自然

自然

私は人間が好きです。しかしながら、それ以上に自然が好きです。

私が一生で出会える人は、おそらく数えるほどしかいないでしょう。

自然は違います。日を追うごとに、また、秒針がひとつ進むごとに、

全く違った者に会えるのです。

時に優しく律儀な者に会い。

時に激昂し、荒ぶる者に会い。

時に心を開かず、無表情な者に会い。

時に高いところから見下す者に会い。また、高いところから見守る者に会い。

時に低いところから私を掬い上げ、支える者に会い。また、逆転を狙う者に会う。

これまで巨億の者に会ってきた。そして、これからもそれは同じことだろう。

私の眼球よりも小さい者から、私の眼球では全体を捉えられない者までいる。

また、私の腎臓よりも小さい者から、私の心臓ではあまりにも足りない者までいる。

それらは一期一会で、もう一度会いたくとも会えないのが定め。

絵や写真や映像に残そうが、まったく同じ者を目にすることは出来ない。

それ故に、私はどんな者と出くわそうが、その者を問い詰めたり、避難したりはしない。

その者たちの話をこの身すべてで傾聴することに徹している。