「あ。お母さん、あの図書館行ったんだ。私も行きたかったなぁ」

バスタオルを頭に乗せたまま、甘えた声で娘の絵里奈えりながリビングに置いてあった本を手に取り、ソファーに座る。

二人分の食器を片付け、夫の晩ごはんを冷蔵庫に仕舞いつつ、まじまじと本を眺める様子を横目で盗み見る。

テレビから話し声が流れ、無造作に置かれる本。

「ねぇ、今度散歩がてら一緒に行こうよ。この街の探検も兼ねてさ、いいでしょ。お父さんも連れて」

無邪気な声に、得も言われぬ感情が、私をゆっくりと捕らえ始めていた。

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