序の章 1.歩美

1.歩美


 ドライヤーで髪をとかしながら、軽くつま先をトントンと弾ませ、白い下着の心地よい肌触りに満足していた。

 ショートボブは、乾きが早い。

 すぐに、ブルージーンズを履いて、街に出る。

 八月の日差しは、容赦なく照り付けていた。

 サンダル履きの足を、前へ前へと進める。

 左手に橋が架かり、小川のせせらぎが見える。

 

 ホテルすずかけ。

 入口に立ち、自動ドアが開くと、ほっとして中に入る。

「予約の、広瀬歩美と申します」

「ご一名様、ご一泊で予約いただいています。よろしいでしょうか」

「はい」

「まえのソファにおかけになって、少々お待ちください」

 男性スタッフが、てきぱきとチェックインを進めていく。

 瓶の牛乳があった。

「これも、お願いします」

「140円、いただきます」

 小銭で、丁度支払う。

 グイっと飲み干すと、体が喜ぶ。

「サインをお願いいたします」

 ペンで、すらすらと署名する。

「では、お部屋へご案内致します」

 フロントマンの後について、部屋へと向かう。


『岩戸の間』


「こちらでございます。キーをお渡しします。どうぞ、ごゆっくりお過ごしくださいませ」

「ありがとうございます」

 一礼して、中へ入った。

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