39枚目『新たな芽吹き眼下に ―鴉野山(からすのやま)―』

 近く見える小高い山の森林は、黄色に近い柔らかな緑とヤマザクラの淡い紅色で春を告げている。野原の方を見下ろしてみると、冬の色はどこかに追いやられて、若い緑の勢力が支配している。


 足元に目を移すと、ここはまだそこまで緑の勢力は強くない。しかし着実に、この山にも春の波が迫っている。


 春というしおは、段々と世界を満たしてゆく。今、その波打ち際は足元にある。あと数日もすれば、ここも春という海に沈んでしまうだろう。

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