運命

水玉猫

Femme fatale

 おまえは、最悪の女だ。

 こんなにも、愛しているのに。

 どれだけ愛したら、おまえはおれだけを見てくれるのだろう。



 心はすぐに彷徨さまよい出し、いつだっておれの腕の中にいるのは、おまえの抜け殻だけだ。


 だれだ。

 だれなんだ。

 おまえの心を、こうまで支配しているのは。

 それに気付かないほど、おれが抜け作だとでも思っているのか。



 おまえの一挙一動にきりきり舞いする無様な道化師を、心ゆくまで嘲笑あざわらってくれ。

 だけど、おまえはそれすらしない。

 いつだって、おまえの目はおれを素通りして、ここにはいないだれかを探している。

 

 おまえにとって、男はみんなどれも同じだ。

 おれの代わりは、いくらでもいる。

 しかし、おまえの心を占拠しているそいつの代わりはいないんだ。

 おまえの代わりが、おれにはいないのと同じように。



 おまえは、運命の女ファム・ファタル

 狂おしいほど愛らしく、いとおしい魔性の女。


 お願いだ。一日の半分—— いや、一時間だけでいい。

 その美しい目で、おれだけを見てくれ。

 おまえの心に、おれを住まわせてくれ。

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