第9話 決断の朝

 朝、目が覚めた俺がリビングに向かうとテーブルには既に食事が並んでいた


「おはよう、リヒト」


 キッチンからソーレが出できた


 昨日あんな事があったから少し心配だったが……


「おはよう、ソーレ……朝飯作ってくれてありがとう」


「ううん、気にしないで」


 二人でテーブルに着く


「昨日は……ごめん、私となんてやっぱり嫌だったよね……それでね、リヒト、私これから」


 ソーレが遠慮がちに口を開く


「待って……その前に、一ついい?」


「うん、」


 ソーレがどんな決断をしたのかは分からない、けど……その前に俺からソーレにどうしても伝えなきゃいけないことがある


「昨日、俺が断ったのはソーレのことが大切だったからだ」


「私のことが……大切?」


 ソーレは首をかしげている


「そうだ、俺が手を出さなかったのはソーレが嫌だったからじゃない」


「……大切だと嫌じゃなくてもしないの?」


「そうだ」


「じゃあ、いつすればいいの?」


 今までのソーレにとってはそれが仕事だったんだろう


 だから、体を差し出すことで自分の存在理由を見出そうとしている


「ソーレが本当にしたいとき以外はしなくていい」


「そんな風に言ってもらえたのは……」


 ソーレは一瞬顔を伏せる


「リヒト、私のこと嫌じゃないんでしょ?」


 嫌だったらそもそも全人生かけてまで助けないと思うんだが……


 それでも俺に信頼を寄せられないのはこれまでの奴隷としての生活がそうさせているんだろう


「当たり前だ。俺が一度でもソーレにそんなこと言ったことがあるか?」


「あるよ、昔たくさん言われた」


「あれはお前が我儘だったからだろ」


「じゃあ……さ、しばらくここに住んでもいい?」


「勿論、いいよ」


 少し……ほっとした


「ありがとう、よろしくね!リヒト!」


 少しぎこちなかったが、数年ぶりに見たソーレの笑顔は花のように綺麗だった


「こちらこそ、ソーレ」


 朝食を二人で食べ始める



 食べ進めていると――


「……私に何があったか気にならないの?」


 ソーレは暗い顔をしている


 もしかしなくても昔のことを思い出しているんだろう


「気になるよ、でも、聞いて欲しいの?」


 確かに気にはなるが無理に聞くつもりはない


「……今は、話したくない……、かな」


「ソーレが話したくなった時に聞くよ」


「私、リヒトに優しくしてもらってばかりだねっ、」


 困ったような眉になる


「だからって、もう昨日みたいに襲ってくるなよ」


「もっ、それはもう忘れてっ!」


 赤面したソーレは手で自身の顔を覆う




 そんなやり取りを続けながら済ませた朝食は楽しかった






 ◇一話書き直しました!

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