第60話 3すくみ劇場

 ◇◇◇◇◇


 スパイシーアンドソルティーを狩り終えた龍太郎は、急いで次の現場に向かう。

 意外にも時間がかかったので、今日はあと1カ所になりそうだ。

 ただ、運よく2カ所分を回ったのと同じことになったため、予定通りではある。


 龍次郎も龍太郎の後を追って走る!


 龍太郎たちの移動速度は、すでに尋常ではなくなっている。

 というのも、いつものようにパッシブの俊速に加えて鼓舞と重量操作の重ねがけをして、かつ、今回取得した風魔術Ⅰを使って、忍者走りのような格好で腕を後ろに広げて両方の手のひらから風を送るという技を編み出した。

 さらに宙歩で空中を激走するという荒技で、地上の形状も気にせず、見た目には低空を走っているような感じだ。


 いやー!これ快適、爽快だな!

 周りの景色がみるみる変わってく!

 デスガ150より速いぞ!移動の時短だ!


 追い風を〜♪背に受けて〜♪



 ◇◇◇◇◇



 龍太郎たちは、先ほどの狩場からさらに奥にある次の狩場に到着した。


 ここは、共存区域になっている狩場。

 広大な湿地帯になっているこの場所に、3種類のモンスターが共存しているらしい。


 (レッドアイ)グラントード

 赤目の巨大なカエル型モンスター。


 (レッドアイ)グランサーペント

 赤目の巨大なヘビ型モンスター。


 (レッドアイ)グランスラッグ

 赤目の巨大なナメクジ型モンスター。


 この3種類のモンスターが3すくみ状態で生息している。

 なお、モンスター名が長いので通常はレッドアイの部分は省略されて呼ばれている。


 この区域は、先ほどのドッグたちの狩場の延長線にあったので、ついでに来たのだが、すでに初級とは呼べないほど、ここのモンスターは危険度が上がっている。

 もし、無理ならスキル奪取のみで帰ることも想定してここに来た。


 まずは、モンスターを探さないとな!


 龍太郎は、俯瞰スキルでいつもより慎重に、単体でいるモンスターを探した。


 よし!まずはグラントード発見!でけー!


 想像より目の赤さが印象に残る。

 それにカエルとは思えないほどの大きさだ。

 これは、背中の上に巻物を咥えた仙人が乗るに違いない。


 こいつのスキルは〈水鉄砲〉か!

 どんなもんかわからん。一度見てみるか?


龍太郎:「よし!龍次郎!行くぞ!」

龍次郎:「おぅ!」


 龍太郎は、このグラントードにどれだけ通用するかを試してみることにした。


 湿地帯は足場が悪い。

 そのため、常に宙歩で空中を移動している。


 まずは、龍太郎が正面に立ち、龍次郎は裏に回り込んだ。挟み撃ち戦法!


 初っ端から、グラントードは口から水鉄砲を発射!


 まじでこれ鉄砲玉!これって水!?


 龍太郎は、間一髪避けたが、後ろにあった大木にぶち当たって大木が爆音と共に2つに割れた。


 きえー!なんちゅう威力!


 避けた龍太郎に、グラントードがひとっ飛びでその間合いを詰める。

 と同時に長い舌が龍太郎目掛けて飛んできた。それも龍太郎は避ける!


 うお!危ねえ!


 さらにグラントードの舌攻撃の連射!


 ジャブの応酬かよ!引きが速いぞ!

 こいつ、基本に忠実だな!

 ジャブを制するものは、世界を制す。


 龍太郎が、舌攻撃を避けている間に、龍次郎が後ろからグラントードの背中に旋回斬で応戦するも、とにかくでかいので、皮膚が厚いのかものすごく硬く、致命傷にならない。


 マジ、くそ硬っえー!


 足への攻撃に切り替えて、旋回斬で斬りつけたら、やっとグラントードがよろけた。

 だが、すぐに後ろ飛びで体勢を整えて、今度は口から水鉄砲玉の連射!

 一発の威力が半端ない!

 辺り一面で爆発音が響いてる!


 ただ、龍太郎は、動体視力と運動能力が上がったことで、水鉄砲玉さえ避けられるようになっている。そのことの方が驚きだが……。


 未だに一発も当たっていないぜ!

