第2話

 ダンジョンを抜けると、俺達は草原を歩きながら世間話を始める──。


 俺はハンナさんが背負っているハンマーが気になり「ところでハンナさん。ハンナさんはその……もしかしてドワーフですか?」と質問をした。


「あぁ、半分な。私はハーフドワーフだよ。珍しいだろ?」


 ハンナさんはそう言って微笑む。さっきは目が鋭くて怖いと思ってしまったが、とても優しい笑顔をしていて何だか落ち着いた。


「えぇ、そうですね」

「ふふ、正直だな」

「あ……気を悪くしましたか?」

「いや、全然。気を遣われる方が苦手だ」

「そうなんですね」


 ドワーフかぁ……ドワーフは人間より力持ちと聞く。だから軽々と自分ほどのハンマーを振り回せるのか。それでも何だろ? 違和感が残る。


「ハンナさんのスキルって、もしかしてバフ系ですか?」

「いや、似ているけどバフではない。そうだな、君のスキルを教えて貰って、自分のスキルを話さないのはフェアじゃないな。教えてあげよう──」


 ハンナさんはそう言って自分のスキルについて話し出す。


「──とまぁ……そんなところだ」

「へぇ……制限付きの珍しいスキルですね」

「ん? 君のだって制限付きだろ?」

「──あ! 言われてみれば、そうですね!」

「なんだ。今まで気付いてなかったのか?」

「はい!」


 俺が返事をすると、ハンナさんは可愛い笑顔をみせながら「はははは」と豪快に笑った。俺もつられて「ふふふ」と笑ってしまう。


「ハンナさん、これから探求者ギルドに行ってアイテムを換金するんですか?」

「いや、ギルドには行かない」

「え? 何で?」

「群れるのが苦手でな。ダンジョンだって一人で行っていたぐらいだ」


 それで中層まで行けていたのか。本当にすごい人だな、この人……。


「じゃあ何で俺と組もうと思ったんですか?」

「君なら大丈夫だと、直感で思ったからだ」


 ハンナさんはそう言ってニカッと笑う。


 それは喜んでいいのか、悪いのか……反応に困ったが、とりあえず「ありがとうございます」と御礼を言ってみる。


「うん」


 ──といっても、ギルドに登録しておくと色々と有利なんだよな。


「ハンナさん。パーティはこのまま、ギルドとのやりとりは俺が全てやるので登録してみませんか?」

「構わないが」

「良かった。ありがとうございます」


 ──こうして俺達は探求者ギルドに行って登録を済ませ、回復アイテムなどを支給して貰う。もちろん不要な装備などを換金したりして、ハンナさんの装備も整えた。


 ハンナさんは実力があるものの、ダンジョンの事は詳しくなかった。だから俺はアレスのパーティに居た頃の知識を活かして、ハンナさんをサポートした。


 その甲斐があって俺達は、最初の探求者ランクEから、あっという間にランクAへと成り上がる。そこまで達する間、俺は呪われた盾・鎧・ブーツを手に入れていた。

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