第30話
モデルになったミハルはスラリと背が高くてスタイルが良く、どんな衣装でも似合った。
新作のミニスカートだって臆すること無く着ることができる。
街を歩けば「ミハルさんですか?」と声をかけられて、サインをする機会も増えてきた。
有名なファションショーにも呼ばれ、雑誌の表紙は6ヶ月連続でミハルが担当した。
「すごいわミハルちゃん。この調子で頑張ってね」
雑誌の編集長はミハルが来るととてもご機嫌で、終始にこにこしている。
「はぁい」
ミハルは元気に返事をして、仕事へ向かうのだった。
☆☆☆
長い廊下の途中、ミハルが眠る病室の前で両親と医師の姿があった。
「ミハルさんは特に悪いところはないようです。ただ、ずっと眠り続けているだけですね」
医師の言葉に両親は顔を見合わせた。
その顔は数日前に比べるとすっかり老け込んでしまっていた。
それもこれも、ミハルが大量にキャンディーを食べて、眠り続けているのが原因だった。
あの日の夜、晩御飯ができても下りてこないミハルを部屋まで迎えに行った時、お母さんが眠っているミハルに気がついた。
声をかけても、頬を軽く叩いても、ミハルは全く起きなかった。
それからお父さんが病院へ連れてきたけれど、やはりミハルは1度も目を覚まさない。
「脳に異常などはないんでしょうか?」
ミハルの脳に異常があるから眠り続けているのだと思っていたお父さんが、医師に質問した。
「いえ、脳に異常はありません。ただ普通に睡眠を取っているだけのようです」
「そんな……」
それでもミハルがこれほど長く眠り続けていることなんてなかった。
医師も病気ではないからこれ以上できることはなかった。
ただ点滴で、栄養を入れていくだけだ。
「とにかく、しばらく入院して様子を見ましょう」
医師はそう言うと、両親に頭を下げて自分の仕事へ戻っていった。
両親は大野ミハルと書かれた病室に入り、ベッドで横になっているミハルの手を握りしめた。
それでもミハルは夢を見続けている……。
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