月極迷宮主2(マンスリーダンジョンマスター2)
まるま堂本舗
第1話 再び始まる
主要都市の隣にある街は、冒険者たちの拠点として活用されていた。街道もあり、山や自然発生した洞窟にも共通した道があるため、人が集まりやすく、活気があった。その中でも酒場と併設されたギルドには討伐・探索といった依頼が周辺地域から多く寄せられており、腕に自信のある者や名声や富を得たい冒険者が集まっている。もちろん、訳ありな冒険者もいて、フードを被り体を覆い隠して冒険者たちを見ている者も複数確認できる。ギルドの依頼には、人探しや暗殺もあるので用心しているようだ。
ある日、ギルドに新たな依頼書が貼り出されていた。
「ダンジョン探索可能な冒険者求む!」
その内容は『先祖より守っている土地に突如大穴が開いたが、地下迷宮の可能性があるため調査してほしい。パーティメンバーは単独、複数でも構わない。指定した期日に説明会を行なう』という。
この依頼書を見て、さまざまな意見が飛び交った。
「ただの落盤だろ?金にならねぇよ」
「説明会くらい参加してもいいかもな」
「最近、詐欺の集会があった話聞いたぞ」
過去を知る者は違った。
「やっと見つけた。何があったのか、問い詰めなくては・・・」
それぞれの思惑を抱いたまま、その日を待った。
説明会の日、町外れの集会場建物に数多くの冒険者が集まった。頃合いを見て壇上に老人男性が付き添い女性がゆっくりと歩んでいた。中央の拡声器まで行くと、老人男性が話を始めた。
「よく集まられた。今回の依頼主であるラギンというものだ。隣りにいるのは娘のイザベル。我々一族が守ってきた土地に大穴が開いた。奇怪な声を聞いた者がおり、その大穴を調査して欲しい。ただ、どのような構造か未踏なため、命の保証はない。それぞれの責任ということだ。もちろん、探索の結果次第でそれ相応の報酬は約束しよう」
誰も探索していない場所なので、冒険する好奇心は誰しもある。しかし、単なる穴だったという結果もこれまで複数あり、微々たる報酬で終わってしまう。迷い出す冒険者たちもいた。
ラギンが言った。
「大きな成果の得られない探索になることも十分考えられる。なので、依頼を受けない選択も構わない。来週から探索を始めて欲しいため、その予定日に参加希望者だけ集まって頂きたい。以上だ」
説明が終わり、ざわざわしながら冒険者たちは解散させられた。特に質問も出来ず、不満に思う者もいた。しかし、こういう大雑把な依頼が全くないわけではなかったため、報酬と冒険心と天秤にかけ判断するしかなかった。
冒険者たちが出入り口にひしめき合っているので、なかなか外に出られず集会場に佇む者もいる。その中には、壇上からゆっくりと去っていくラギンを凝視し続ける者がいる。小柄でフードを被った女性。その姿を見て、女性に近づく冒険者がいた。
「ちょっといいか?」
「・・・何?」
「あんた、3年前のダンジョン探索で階層主になっただろ?」
「なんで、それを知ってるの!」
女性はフードを取り、声のした方を向くと、獣人冒険者だった。
「ん、あなた見覚えがある・・・?」
「おれはトコピ、獣人の忍者だ。あんた、リステアだろ?」
「よく覚えているわね」
「そりゃ、最初の階層主だし、セーフエリア導入して助かった冒険者も多かったからな」
「・・・あの、場所変えて話をするのはどう?あの爺ぃに気付かれたくない」
「えぇ、同感よ」
二人は、街外れの高台庭園に移動した。この庭園は一本道で誰が通ってくるか分かりやすいからだ。
リステアから話し始めた。
「トコピは、今一人なの?他の仲間はどうしたの?」
「あのダンジョンで、セーフエリアの街が出来た後、仲間が体調不良になったから同行して地上に戻ったんだ。しばらくして、再度潜ろうとしたら入り口すら無くなってた。仕方なく爆破も試したが岩壁が無傷で出てきて、どうしようもなくて。リステアは、あの状況でいつ地上に?」
「セーフエリアを作った後、お店やってくれる人たち探すため求人募集をかけにギルドに来てた。面接とか材料の手配を手伝って、戻ってみたら岩壁になってて。私は詐欺師扱いを受けた。でも、冒険者たちが戻ってきてないことが分かって疑いは晴れたけど、行方不明者の情報が全く無い。だから、ダンジョン探索依頼主のラギンをずっと探してた」
「お互い大変だったな」
しばらく沈黙があり、リステアが言った。
「あのラギンが何か知っているのは確かだから、また探索してみる」
「おれも探索するし、情報共有もリステアにはしていく。パーティ組むか?」
「あえて、単独探索に見せた方がいいかも。でも、お互いフォローしてく感じかな」
「了解。付かず離れずで行こうか」
その後、別々に庭園を離れ、準備を整えた。
探索当日、指定された場所に冒険者たちは集まっていた。しかし、説明会で参加していた人数の三分の一程度。
ラギンは言った。
「大量に人がいても、入れないからな。では、案内する。付いてきてくれ」
街から歩いて2時間。ずいぶん山道を歩いてきた。
一人の冒険者が言う。
「爺さんさ、説明会の時、介助されてたのに今はなんで疲れず歩けているんだ?」
「ウチの土地だぞ、歩き慣れてるに決まってるだろ」
「・・・息も切らさずにか?」
「ふん」
山道は木々に覆われていたのに、急に開けた場所に出た。
ラギンが言った。
「ここが探索目的の大穴だ」
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