称号を与えられる。とあるが何も特典はない。

 あくまでステータスである。



 第一将持国天:御剣みつるぎ京介きょうすけ

 梅田管轄、スカイピア代表のAランクエクスプローラ。

 喜多川兄弟に次ぐ西の雄。六大クランの中では国士無双に次ぐナンバー2クランと称されているスカイピアを率いるナニワの帝王。

 大阪弁で毒を吐くことでも有名だが、人情に厚い人物で人気が高い。

 

 第二将増長天:風魔かざま宇宙そら

 栄管轄、電撃シャチホコ代表のAランクエクスプローラ。

 六大クランでナンバー3クランと称される電撃シャチホコを率いる、強さと容姿の両方を兼ね備える人物。

 四天王の中では最年少である。

 御剣を超えるとすれば、この男だと言われている。


 第三将広目天:喜多川北斗

 渋谷管轄、国士無双代表のAランクエクスプローラ。国内最大クランの代表であり、現役最強の呼び声が高い。ただし、双子の弟の南斗と票数が割れるため、トップに立ったことがない。


 第四将多聞天:喜多川南斗

 渋谷管轄、国士無双所属のAランクエクスプローラ。国内最大クランのナンバー2であり、こちらも北斗と同様、現役最強の呼び声が高い。

 北斗と南斗の票が一方に集まれば、圧倒的に第一将持国天の称号はいずれかになると言われている。



 女神七柱。通称、メガミセブン。

 投票数7位までがその称号を与えられる。



 第一柱女神:如月琴音

 渋谷管轄、カーバンクル所属のAランクエクスプローラ。

 言わずと知れた東のクールビューティ。

 インフルエンサーとして人気が高く、多くのスポンサーがつく、不動の第一柱。


 第二柱女神:葉月はづき静華しずか

 梅田管轄、スカイピア所属のAランクエクスプローラ。

 こちらが、人気を二分する西のクールビューティ。

 如月琴音と同様に多くのスポンサーがついているインフルエンサーの一人で、不動の第二柱。


 第三柱女神:城之内じょうのうち遥香はるか

 天神管轄、水鏡すいきょう代表のAランクエクスプローラ。

 以下、省略。


 第四柱女神:雫石しずくいし萌乃もえの

 札幌管轄、ホワイトリリー代表のAランクエクスプローラ。

 以下、省略。


 第五柱女神:本玉ほんたま亜里珠ありす

 栄管轄、ラビットラビリンス代表のAランクエクスプローラ。

 以下、省略。


 第六柱女神:月城つきしろ麗香れいか

 横浜管轄、パラドール代表のAランクエクスプローラ。

 以下、省略。


 第七柱女神:夢咲カレン

 渋谷管轄、ゴッドブレスユー!所属のDランクエクスプローラ。

 当時、Dランクソロでありながら、突如、現れた超新星。

 容姿だけで言えば、第一柱の如月琴音、第二柱の葉月静華と同等か、抜きに出ていると言っても過言ではない。

 ただ、今まで全てのスポンサー契約を断っており、表舞台に立っていない唯一の女神であるため、そこもコアな人達に人気が高い要因になっている。

 今回、ファンクラブの結成により、どのように票が動くか楽しみな存在である。



 その他もいろいろ情報が掲載されていて、とても盛り上がる企画であることはわかった。

 が、龍太郎にとってはやっぱりイマイチ、モチベーションは上がってない。

 夢咲さん!頑張ってくれ!それだけだ。



龍太郎:「夢咲さん。超新星なんだな。」


カレン:「うん。そうだね。前回はビックリだったけど、今回はドキドキって感じかな。」


龍太郎:「そっか。今回も入るといいな。」


 すでに着替え終わった早乙女さんも横に座っている。


美紅:「カレンさんは今回も大丈夫でしょ!

 それより、私だよ!ドキドキするわ。」


 お前は入らんやろ!と思いつつ黙っておいた。こいつ、面倒くさいから。



カレン:「そろそろ始まるよ。中継見ようよ。」


 夢咲さんが、PCでネット配信の生中継番組を映し出した。


『プッピップ〜!プッピップ〜!パラ!


 皆さん!おはようございます!

 本日は待ちに待った、大総選挙の日です。


 現在、午前10時。

 投票開始の時間まで2時間を切りました!

 皆さん!投票の準備は出来てますか?


 本日はここ、日本探検者協会本部の4階にあります特設会場から、生中継で大総選挙の様子をお伝えしたいと思います。


 進行は、私、探検者チャンネルアナウンサーの梶木間かじきま吾郎ごろうが努めさせていただきます。よろしくお願いします。


 そして、本日は解説者として3名の方にお越しいただいています。

 まずは、日本探検者協会から副会長の野神紗英さん。

 続いて、サムライフォー評論家の秋元あきもと松子まつこさん。

 最後に、メガミセブン評論家の後藤ごとう三平さんぺいさん。

 本日は、解説よろしくお願いします。』


『『『よろしくお願いします。』』』


 ◇◇◇◇◇

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