ねこのおめめ
冬眠
第1話
今日も猫さんの鳴き声に連れられるまま、猫さんたちの集会に飛び入り参加した。
今回の集会場所は、神社の裏庭みたいだ。色とりどりの、かわいくて、おいしそうな猫さんがたくさんいて、見るだけでも鼻息を荒くしてしまいそうだ。
トテトテと歩く、茶トラ猫さんについていくと、ふいに僕のほうをみんなが、一斉に振り向いた。
「猫さんたち、どぉ~したのぉ~クリックリのかわいいおめめを僕に寄せちゃって~~♪」
好きが故に、デレデレした声で、そんな問いかけをした。
一匹の白い猫さんがナァ~と鳴きながら近づいてくる。
(かわいい、かわいすぎる!!かわいすぎて、もう、きゃわいいだよ。きゃわだよ!きゃわ!!この猫さんを抱きかかえて、逃げちゃいたい!!もぉ……すき♪)
殺気に近い猫さんへの愛情で、怖かったのか、飽きれたのか、僕の心臓を貫きそうなほどの冷たい猫さんの視線を感じた。
ゆっくりと、静かにしゃがみ、猫さんをなでようとすると、するりとかわして、群れの奥の森へと歩いて行ってしまう。僕は、それを慌てて追いかけてみた。
猫さんの歩みは、僕から逃げようとするではなく、まるでついて来いと言いたげなほど、ゆったりと振り向きながら、森の中を進む。
後ろから、鳴き声がしたと思うと、さっきまで集まっていた猫さんたちが、ついてきていた。まるで、猫の大名行列の中に混ざっているようで、喜びのあまり、僕は、その違和感に気づけないでいる。
猫さんに鼻の下を伸ばした僕は、気付けば夕日の届きにくい森の奥へと来てしまっていた。
猫さんが急に走り出した。それに追いつくように、急いで、走ってみると、茂みの先に、大きな猫の石像がそびえ立っていた。石像には、苔が生え、いかにも昔から、この場所にあり続けているといわんばかりの趣があった。
客観的に見れば、この場所、この石像を不気味と言わない人はいないだろう。だが、この僕においては、違う。ただの不気味な像であれば、ここで引き返したくなる気持ちでいっぱいになるだろうが、猫さんだ。猫さんの石像なのだ。かわくないわけがない。
僕の身長よりも大きな石像だから、頭をなでることはできないので、抱きしめた。ないモフモフの毛をなでるように。
足元を見ると、僕の真似をするように、周りの猫さんたちも顔や体をこすりつけていた。この子たちにとっては、大きなお父さんみたいな存在なのかもしれない。
ここは、開けているのに、薄暗いと思ったら。夜が近かったようだ。空は、暗闇を連れてこようとしていた。
夕焼けの残り火を浴びたおかげか、大きな石像の顔が、かわいく笑っているように見えた。
足元にいる猫さんたちのしっぽに魅了された僕は、しゃがんで、足元の猫さんたちをなでようとしたら、シャーッと怒られてしまった。
(あぁ、すき……)
猫さんは何をしてもかわいいという、誰も覆せない確立させたバカげた理論を自信満々に唱えてみる。すると、猫さんたちに溶かされた頭を幾らかましに見せれると思っていたからだ。
猫さんに脳を溶かされていると、重たく響くようなナ”ァーという鳴き声が森に響いた。そして、怯えたカラスが、空を大きく羽ばたいていった。
普通だと、ここで恐怖を覚える人が大半だろうが、僕は、負けていない。新たな、猫さんの美声に魅せれれてしまいそうだった。
ここで、タイマーが鳴った。
これは、僕が、猫さんが好きすぎて、時間を忘れてしまう癖から、親友に命令されてしぶしぶ設定したものだ。
あたりは、完全に暗くなり、帰り道を見失いそうになる。
僕は、猫さんのライトを使って、もとの道をたどって、あの神社へ戻ってきた。
今度は、僕の後ろには、一匹も猫さんがいないことを残念に思いつつ、帰路についた。
今日も、猫グッズだらけの部屋へと帰って、眠った。
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