お披露目
2人に見せたのは、れもねぇどママが丹精込めて描いてくれた俺の立ち絵。
もう一人の俺と呼べる存在だ。
ママからDMで返事があったあの日からもう3週間の月日が流れている。しかし立ち絵が完成した時は、まだ約束の1か月に達していなかった。あまりに早い仕事ぶりに俺は腰を抜かしそうになるほど驚いたものだ。
仕事が早いし、そして完璧だ。
もう脱帽なんてレベルではない。
「おぉ……」
「これは……」
俺の立ち絵を見た2人は感嘆のため息を漏らしている。無理もない。俺なんか見た瞬間に部屋の中で乱舞したほどだ。それに比べれば2人の反応など小さなものである。
そんな2人を見ながら、俺は満足気に口を緩めてドヤ顔で言い放った。
「すげぇだろ?」
▼
それから約2週間後、モデラーさんの依頼も完了し完全に俺の肉体の準備が完了したその日、俺はこのようなツイートをしていた。
===============================
CHIZU@重大発表
本日、俺は遂に念願の肉体を手に入れる!
待機所
↓↓
https://×××××××××.
================================
事前告知など一切なく、この日初めてリスナーたちには俺のVtuber計画の内容が伝わることとなった。
初めて伝えるが、最初からクライマックスである。
今日の配信のサムネイルには、俺のアバターのシルエットがデカデカと映った今までの俺のサムネとは一線を画すものである。
お披露目配信なのだから、流石にあの黒背景と明朝体『雑談中』の文字はない。
明るくふわふわとした背景素材を使っている。
俺は配信の準備をしながら、待機所のコメント欄を見ていた。
コメント欄
:待機
:待機
:楽しみ!
:ソワソワ
:ワクワク
:全裸待機
:待ちきれんでー
:初見です
どうやらみんな期待してくれているらしい。
あと初見さんもいる。Vtuberファンの方だろうか。なんにせよ見に来てくれるのは嬉しい限りだ。
さて、そろそろ始めますかね。
「やあやあ皆さんお揃いで」
コメント欄
:きちゃ
:キター!
:きた!
:お!
:待ってた!
……人、多くね?
俺が配信を始めて第一に感じたのがそれだ。
同時接続者数1万人などという馬鹿げた数字が俺の視界に入っているのだけれど、これはなんかのバグであるのだろうか。
ふと、SNSを見てみると俺のさっきのツイートが要因の1つであることが分かった。
れもねぇどママ、カラメさん、ミクルさん。などなど、色々な配信者さんにリツイートされていたのだ。
皆、影響力のある人ばかりである。全くもってえげつない。
そのほかにもまだ絡んだことのない配信者さんやVtuberさんにもリツイートされたり、そりゃあ色んな人の目に留まるよねって感じだ。
「いやはや、人が多くて戦慄してまうで。さて、じゃあ引き伸ばしすぎるのもあれなんでちょっとずつ見せていくことにしましょう」
そう言って俺は画面外にあるアバターを動かし、足だけを画面に映した。
「どうです?この足は?フェチの人にはたまらないんじゃなかろうか」
コメント欄
:たまりません
:これはこれは
:綺麗な足やぁ
:露出は少なめなんだけど、どことなくエッチだよね
:なんかすごい人たちが湧いてるなぁ
:淑女の方々がいるんやろ
:男だけどこの足は良いと思います(小並感)
黒い革製のシューズにきちっとした印象を与えるような黒いズボン。
このままじっくりと俺の全身を晒していこうかと思ったが、やめた。
「はいズドーン!」
一気に全身を画面内に出したのである。
コメント欄
:!?
:!?
:!?
:びっくりした
:なんやなんや
:おっふ。いい男
:急に来た!
コメント欄も騒いでおります。
「じゃーん!これぞあのれもねぇどママによって生み出された至高の体である。どうよ?」
現れた俺の姿は、緑と黒を基調にした礼服姿で高貴さを感じさせる服装をしている。マントやらアクセサリーやらで豪華さに拍車がかかっているのだ。
顔はまあイケメンである。俺の最初の要望通りにチャラ過ぎず真面目過ぎず通りの印象だ。これの神調整には俺も驚きまくった。
全体的に大人っぽさを感じさせつつも顔にはどことなく幼さが残る印象だ。
コメント欄
:最高
:凄すぎ
:れもねぇど先生に描いてもらったってこと!?
:れもねぇど先生とかヤバスぎん?
:大物絵師やぁ…
「だろう?俺のママは凄いのよ。そしてじゃじゃん!俺のこの姿での職業は、異世界の図書館司書!雑談を盛り上げるにはある程度の教養が必要ってとこから、知識イコール本と連想して描いたとのことです!これはママの発想力に脱帽」
コメント欄
:なるほど
:ほぉ~
:いやなんかすご
:ちょっとママがすごいですね
:俺にはない発想やなぁ
:ということはVになっても雑談するってことやな
:それは嬉しい
「そしてそして、これだけでは終わらんよ。じゃん!本持ち差分!そしてマントなしにメガネあり差分や!」
俺のアバターの手に開いた本が現れ、そしてマントがなくなりメガネがかかる。これだけで大分印象が変わる。
コメント欄
:ふぉーー!
:差分多すぎィ!
:気合の入りようが違う
:ライブ2Dもヌルヌルやしな
:これは大型新人誕生
:期待高まる
そしてその後は俺の配信でのタグやリスナーの呼称、ファンアートのタグなどを決めて配信は終了した。
◆
よろしければ☆やコメント等お願いします!
励みになります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます