掌編集
翡翠
手紙
引き出しから数通の手紙を見つけた。
『持ちうる全てを空にしたなら、も一度あなたに逢えるだらうか。』
窓の外では、音もなく雪が降っている。
『月が綺麗ですねとはよく言つたもので、きつと晴れた日でなければ叶わないのでせうね。』
差出人の名は無い。が、これは祖父の字ではない。
『これきり手紙は書きません。あなたも困るでせうから。』
祖母は一体何を思って、何を願ってこの手紙を取っておいたのだろう。
『ありがたう。左様なら。』
僕は手紙をそっと閉じた。所々文字が滲んでいたのは、きっと、古いからだ。
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