痛苦と絶望のアングラゲーム ~凄惨たる死を想う少女の過激で危険な電脳遊戯~

えのき

プロローグ

プロローグ

「むむ……? CFWの導入はOKで……、設定ファイルの配置が……。あっ、アカウント情報が初期化されてる。えーっと、し・じょ・う紫条さ・つ・き皐月、5月4日生まれ、16……じゃダメだから、10足して26と」



    ◇◇◇


「機器はOK、ソフトもインストール完了、制限解除コマンドも忘れていない。よし……これで……。あぁ、ついにあの世界への切符が……!」


────「Unlimitedアンリミテッド-Gruesomeグルーサム:Rabidラビド」、略称はUGR。

 西暦2091年初頭に登場した新しいVRゲームだが、内容は至って無難。ステータスを割り振り、スキルを取得し、冒険者となって敵と戦うオーソドックスなアクションRPGだ。

 強いて言えばLvが無く、経験値を直接消費してステータスの上昇及びスキル獲得を行うシステムが特徴といったところか。


 一見凡庸なゲームだが、その明確な強みはメーカー非公認・・・・・・・のVRMMOソフトウェアであり「〝痛覚フィードバック〟や味覚の再現・増幅、生殖器の再現など、法的にグレーなラインのシステムを実装している」こと。つまり、スキモノ、マニア向けのアングラなゲームというわけだ。


 外ならぬ皐月自身も、痛覚フィードバックシステムに惹かれこのゲームのプレイを決定したくちだ。とはいえ痛覚、痛み。もしもそのまま実装されたのなら、すぐに事故・・が起きて即刻サービス終了の憂き目に遭うだろう。

 だからこそ、UGRにおける通常の痛覚反映度の限界値は20%というかなり低い値に制限されている。

 だが、設定時に特定の隠しコマンドを用いることによって、これを最大で100%にまで引き上げることができるらしい。


 痛覚反映度100%。つまり、皮膚が割けたなら裂傷の痛みを、骨が折れたなら骨折の痛みを、そのままに感じるということ。

 あぁ、なんて、なんて素晴らしい!

 しかし、たとえ実際には存在しない仮初の痛覚でも、甚大な痛みは現実でのショック死という事故を引き起こす危険性がある。


「だが、所詮は電気信号が生み出した虚構の痛み。だからこそショック死、本当の死というリスクがあって初めて心凍える恐怖が生まれる……!」


 さぁ────めくるめく痛苦と絶望の世界へ!




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Tips

『CFW』カスタムファームウェア

 非公式に改造された電子機器の制御ソフト(ファームウェア)のこと。

 ゲーム媒体においては、主に非認可の、公式に動作が許可されていないソフトウェアを実行するために導入される。

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初執筆です。よろしくお願いいたします。

一章分、5話+αを本日18時から1時間ごとに投稿していきます。

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