第10話 討伐クエスト

 朝食を済ませた俺は冒険者ギルドで依頼を探しに来ていた


「おはよう!リヒト君」


 振り返ると担当受付嬢のエイラさんがいた


 綺麗に整えられたショートカットの黒髪と制服が破けるんじゃないかと心配になる

 ほどの圧倒的なスタイル


 男なら誰でも惹きつけられる美しい容姿をしている


「おはようございます。依頼を受けに来ました」


「ちょうど今、リヒト君に頼みたい依頼が入ったんだ」


 わざわざ俺に頼みたい依頼か、嫌な予感がするな……


「なんです?」


「ブラックベアー討伐の依頼だよ」


「ブラックベアー……ですか」


 ブラックベアーは巨大な体に巨大な牙、そして巨体に似合わず高速で攻撃を仕掛けてくる事で有名なA級モンスターだ


「ランクAの冒険者はリヒト君しかいないからね、君が受けてくれなかったらセンターギルドに要請することになるんだけど……」


 エイラさんは眉を寄せる


「ブラックベアーは人を好んで襲う魔物です。センターに頼むとしても三日はかかりますし、その間にかなりの人的被害が出ますね」


「そうなの!だから、このバーグのエースであるリヒト君に絶対に受けてほしいんだ!」


「そのエースって呼び方辞めてくださいよ、恥ずかしい」


「報酬は弾むから!おねがい!」


 話聞いてないな、この人……


「勿論、そういうことなら依頼を受けます」


「ありがとう!やっぱりリヒト君は頼りになるね!」


 依頼を受けた俺はギルドを後にする






 ◆◆


 ブラックベアーが発見された森に到着した


 草木をかき分けて進むが近くに魔物の気配が全くしない。強力な魔物のブラックベアーが近くにいる証拠だ


 もう、ここら辺は奴の縄張り……警戒を強めるか


 その時――


「ガァル!」


 ブラックベアーが草陰から牙をむきだして襲ってきた


「いきなりかよっ」


 俺はナイフで牙を防ぎ距離を取る


「ヴガァァ!」


 ブラックベアーは再度同じ攻撃を仕掛けてくる


「動きが単調なんだよ!」


 俺は攻撃をかわしながらブラックベアーの周りにナイフを囲むように刺す


 こいつの攻撃は確かに早いがパターンを掴めばかわすことは簡単だ

 そして、こいつには大きな弱点が一つある


「定点魔法 星喰いスターエデッセ!!」


 打ち込んだナイフが輝きを放つ


「ガァッ!!」


 激しい光がブラックベアーの体を包み――、焼き切った


「魔法っていう分かりやすい弱点があって良かったよ」


 ブラックベアーの牙を切り取った俺はギルドに戻った





 ◆◆


 ギルドの受付で討伐したブラックベアーの牙を提出した



「流石リヒト君!Aランクの魔物を無傷で討伐なんて凄すぎだよ!しかもソロで!エースは違うなあ!」


「おだてても何も出ませんよ……あとエースって呼ぶの辞めてください」


「僕は事実を言っているだけだよ!」


「28にもなってボクっ子かよ」


「何か言ったかな?」


 エイラさんから押しつぶされそうな圧力を感じる


 マズイ!声に出てた!?


「な、何でもないです……」


「そう……あの話、考えてくれた?」


 あの話、とはおそらくSランク冒険者への昇格試験のことだろう


 Sランク冒険者は国王直属の部下になる。なれば一生安泰、さまざまな特権が認められるが反対に制限も多い


 自由に過ごしたい俺に受ける気はない


「昇格試験なら受けませんよ俺は自由に生きるんです」


「じゃあ、受けたくなったらいつでも言ってね!」



 その後報酬を受け取った俺は家に帰った









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