情景スニッピング

5枚目『儚き夏への通り道 ―旅の途中・アジサイ―』

　春と夏の幕間に演じられる、霖（ながあめ）という寸劇の主役は、雨に濡（ぬ）れたアジサイだ。桃に青に紫に加えて、白や黄緑色の変わり種もいる。

　舞台袖（そで）に控（ひか）えている夏の役者は、アジサイなんかよりも魅力的な者揃（ぞろ）いだ。夏の舞台が開演すれば、すぐにアジサイの華麗（かれい）な演技も忘れられてしまうことだろう。

　無常なものだ。霖に咲（さ）く役者の旬（しゅん）は儚（はかな）い。

　鉛色（なまり）の背景の先には、抜けるような夏空と燦々（さんさん）と輝く太陽が待っている。

　演劇『夏』

　その開演はもうすぐだ。