 というか、これ一発でも当たったら、即死じゃね?


 試しに衝撃砲を直接背中にぶち込んだが、皮膚が分厚いのか、デカいからなのかはわからないが、これも全く効いていない。


 ちょっと〜!マジかよ!?


 でも、機械音が始まった。


〈ピピプピプ……他者の超能を確認!〉

〈超能【水鉄砲】を登録しますか?〉


 もちろん!登録!


〈ピピプピプ……超能【水鉄砲】を登録しました!〉

〈ピピプピプ……超能【水鉄砲】の解放に成功しました。〉

〈ピピプピプ……超能王の効果により超能【水鉄砲】を最適化します。〉

〈ピピプピプ……超能【水鉄砲】は超能【指鉄砲ゆびでっぽう】へと進化しました。〉


 指鉄砲って!?これって進化してる?


 龍太郎は、右手を鉄砲の形にして発射!

 人差し指から本当に鉄砲玉が出た!

 おい!ガチのピストルじゃんよ!?

 これ、もう銃刀法違反じゃん!


 でも、グラントードには効かんぞ!

 いや、ちょっとは効いてるのか?

 見た目ダメージはほぼ無さそうだけど……。


 さらにグラントードに重力操作をかけるも、多少動きは遅くなったが、元々巨体であるが故にあまり効果が薄い。


 これもダメか。

 もう!デカすぎだろ!ガマ親分!


 それでも、龍太郎と龍次郎で動き回り、旋回斬で容赦なく斬りつけていく。


 本当に硬え!マジ初級じゃねえ!


 スキルアップしてから初めての苦戦。

 これは長期戦になるな。

 これで初級!ヤベえよ!


 速度は龍太郎たちの方が明らかに優っているので攻撃は当たらない。

 が、斬っても斬っても反撃してくる。


 たまらず龍太郎は、まだ使っていない覇気スキルをグラントードに思いっきり浴びせた。


 おりゃー!行けー!覇気マックス!!


 すると、あれ!?

 グラントードは、全く動かなくなり、目をむいてゆっくりとその場に崩れ落ちた。


 え?気絶した!?嘘?


 今までの苦戦はなんだったんだ?


 一気に覇気スキル、最強説が浮上!

 確かに目一杯の覇気を使ったのだが……。


 倒れているグラントードに料理長スキルを使ったが、分解されず。

 まだ、息はあるみたい。

 こりゃ完全に気絶だな。


 龍太郎と龍次郎は、グラントードの頭の上に跳び乗って、頭に衝撃砲を2人で交互に打ちまくった。


 うりゃ!おい!うりゃ!おい!

 うりゃ!おい!うりゃ!おい!

 うりゃ!おい!うりゃ!おい!

 うりゃ!おい!うりゃ!おい!


 うりゃ!担当が龍太郎。

 おい!担当が龍次郎。


 何度目かの衝撃砲で、グラントードは口から大量の血を吐き、赤い目が白く変わった。


 ふぅ!これで討伐したか?


 再度、料理長スキルを使うと、グラントードの体は分解されて、食用肉と素材に変わった。

 ようやくガマ親分は息絶えたみたいだ。


 大量の分割されたグラントードの食用肉。

 今は腹一杯で食えないな。


 龍太郎は、大量の食用肉とモンスターコアを収納箱に格納した。


 モンスターって奥が深い。

 まだまだ、これでも初級なんだよな。


 ガマ親分を討伐して、しみじみと感慨に耽る龍太郎だった。


 それにしても、指鉄砲スキルはさすがにまずいよな。

 名前はかわいいけど、これ子供のおもちゃじゃないよ。

 どんどん、危ない人になっていくぞ。


 よく母親が、人に向かって指を差しちゃいけません。って言ってたよな。確かにな……。

 これは絶対に守らないといけないな。


 とか言いつつ、近くの木にダーツの的を描いて、龍次郎と2人で射撃の競争をしてます。


龍太郎:「おー!ブルだよ!」

龍次郎:「おっしゃ!俺もブル!」

龍太郎:「それじゃ、もうちょい離れてやるぞ。」

龍次郎:「オーケー!」


 指鉄砲で遊ぶ呑気な龍太郎と龍次郎。

 はよ次の狩りに行けよ!


 ◇◇◇◇◇

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