序の章 1.歩美
1.歩美
八月の日差しは、容赦なく照り付けていたが、時折初秋を思わせる風がそよぐ。。
サンダル履きの足を、前へ前へと進める。
左手に橋が架かり、小川のせせらぎが見える。
ホテルすずかけ。
入口に立ち、自動ドアが開くと、ほっとして中に入る。
「予約の、広瀬歩美と申します」
「ご一名様、ご一泊で予約いただいています。よろしいでしょうか」
「はい」
「前のソファにおかけになって、少々お待ちください」
男性スタッフが、てきぱきとチェックインを進めていく。
「サインをお願いいたします」
ペンで、すらすらと署名する。
「では、お部屋へご案内致します」
フロントマンの後について、部屋へと向かう。
『岩戸の間』
「こちらでございます。キーをお渡しします。どうぞ、ごゆっくりお過ごしくださいませ」
「ありがとうございます」
一礼して、中へ入った。
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