ミソロギア ~魔王と枯れない花~
つばさ
一章・旅立ちと目覚め
小さなころからずっと、お母様に読み聞かされてきたご先祖様の物語を思い出していた。
それは、邪な心から生まれた邪神ゼニスが世界を支配していた昔…。
世の中は、戦争、混沌、黒い想いで満ちていた。
そんな中、残った希望や祈りから女神セレスが生まれた。
セレスの庇護のもと、四英雄が立ち上がった。
剣士ローズ、魔術師ジルコニア、僧侶ムーン、狩人ジェイド。
彼女たちは知恵と祈りと勇気で女神セレスと共に、邪神ゼニスを封印した──。
──
「いい? ルビィ。邪神に負けないように、祈りと希望を持ち続けるのよ」
「はい、お母様!」
小さな王女は力強く頷いた。
──14年後。
ご先祖様である四英雄の一人、剣士ローズ肖像画の前で、ルビィは小さな頃の記憶の糸を手探りしていた。
「私は、ローズ様の様になれるかしら…」
ルビィはそう呟いてから、時計を見ると、お昼がもう近いことにはっとした。
「あっ、いけない! ダイヤのところへお昼を持って行く約束してたんだった!」
ルビィは従者のラピスを呼ぶ。
「ラピスー!!」
そこへすっと可愛らしいバスケットを持ってやって来たのは、珍しい魔物の従者だ。黒い角に、黒い羽。灰色の尻尾を持っている。灰色の髪の少年で、その瞳はラピスラズリの様に星空が広がっている。
「お約束の時間ですね。エメラルド様お手製のサンドイッチ、預かっております」
ちらりとバスケットの布をめくると、こんがりとした固めのパンに色とりどりの野菜と、大きなお肉の挟まった特製のサンドイッチが顔をのぞかせる。
ルビィはその母特製の美味しそうなサンドイッチの入ったバスケットを右手に下げると、にっこりとした。
「ありがとう、ラピス」
「楽しんできてください」
「行ってくるね!」
──
ルヴァル城から一歩出ると、にぎやかな城下町が迎えてくれる。
こっちは宿屋、『止まり木』。
あっちは酒屋、『バッカス』。
この道をすぐ曲がった先は雑貨屋の『クリスタル・ベル』
そしてその先が居住区。
ルビィは王女でありながら、街のことに精通している。
今はまだ王女だが、街を知ることでできることがあると信じているからだ。
そして、道を歩けば「こんにちは、王女様」と声をかけられる。
ルビィは返事をしながら、軽やかな足取りで居住区へ向かう。
今回は親友、ダイヤに用事がある。
「ここね」
ルビィが、さあノックしようとした時、ドカンと小さな爆発音が家の中から聞こえてきた。
窓が開いて、怪しい色の煙と、咳き込む少女が顔を出す。
おっとりしたダイヤモンド色の瞳に金色のふわふわの髪の毛。
手をぱパタパタしながら、こちらに気が付いていない様子でダイヤが言う。
「ふえぇ…なんで、上手くいかないのぉ~…」
「ダイヤ!」とルビィが声をかけると、ダイヤは気が付いて「あっ、ルビィ!」と返答する。
「また失敗したの?」
「うん、回復薬を作ってたのに…爆発しちゃったの! 原因が全然わからなくて…」
そう言うと、ダイヤがドアを開けてくれる。
ちりんちりんと、ドアベルが鳴ると、いつもの様に黒髪の妖精が飛び出してくる。
「ルビィ~!! げほげほ。…助けて! ダイヤったらまた爆発させたのよ!」
「あっ、パール!…そうみたいね」
ダイヤは申し訳なさそうに、ルビィに話しかける。
「立ち話もなんだから、どうぞ。まだ煙いけど…」
「ありがとう。お母様特製のサンドイッチ持ってきたから、お昼にしましょう?」
ルビィがそう言うと、パールが周囲を飛び回って喜びを表現する。
「やた! あなたのお母様のサンドイッチ、本当に美味しいのよね!」
ルビィは微笑んで頷いた。
──
ダイヤとパールは「美味しいね」とにこにこしながら特製サンドイッチをもぐもぐしている。
「お茶も美味しいよ」とルビィが言うと、ダイヤは笑った。
「お気に入りのお茶を取り寄せて良かった」
そう言うと、ダイヤは続けた。
「ねえ、ルビィ。回復薬の作成、何で上手くいかないんだろう…原因がさっぱりわからないの」
ダイヤは俯いて、お茶を混ぜるように揺らす。
ルビィは「うーん」と唸ると、答えた。
「私も詳しくはないから、わからないけど。やっぱり分量とか混ぜ方? 炊く時間もあると思うし…」
「きちんとやってるつもりなんだけど、やっぱり大雑把なのかな…」
ダイヤはしょんぼりしている。
そんなダイヤを見かねたルビィは言った。
「回復薬を作って爆発するなら、爆発薬を作ってみたら回復薬が出来るかもよ?」
ルビィは冗談のつもりで言ったのだが、ダイヤの目が急にきらきらしてきた。
「ルビィ、頭いい~! それ、やってみる!!」
パールが頭を抱えながら、「はあ」とため息を零す。
「あー、誰かこの娘なんとかして…」
ルビィは申し訳なさそうに苦笑いしながらつぶやいた。
「なんか、ごめん」
ダイヤは相変わらずキラキラした瞳で、爆発薬の教科書をぱらぱらとめくっている。
「あれとこれと…この割合で…ぐつぐつと……なんか、出来る気がしてきたよ~」
ふと壁に掛かっている時計を見ると夕方4時を指していた。
時間はあっという間だ。
ルビィは腰を上げると「そろそろ…」と口に出す。
ページをめくっていたダイヤがそれに気が付いて、「今日はありがとう」と言葉に出す。
パールは満腹の様子でお腹をさすりながら、座ったまま「とても美味しかったわ」と言う。
ルビィが答える。
「二人とも、ありがとう。私もとても楽しかったわ」
「またね」とドアベルがちりんちりんと鳴ると、外は雲に覆われて暗くなっていた。
「一雨来そうね。ルビィ、気を付けて」
雷がゴロゴロと唸り始める。
早く帰らねば。
急いで、ルビィは空になった軽いバスケットを手に駆け出す。
「あんなに晴れていたのに…」
空を見上げると黒いモノがひとつ、城の方向へ飛んで行った。
重い雲と、暗さでよくわからない。
(コウモリ…?)
そんなことを思いながらも、ルビィはしっかりと駆けて城へ飛び込む。
何時もならにぎやかな城の中は何故かとても暗く静かだ。
そう言えば、何時もいる門番も居なかった。
とても嫌な予感がする。
(…どうしたんだろう?)
軽いバスケットを入口にある台の上に置くと、ルビイは叫んだ。
「ラピスー!!」
……
しんと静まり返っている。
何時もなら、何処にいてもすぐに駆け付けるラピスが来ない。
ルビィの嫌な予感は増していた。
明らかにおかしい。
その時、ガシャンと何かが割れるような物音がした。
母親の部屋からだ。
ルビィは「お母様ー?」と静かに呼びながら、歩いて大きな両開きのドアに近づく。
ぎぃ…と軽く手で押すと、うっすらと開き、光が漏れる。
何だか見てはいけないような気がしつつも、心配で覗き込む。
すると──
「我に力を──」
聞きなれない男性の声、姿。
ルビィの視線はその光を通さない黒い瞳に吸い寄せられた。
「!!」
ルビィがおそるおそる男の瞳から徐々に下に視線をずらすと、口元には濡れて光る赤い雫。
腕にはぐったりとした母親の姿が見える。
一気に顔から血の気が引くのが分かった。
「お母様!!」
思わずルビィは叫んだ。
「ローズの末裔か…」
どさりと音がする。
男は力を緩め、エメラルドを落とした。
「魔王、オニキス…!!」
ルビィは内心恐ろしく思いながらも、力強く、キッっとオニキスをにらむ。
オニキスの方はものともせず、怪しく笑っていた。
「我の名を知っているのか」
「みくびらないで!!」
にやり、と口元の牙をのぞかせると、オニキスは言う。
「まあいい。用は済んだ」
「──待ちなさい!!」
ルビィの言葉に耳を傾けることもなく、そのまま窓を開け、ばさりと黒い翼を広げて飛び立っていった。
ルビィはすぐさま力なく横たわる母親に駆け寄る。
「お母様! しっかりして! お母様!」
声をかけると、エメラルドは「うっ」とうめき声をあげる。
「ルビィ…あなた…なの……。ごめんなさい…ちょっと…眠るわ……」
エメラルドはそう言って、うっすらあった意識を落とした。
エメラルドが意識を失った後、ルビィはすぐに心臓に耳をやる。
ドクン、ドクンとゆっくりではあるが、ちゃんと脈打っている。
「お母様……」
ルビィはちょっとほっとすると、母親を抱きしめた。
しばらくして、ざっざと数人の足音がする。
「──エメラルド王妃様!!」
ラピスが少人数の兵士を連れて部屋に踏み込む。
「ラピス!!」
「わっ」とルビィは緊張の糸がほどけて泣き出す。
「お母様が、お母様が…!!」
ラピスの暖かく柔らかい手のひらが、泣きじゃくるルビィの頭を撫でる。
「すみません……メイド達を避難させていたら遅くなってしまって……」
「ううん。ごめんなさい…大丈夫……」
ルビィは鼻水をすすった。
──
少し落ち着いてから、ラピスが事の経緯を説明することになった。
そして、ルビィは真っ先に聞いた。
「お母様の容態は…?」
「なんとか一命はとりとめました」
それを聞いて、とりあえずルビィはほっとした。
「良かったわ…」
ラピスは申し訳なさそうに続ける。
「目的が真っ先にエメラルド様だったようで、間に合いませんでした。魔物が騒ぎを起こしている隙に、奴は部屋にたどり着いた様です」
「今はお父様が兵を連れて遠征している時だもの。仕方がないわ」
「メイド達を魔物から避難させることには成功したのですが……」
「よくやってくれたわ。私こそ、大変な時に気づかず、留守にしていてごめんなさい」
「街を知ることもルビィの務めですから、気にしないでください」
「この事、お父様には知らせてくれた?」
「はい、すぐに伝書バトを飛ばしましたが、伝わっているかどうか…」
「…伝書バト? ずいぶんと古風ね。魔通石は?」
「魔通石は魔力が飛んでしまって…寿命ですね。もうずいぶん前に『クリスタル・ベル』に新しいものを注文したのですが、全然届かなくて。調査しようにも人手がなくてそのままなんですよね」
「早く言ってくれれば良かったのに」
「いえいえ、王女様であるルビィを行かせるわけにはいかなかったので」
「今はそんなこと言ってられないわ。その件は私が調査してみるわね」
「そんな…! 僕が行きます!」
「あなたはこの事件の後始末をお願い」
「……わかりました。くれぐれもお気をつけて」
ラピスはちょっと考えると、ポケットから香袋を取り出す。
「あのっ、これを持って行ってください」
「何? これ…香袋のようだけど…」
「何かあった時にこれを握って僕を呼んでください。何処にいても駆けつけるので」
(たぶん、お守りってことかな?)
ルビィは「ふーん」と納得した様子でポケットに香袋をしまい込む。
「ありがとう。持って行くね」
にっこりと笑うと、ルビィは雑貨屋『クリスタル・ベル』に向けて元気よく駆けて行く。
──
雑貨屋『クリスタル・ベル』の扉をくぐると、からんからんとドアベルが踊る音がする。
カウンターには小さな女の子が立っている。
ピンク色の髪の毛をふわふわツインテールにした赤い瞳の少女。頭には小さな青色の帽子をかぶっていて、目立つ黄色いスカーフを首に巻いている。
「いらっしゃいませ~」
景気の良い声がする。
しかし、ルビィの姿を見た瞬間「げっ、王女様…!」と今にも逃げ出しそうな声を上げる。
びくびくしながら、少女の店主であるスピネルが声に出す。
「…王女様……どういったご用件で……?」
「わかっているとは思うけど…」とルビィは続ける。
「魔通石の件よ。何かあったのかと思って」
「やっぱり」という顔でスピネルは手を顔にやる。
「はあ…流石に王女様をごまかせはしないわね。──積み荷が野盗に襲われてしまったの…」
「えっ、そうなの!?…それは困ったわね」
ルビィは困ったな、と顎に手をやる。
「そう、とても困っているの。空間転送はコストが高くて無理だったから、馬車運搬でお願いしたの。高価なものだけど。そしたら、中身がバレたのか、その馬車が野盗に襲われてしまって」
スピネルは続ける。
「野盗のせいで、大大赤字で、マイナスもマイナスよ。何とか解決しようと動きたいんだけど、その資金すら怪しくて」
ルビィは「うーん」と唸ると、「仕方ない」と小さく言った。
「何とかできないか考えてみる」
「本当!? スーパー激しくファイナルに困っているの!! お願い、王女様!! 何とかして~!!」
「わかったわかった。また何か進展があったら報告に来るわ」
「わ~ん、ありがとう、王女様!!」
からんからんと再びベルが踊り、ルビィは閉まったドアの前で呟いた。
「まずは情報収集ね。酒場のアイゼンおじ様に聞いてみましょう」
──
酒場『バッカス』。そこは大人達の憩いの場であり、マスターのアイゼンは情報屋もしている。
どうやって情報を入手しているのかはわからないが、お金を払えばどんな情報でも教えてくれる。
「アイゼンおじ様!!」
ルビィは、親し気に叫びながら飛び込んだ。
お店特有のからんからんとちょっと低めのドアベルが音を立てる。
「よう、王女の嬢ちゃん」
ルビィは未成年者であるが、酒場にはよく顔を出す。
この酒場はご飯処も兼ねているからだ。
飲み物も種類豊富で、ソフトドリンクからコーヒー、お酒まで。ありとあらゆる飲み物を扱っている。
食べ物メニューも豊富で、お子様セットから、大人向けのステーキまで色々とある。
「今日はどうした? 美味いもんでも食ってくかい?」
ルビィは首を横に振る。
「今日は『クリスタル・ベル』の積み荷を襲った野盗についての情報をもらいに来たの。お金はお城にツケといて。後でラピスに払わせるわ」
「王女の嬢ちゃん自らか…ただ事じゃねぇな…。どんな情報をお望みだい?」
豪快で気前のいい声から、急にミステリアスでダンディな声になる。
それは情報屋として動こうというアイゼンの意思だった。
「何が聞きたい?」
「まず出没場所ね」
「主にグランデ街道での商人馬車襲撃だな。ルドニク商会は空間転送というコストの高い運搬方法が使えるが、俺らみてぇないっぱしの商人にとっちゃぁ、安価で商品の運搬ができる馬車は生命線だ。それを狙ってるようだぜ」
「これは俺の見立てだが…」と前置きをしてアイゼンは続ける。
「同じグランデ街道で繋がっている魔法都市レウスは頑丈で厄介な魔法結界がある。しかも現在は各地から王が集まり会議をしている。厳重な警備だ。半面、セレスティナは現在王遠征の護衛のため、兵が手薄だ。そこを狙っているんじゃねぇか、と俺は思う」
ルビィは続けて質問していく。
「人数は?」
「少数精鋭で動いているみてぇだな。情報じゃ10人程度らしい」
ルビィは「10人か…」と言うと、次の質問をする。
「根城は何処?」
「ウィリディスの森だな。入り組んだ広大な森は格好の隠れ蓑になっているようだ。森の奥深くの洞窟に潜んでいるようだ」
ルビィはまた、「うーん」と唸る。
「10人くらいなら、何とかなりそうな気もするわ…」
「気をつけろよ。いくら嬢ちゃんの剣の腕っぷしが強いとしても、入り組んだ森に手ごわい盗賊だ。護衛を募るのがいいと思うぜ」
「ありがとう、そうするわ。まずは森を抜けられる狩人を見つけないと…」
行こうとするルビィに、「これはおまけだが」とアイゼンが言う。
「それなら、トパーズという狩人をお勧めするぜ。今頃は備蓄の食料を買いに『クリスタル・ベル』へ来てる頃だ」
「そうなの? 行ってみるわ。ありがとう、またね。おじ様」
ルビィはひらひらと手を振り、酒場の扉を出る。
からんからんとドアベルが響く。
アイゼンがカウンターで心配そうにポツリと呟く。
「無茶しねぇといいが…」
──
雑貨屋『クリスタル・ベル』。
「いらっしゃ…。あ、王女様! 何か進展あった?」
「トパーズさんという狩人を探しに来たの」
その声に、お金を払おうとカウンターに大量の食料を差し出している人が反応する。
長いこげ茶色の髪を紫色のリボンで低い位置のポニーテールにしている、飴色の瞳の男性が手を上げ答える。
「それは俺だが…」
トパーズは、深紅の瞳に銅色の髪の毛の見知らぬ少女に名指しされ、困惑した様子だ。
「あなたがトパーズ? 狩人?」
「そうだが」
「お願い! ウィリディスの森を案内して!」
「一体何があったんだ」
──
事件を解決したいスピネルに奥の部屋を借り、トパーズに事情を一気に説明すると、トパーズは頷いた。
「俺で良ければ力になろう」
「本当!?」とルビィは瞳をきらきらさせる。
「私は幼いころから剣術を習っているの。実践もいくつか経験しているわ。腕はそこそこ…だと思う。魔法は使えないけど」
トパーズはそれを聞くと少し考えるそぶりをして、言った。
「俺も弓の腕はいい方だと思う。…だが、2人で10人の相手をするには不安だ。誰か誘えるような仲間はいないか?」
ルビィは「そうね…」と言うと、「1人心当たりが」と続けた。
ダイヤの顔が頭に浮かぶ。
危ないのはわかっているが、薬に精通する(?)彼女なら力になってくれそうだ。
「居住区に住んでいるから、誘いに行きましょう」
「ああ。連携が大事だ。一緒に行こう」
トパーズは深く頷くと、ルビィと共に居住区へ向かった。
──
ダイヤは2人を快く迎えてくれた。
「ダイヤに話したいことがあって来たんだけど…」
「なぁに?」
きょとんとした顔でダイヤは答えた。
ルビィが事の経緯を話し始める。
最初は「うん…うん…」と聞いていたダイヤだったが、段々声がか細くなっていく。
(やっぱり怖いかな…)とルビィは思いながら、全部を話し終わった。
全部を聞き終わったダイヤは、心配そうに言う。
「それって、危なくないの?」
一緒に聞いていたパールが横やりを入れる。
「そりゃ、危ないでしょうよ」
「だよね!」とダイヤは意気込む。
「そんな危険なこと、ルビィだけに任せられないよ! 私も行く!」
「役に立つかはわからないけど…」と続けて小声で自信なくダイヤは言った。
ルビィは(ありがたいな)と思いつつ、ダイヤに言う。
「ごめん。危険なことに巻き込んで…。…でも、ダイヤが居ると思うと心強いよ!」
ふんす、とダイヤは胸に拳をやる。
「気にしないで、役に立てると思うと嬉しいよ!」
そして、ダイヤは「実は…」と続けた。
「あの後、助言通りに爆薬を作ってみたんだけど──。超強力な麻痺薬ができちゃって、どうしようかなって思ってたの」
パールが、「はーっ」と深いため息をつく。
「この子、回復薬作りの才能はないけど、爆薬作りの才能はあったみたいなのよ…」
それを聞いて、「あはは…」とルビィが苦笑いする。
トパーズは静かに考えながら、みんなの会話を聞いていた。
「とりあえず、私も連れて行ってくれる? 多少の妖精特有の防御魔法は使えるし、役に立てると思うの」
パールが手を挙げて言うと、ルビィが「助かるよ」とにっこりして答えた。
静かに考えていたトパーズがここで初めて声を出す。
「その麻痺薬、どのくらい効くんだ?」
「うーん」とダイヤは唸ると、こう言った。
「たぶん大勢の中心で使ったら、範囲内の人間全員バタバタと倒れて、全員1週間は動けないと思うよ。実験結果、そのくらいの効き目があると思う」
「使えるな」とトパーズが頷く。
「それを活用していこう。俺が囮役になって敵を集め、麻痺薬をばら撒く」
ダイヤが心配そうに声を上げる。
「それだと、囮役のあなたまで麻痺しちゃうかも。下に沈む性質があるから、上に逃げれれば大丈夫だけど…」
ダイヤに「それなら心配ない」とトパーズが言う。
「今野盗が巣くっているであろう洞窟は、俺の小さい頃の遊び場だったんだ。何処にどういう地形があるかは熟知している。逃げてみせるさ」
トパーズは続ける。
「実はウィリディスの森に洞窟はたくさんありそうで…ひとつしか無い。あの慣れ親しんだ洞窟がそんな輩の住処になっているなんてな。…個人的に放っておけない」
トパーズは続けて、「紙とペンはあるか」とダイヤに尋ねた。
ダイヤは頷いて、一枚の羊皮紙と羽ペンを渡した。
「この大きな道がグランデ街道だ。奴らはここからここを通って積み荷を運んでいるだろう。何故なら、この道しか繋がってないからだ」
ルビィ達はすらすらと地図の描かれる羊皮紙を見つめながら、しっかりと耳を傾ける。
「馬鹿正直に真正面から行かなくても…。──ここが俺の家。…実はここから獣道で繋がっている。獣道であるが故、洞窟までの距離も短い。しかも、洞窟の奥側に繋がっている。奴らもここから来るとはわかってないはずだから、奇襲を仕掛けるにはぴったりだ」
ダイヤが不安そうに言う。
「その獣道、私達にわかるかな? 私方向音痴で…」
「大丈夫だ」とトパーズが即答する。
「小さな白い布切れが目印にぶら下がっている。これは俺たち狩人だけに通じる目印だ。迷ったら、その目印を見つけて、真っすぐ行けばいい」
それを聞いて、ほっとダイヤは胸をなでおろしたようだった。
ルビィも少し安心した。
「まずは俺の家に来るといい」
「その前に」とルビィが言う。みんなの頭にはてなが飛ぶが、ルビィは続けた。
「酒場のアイゼンおじ様にもう一度情報を聞きに行きましょう」
みんな納得した表情で、「なるほど」と頷いた。
──
酒場『バッカス』。何時ものように、アイゼンが気前良く迎えてくれる。
「おっ、仲間がそろったみてぇだな。ちょっとばかし心配だが、協力するぜ?」
「おじ様、ツケで。情報頼むわ。奴らの「行動日時」を知りたいの」
「その情報、入ってるぜ」とアイゼンは大胆に笑うと答えた。
「明日の明け方、太陽が昇るころ。グランデ街道、セレスティナ方面。狙われる積み荷は恐らく…武器類。新品で、売ると結構な値段になる数だ」
こくんとみんなが頷く。
「作戦は今日の深夜」
ルビィが言い放つと、一行は酒場を出て、グランデ街道からウィリディスの森にあるトパーズの家に向けて出発した。
──
トパーズの家に着いた一行は、各々好きなことをしてくつろいでいる。
家を見るに、トパーズはどうやら一人暮らしの様だった。
ルビィはというと、トパーズという人物を観察していた。
性格は、真面目で実直。細かく、綺麗好き。素朴で質素。
綺麗に整頓された部屋が性格を表している。
立てかけられた弓に目をやる。
綺麗に整備された弓を見るとその腕がうかがえる。
トパーズはそれに気が付いていたが、何も言わなかった。
ルビィはふと目をやった先の小さなタンスの上に飾られた、古い家族写真を見つける。
「トパーズと…トパーズのお父様とお母様?」
小さな頃のトパーズと一緒に映るのは、ガタイの良いひげ面の男と儚い雰囲気を持つ線の細い女性。
「ああ」とトパーズは頷いた。
「母さんは体が弱くて、俺が小さい頃に病気で死んだんだ。父さんは必死に俺を育ててくれたが、狩り中に魔物に殺された」
「ごめんなさい」と小さくルビィは謝った。
「悪いことを聞いてしまったわ…」
「いや、気にしなくていい。もうずいぶん昔のことだ。ルビィは両親と暮らしているのか?」
ルビィは頷いた。
「まあ、お父様とは仕事であまり会えないんだけど…。お母様とはよく会話するわ」
「ルビィはとても礼儀正しいし、両親が素晴らしい方だということが良くわかるよ」
ルビィははにかむ。
そんなこと言われたのは初めてで、とても嬉しかった。
その会話を聞いていたパールが横から飛び出してきて、トパーズの周りをくるくる飛び回る。
「あのねぇ、当り前よ? ルビィはセレスティナの王女様だもの!」
それを聞いた瞬間、強い衝撃を受けたかの様にトパーズは固まった。
『えっ、もしかして──知らなかった!?』
ダイヤとパールは声を合わせて言った。
トパーズは固まっている。
「王女…様……?」
何だか申し訳なさそうに、ルビィは頷いた。
「す、すまない!! 俺は…不敬を…はたらいていないだろうか!?」
それを聞いた3人が各々の笑い方で笑う。
ルビィは「あはは」。ダイヤは「ふふふ」。パールは「あっはっは」と爆笑だ。
「あはは。ごめん。──大丈夫、大丈夫。みんな気軽に私のこと呼ぶし、私も気にしないよ。むしろ、嬉しかった」
「嬉しい…?」
「だって、私がどこか王女様だーって思いながらみんな接するの。ここまで対等に接してくれたのは、ダイヤ以来かも」
満面の笑顔のルビィにトパーズはどきりとする。
「──それならいいんだが…」
ルビィは続けた。
「みんな王女様とか呼ぶけど、ルビィって気軽に呼んでくれて大丈夫よ」
「わかった──変わらず、ルビィと呼ぼう」
トパーズは恥ずかしそうに、ぶっきらぼうに答えた。
この辺がトパーズの朴とつな性格を表しているな、とルビィは思った。
でも、実は面白い人であるかもしれない。
──
窓から空を見上げると、そろそろが月沈みかけているのが木々の隙間から見える。
良い時間だ…。
「みんな、十分休息は取ったか?」
「そろそろね…」
ルビィが呟くと、ダイヤが続ける。
「ドキドキするねっ!」
パールは飛び回っている。
「私はワクワクしてるわ。ちょっと冒険者みたい」
森を熟知したトパーズが先に行き、みんな後を付いていく。
道とも言えない様な、獣道。かろうじて草が倒れているか…程度の道。
長いこと足を踏み入れてなかったのか、トパーズがばさばさと枝を豪快に短剣でカットしながら進んでいく。真っ暗で足元すら怪しい。
「気を付けてくれ。凸凹しているから…」
みんなが「うん」とズレてトパーズに向かって返答する。
黙々と進んでいたトパーズが急にピタッと動きを止める。
「しっ」と口元に指をやるのがうっすらと見える。
ルビィ達は「着いたんだな」と直ぐに理解した。
「みんな、覗いてみてくれ」
小声で静かにトパーズが言うと、みんなで静かに、注意を払いながら草の隙間から覗いてみる。
指示を出す盗賊が見える。頭だろうか?
「油断するな。…多分アイツがリーダーだろうが…」
「いち…に…さん……5人くらいしか見えないね」
「俺が出て行ったら全員集まってくるだろう。…でっぱりが見えるか。あそこにフックをかけて飛び移るから、ある程度集まったのを見計らって麻痺薬を投げてくれ」
「うん。一網打尽だね」
ダイヤが力強く頷く。
「ダイヤ、麻痺薬の範囲効果が消えるまで何秒?」
「効果自体は長くないよ。液が飛び散ってから5秒で確実。5つ数えたら、飛び出して」
ルビィとパールが頷く。
「行くぞ!」
トパーズが藪から飛び出し、野盗に奇襲をかける。
『何者だ!? かかれ!!』
弓や短剣で数人いなしながら、広場のど真ん中へ野盗を陽動する。
続々と集まってくる野盗。聞いていた通り、10人程度集まって来た。
トパーズは今だと言わんばかりに、フックを洞窟の壁に引っかける。ボタンを押すと、綱は良いスピードで手繰り寄せられ、体は軽くフックの方へと持ち上がる。どうやら魔法道具らしい。
野盗は目をくるくるさせながら、「どこだ!?」とトパーズの姿を探している。
壁の出っ張りにトパーズの体がふんわりと着地した瞬間、藪からダイヤが麻痺薬を投げつける。
「ぎゃっ!!」と声が上がり、野盗がバタバタと倒れていく。
目が覚めていて、意識があるが、体が動かない状態らしい。えぐい効果だ。
「やったか。後は連行するだけだな」
とっ、とトパーズが5秒後降りてくる。
「まって!! まだ何かいる!!」
ルビィが気配を察知し、叫んだ。
その声にみんなが振り返る。
「魔物だ……」
グルグルと唸り声をあげる、狼型の赤い瞳の魔物。
爪は鋭く、鋭利な牙がむき出している。
「みんな、下がれ!!」
本能で「こいつはヤバい」と悟ったのはトパーズとルビィだった。
「私が相手する!! その間に逃げて!!」
「馬鹿を言うな!! ルビィも逃げろ!! そいつはヤバいぞ!!」
トパーズが叫ぶ。
「わかってる」とルビィが答える。
「でも、やらなきゃ!!」
ルビィは城から持ってきた一振りの扱い慣れた剣を構える。
魔物の攻撃が飛んでくる。
ルビィは、それをかろうじてかわす。
「防御魔法、プロテス!!」
パールがルビィに唱える。
「パール…」
「あんたひとりに危険なことはさせない!!」
魔物の目が赤く光り、暗闇を駆け抜ける。
ダイヤは違和感を感じていた。
狼型の魔物はよく見る。ダイヤも授業で相手をしたことがあった。
学校で使う魔物は捕獲されたもの…とは言え、それと比べると段違いの魔力を感じる。
これは…強化魔法。
ダイヤが叫ぶ。
「みんな、逃げて!! こいつ、魔法で強化されてる!!」
ルビィはハッとして、魔物を見つめる。
どくん
──とルビィの心臓が高鳴る。
何処からともなく、声が聞こえる。
『力が欲しいか──』
欲しい。
みんなを守る力が。
(欲しい──)
瞼の奥に光が見える。
ルビィが目を見開くと、なんの変哲もないはずの剣が炎を纏っていた。
「炎!?」
ダイヤが叫ぶと同時に、攻撃してきた魔物にルビィが切りかかる。
「オーダー・オブ・エクスキューション!!」
炎が魔物の全身を包み、魔物は灰と化した。
ゴロンと大きな赤い魔法核…魔物の心臓が転がり落ちる。
ダイヤやパールがぽかんとする中、ルビィが意識を失い、膝から崩れ落ちた。
トパーズが駆け寄ってルビィを抱き寄せる。
「ルビィ…しっかりしろ!!」
すると、ポケットに入れていた香袋が光を放った。
そうかと思うとラピスが兵を連れて空間転移してやってくる。
「ルビィ!!」
「ラピスくん!?」とダイヤが驚きの声を上げ、「なんで、あんたがここに!?」とパールが説明を求める。「驚かせてしまってすみません」とラピスが答える。
「実は無茶しそうなルビィに発信機と転移のタネを持たせていました。それを魔法で結び、空間転移でここにやってきたのです」
「一体ルビィの身に何があったのかしら…魔法、使えないはずなのに」
「わかりません」
ラピスは心配そうに首を横に振る。
「…僕はこいつらを連行します。ルビィのこともお付きの魔術師に調べてもらいましょう」
「ルビィを頼んだ」とトパーズがルビィの体を優しく兵士に預ける。
兵士とラピスは同時に頷いた。
──
「一体何があったんです」
城で目覚めたルビィ。
背中までだった銅色の髪の毛は踵まで伸びていた。
ルビィは心配そうなラピスの顔にきょとんとしている。
「わからない。ただ、声が聞こえて──」
『力が欲しいか──』
もう一度あの声が心の中で響き渡る。
「願ったの。みんなを守る力が欲しいと──」
ラピスはわけがわからないという感じで、お付きの魔術師に目配せする。
魔術師は答えた。
「その祈りの力。もしかしたら、女神セレスのご加護があったのかもしれません」
ルビィは思い返して思った。
(あの声、男性の声だった…一体何なんだろう?)
言うとややこしくなりそうだったので、それをルビィは黙っていた。
セレスは女神、と名を冠することには女性のはず。しかし聞こえたのは力強い男性の声だった。
「私、もしかして…魔法。使えるようになったのかな?」
「そうですね…」と魔術師は答える。
「前と違う…魔力を感じます。使えるかも知れません」
それを聞いたルビィは嬉しそうに微笑み、「ちょっと使ってみていい?」と魔術師に尋ねた。魔術師は頷いた。
「炎のイメージを持ちながら、指先に意識を集中して唱えてください」
ルビィは言われた通りに意識を集中させる。
「イグニス!!」
ぱっと炎が指先に灯り、瞬間的に消える。
魔術師は驚きの表情で言った。
「適正がないと診断された人が魔法を使えるようになる、ということは聞いたことがありません」
魔術師は「うーむ」と唸る。
「医者と審議したのですが…」と魔術師は続ける。
「体はいたって健康の様です…。髪の毛が伸びたこと以外は。何らかの魔力覚醒の為でしょうね」
ルビィは唸り声をあげる。
「うーん…動きづらい……。ラピス、美容師さん呼んで……」
「わかりました。連れて来ましょう」
──
しゃくしゃくと髪の毛に軽快にハサミが入る。
「王女様、どのくらいの長さにします?」
ルビィは質問に、「何時もの長さで」とジェスチャーで背中までの長さを指定する。鏡を見ていると、あっという間に何時もの長さになる。
「やっぱり、これくらいがいいわ…」
「長いのもお似合いでしたよ?」
「長い髪の毛も王女様っぽいけど、重くて」
「ふふっ、そうですね。結構髪の毛って重量ありますからね」
「私お転婆だから」
肩を上げたり下げたりしながら、ルビィは美容師と談笑する。
何時もの黒いヘアバンドを頭に巻くと、ルビィはラピスの元へ向かう。
「野盗と魔物の繋がりは? あそこで魔物が出てきたのは偶然とは思えないわ」
ラピスはこくんと頷いた。
「取り調べをしたところ、魔王オニキスの息がかかっていた様です。黒い瞳の魔族に貸してもらったと頭が吐きました」
「大量の魔通石も回収できた?」
「ええ」とラピスは嬉しそうに頷いた。
「クリスタル・ベルへ行ってみてください。スピネルさんが喜んでましたよ」
「うん。行ってみる」
──
からんからんと軽快な音と共に入店すると、スピネルが叫んだ。
「いらっしゃ…おうじょさまあああああ!!」
ルビィはあまりの声の大きさに軽く耳をふさいだ。
「スピネル…。声大きい」
「たはは。すみません。…めちゃんこ助かりました。あのままだと大損で…店を畳まないといけないかと思ってました」
分が悪そうにスピネルは笑った。
「それは、良かったわ! ここがなくなるのは寂しすぎるもの」
「あの後、ルドニク商会からお礼があったんです」
「あの大商会から?」
「そうなんです。仕入先がたくさんあの野盗にとても困ってたみたいで、退治してくれたお礼にって商談いただいちゃって」
「そうだったんだ」
「ルドニク商会の助けで、クリスタル・ベルの支部を各所に設けてくれるらしくて。何処にいても、空間転送でうちで買い物できるんですよ」
「空間転送ってコストがすごいんじゃなかったっけ」
「はい。でもルドニク商会が特許を持っているので…そこも面倒見てくれるみたいで。うちは低コストで支部を出せる。儲かる。たくさん売って売り上げの一部を収めることで、商会の利益にもなるからって」
「コストって特許料だったのね」
「その通りです!」
ふとルビィは思い出す。
「待って…そういえば、ルドニク商会って武器商人じゃなかったっけ?……野党が狙ってた馬車ってもしかして……」
にっこりと笑ってスピネルが疑問に答えた。
「はい。ルドニク商会が、奴らをおびき出すために張った罠ですね」
「…ってことは、ルドニク商会のおかげでもあったのね」
「天下のルドニク商会ですからね。武器は是非そちらで購入してください」
「ただ…」とスピネルは続ける。
「是非、雑貨はウチで!!」
スピネルはきらきらと赤い瞳を輝かせながら、ぎゅっと両手でしっかりとルビィの手を握る。ルビィは商売人にたじろぎながら、店を後にした。
──
ルビィはローズの肖像画の前で襲撃事件のことに考えを巡らせながら呟いた。
「もしかしたら、ローズ様の様に…私もなれるかもしれない」
そこへラピスがやってきて、ルビィに言った。
「なれますよ。ルビィには必ず女神セレスのご加護があります」
ルビィは複雑な思いで、頷いた。
「ねえ、ラピス。…この襲撃事件を放置はしておけないと思うの」
「はい」とラピスが頷いて、革製のポーチを一つ取り出す。
「異空間ポーチです。たくさんモノが入りますよ。旅立ちには必ずいるものです。必要なものもある程度入れてあります」
ルビィはポーチを受け取る。
「そうね。旅に出ましょう」
2人は目を合わせた。
「まずはサファイア王のところへ…ですね」
「うん。お父様にこのことをしっかりと直接話さなきゃ」
「あの…」とラピスは言いかけてやめた。
「いいえ、やめておきましょう。僕はルビィの帰る場所を守っていることにします」
ラピスはそっと目をつむり、首を横に振る。
「ありがとう、ラピス。…あなたは最高の臣下であり、友達だよ」
「ルビィは僕の使える最高の王女様で、友達です」
ルビィは元気よく「行ってきます!!」と城を後にした。
街に出ると、そこにはダイヤとパールと…トパーズが待っていた。
「ラピスから事情は聞いた。俺たちも一緒に行こう」
「気にしなくていいのに」
「だーめ! 友達に危険なことひとりでさせられないよ!」
「そうよそうよ! いくら魔法が使えるよになったとはいえ、ひとりより断然みんなで行く方が楽しいし、強いわよ」
ルビィは歩きながら笑う。
「行きましょう。目指せ『魔法都市レウス』。サファイア王の元へ!」
みんなで一緒にセレスティナを踏み出し、グランデ街道へ足を踏み入れた。
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