第7話 貴族の事情
明かされた元相棒ジョエルの過去。
俺と離れ離れになってからはかなり苦労していたようだ。
その時の様子をブロードとイスナーが話してくれた。
「ログナス家当主のダウェン様は、ずっとジョエル様の行方を追っていました」
「手がかりなんてロクになかったはずなのに、よく見つけだせたな」
「ダウェン様はメイドとの間にできた子どもがどういう運命をたどるのか知っていた。あの頃はまだ先代様が御健在だったからなぁ……家柄もネックになったのは間違いない」
「ブロードの言う通り――なので、ダウェン様は先手を打っていたんです」
「先手?」
「どこにいても子どもの場所が分かるように指輪の形をした魔道具を装着させていたんだ」
ブロードの言葉を耳にしてハッとなる。
そういえば、ジョエルは指輪をしていた。自分の成長に合わせて指輪も大きくなっていくことから魔道具だと予想はしていたが……本人はそれを両親からもらった唯一の物だって大事にしていたな。
それがまさか、本人の位置を実の父親に知らせるための物だったとは。
「先代当主が亡くなり、ダウェン様が正式に新たな当主となった。――それと同時に、もうひとりの息子であるジョエル様を連れ戻そうと動きだした」
「ちょっと待った。なんでそのダウェンって貴族は本妻がいてすでに後継ぎもいるのになぜそのようなことを?」
「あぁ……それなんだが……」
何やら言いづらそうにしているブロード。さっきイスナーに怒られたというのもあるんだろうけど、口が重くなっている理由はそれだけじゃないようだ。
「なんというか、ダウェン様と奥様はいわゆる政略結婚でして……その一方、ジョエル様の母親であるメイドとはずっと仲が良かったそうです」
「つまり奥さんとは折り合いが悪かったってわけか」
「それだけじゃねぇんだわ」
そう付け加えたのはブロードだった。
イスナーも同じ意見らしく、無言で頷いている。
「と、いうと?」
「そこから先の詳しい話についてはジョエル様の判断も仰がなくてはなりません」
「ジョエルの判断って……じゃあ、これからログナス家の屋敷に?」
「おまえにその気があるなら――ついてきてくれるか?」
ふたりは最終的な判断を俺に委ねるらしい。
……恐らく、これもジョエルの指示だろう。
連れ帰ることを望んでいるが、俺が拒むようなら無理強いはしない――そんな風にブロードとイスナーには説明をしたはずだ。あいつは昔からそういうヤツだからな。
それに、ここまで来ておいて「じゃあサヨナラ」というわけにはいかない。
「もちろんだ。俺をジョエルのところへ案内してくれ。あいつと再会するため、俺は冒険者として各地を転々としていたんだからな」
「おかげで見つけるのに苦労したよ。あちこち歩き回ってクタクタだ」
「まったくですね。ジョエル様の時とは違って、名前以外の情報はおぼろげな外見の印象だけでほぼノーヒントでしたから」
ふたりからこぼれるこの言葉は、たぶん本音だろうな。
でも、それだけ本気で俺を捜していた――それはジョエルへと忠誠心の強さを示している。
こうして、俺はログナス家を訪れる覚悟を決めた。
※次は18:00に更新予定!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます