■【右腕を代償に「黒ヘビの腕」を手に入れた少年の復讐劇】 ~ 死後、4000年の殺し合いを経て地獄最強の咎人となった少年が、地獄を抜け出し欲望渦巻く「闇の世界」で成り上がる!! ~
7話:街を牛耳る『闇砂漠商会』と「鬼族の少女」
7話:街を牛耳る『闇砂漠商会』と「鬼族の少女」
~ 脱獄から一夜明けて ~
――
耳元の雑音に
暗がりの中に浮かぶのは、板の隙間から黒紫の空が見える安っぽい天井で、少なくとも
(……あぁそうか、街外れの馬小屋で寝たんだ)
柵を隔てた隣には、これ以上無い程に
干し草の上で寝ていたボクを「何だコイツ?」みたいな目で見ているが、それはさて置き。
起きて早々に思い出すのは、昨日届けられた「あの手紙」。
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“5日以内に『
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差出人は言わずもがな、白髪の老人:グラハムで確定。
肝心の内容に関しても、昨日の時点で情報収集は済んでいる。
(指示された『
昨日、最初に聞き込みした露店の店主
『あー、無理無理。あそこは
その他にも何人か話を聞いたが、皆口を揃えて言っていた。
「『
寝起きで金のことを考えるのは頭が痛いが、痛くても考えなければ始まらない。
「5日で100万……普通に稼ぐのは無理があるね」
小柄で片腕のボクが雇って貰えるかは別として。
普通の仕事5日で稼げるのは、せいぜい10~15万程が限度。
今回はその10倍程の額が必要となり、移動の時間も考えると手段は自ずと限られてくる訳で……。
不意に鳴った腹の音。
出来れば腹ごしらえもしたいけれど、とは言え今すぐ動けなくなる程ではない。
空腹 = 生きている = ボクが脱獄した動かぬ証拠だと、今はそう割り切って先を見据えた行動が必要だ。
(何にせよ、必要なのは「お金」。移動にも食事にもお金が要る)
かくして行動方針は決定。
何をするにも“先立つモノ”が無ければ話にならず、一番手っ取り早くお金が稼げる「闇の仕事」を探すことに決め、寝起き早々にボクが向かった先は――。
■
~ 『
『Darkness World (暗黒世界)』に点在する暗黒街は、その全てを“複数の巨大組織”が牛耳っている。
その巨大組織の一つが『闇砂漠商会』。
表沙汰には出来ない様々な仕事を取り扱っており、手っ取り早く大金を稼ぐ為、ボクはこの場所を訪れた訳だが……。
「3日で100万G《ゴールド》稼げる仕事が欲しい? おいおい、夢は寝ながら見るもんだぜ? 目が覚めてんなら現実を見ろよ。冷やかしなら帰りな」
受付の男性にカウンター越しで声を掛けてみるも、初っ端から門前払い。
続けて隣の受付にいた客が、そして建物内にいた他の人達も揃ってボクを笑う。
「チビ、おつかいは初めてか? 魚屋さんはここじゃねーぞ」
「そうそう、さっさと帰って母ちゃんのおっぱいでも吸ってな」
「ギャハハッ、まだ乳離れ出来てないってか? 確かにそういう顔だぜ」
「………………(はぁ~)」
嘲笑には慣れている。
けど、慣れているからと言ってそれが好きな訳でもない。
黒ヘビはあまり見せたくないし、ここはナイフ一本で“わからせよう”。
(地獄にいた時、“アレ”を練習してたんだよね)
練習したのは他でもない、ボクが「7回」も“殺された技”。
地獄の4000年で、ボクの脱獄を阻止する為に「赤鬼の獄卒」が7回も繰り出した技だ。
「お、何だ? そのチンケなナイフで脅すつもりか?」
「おいおい、オモチャちゃで遊ぶなら外でやりな」
「俺と管理者ごっこでもやるか? ギャハハッ」
「………………(斬るか? いや、辞めておこう)」
彼等を斬ってもよかったが、それだと後に支障が出る。
代わりに狙うは正面入り口の「扉」。
距離はおおよそ5メートル。
ボクを
目にも止まらぬ速度でナイフを振るい、その軌道から生まれたのは「風の刃」。
地獄の支配者だった赤鬼の極卒、彼の
斬ッ!!
「「「ッ!?」」」
嘲笑は驚愕へ。
真っ二つに斬られ、一瞬で役割を失った「元:扉」の残骸を見て、多少なりともボクを見る目が変わったらしい。
周囲の人々は警戒の目に変わり、受付の男性は値踏みする瞳をボクに向ける。
「ほう? 見た目に反して良い腕してるじゃねーか。やり方は随分と粗っぽいが、度胸と腕っ節がある奴は嫌いじゃないぜ」
「それはどうも。早速だけど仕事を紹介してくれる?」
「勿論だ。扉の修繕費を請求しなきゃならねーし、金を持ってないならガキでも稼いで貰わねーとな。今更『逃げる』とは言わねーだろ?」
「当然。仮に逃げるとしても、それはボクじゃなくてそっちでしょ?」
「ハッ、マジでいい度胸してやがる。いいぜ、気に入った」
ここで受付の男性は振り返り、「おーい」と奥の部屋に声を掛ける。
「『
「ん~?
気だるけな声と共に、奥の部屋から出て来た「眼帯の少女」。
途端、ボクに“緊張が走った”のは、彼女が腰に刀を携えているから――ではなく、“
(地獄の鬼族!? 地獄から追いかけて来た管理者かッ!?)
内心慌てるも、すぐにその可能性を頭から排除。
地獄で生まれる鬼族は、その大半が管理者の職に就くけれど、闇の組織である『闇砂漠商会』に管理者が居る筈もない。
種族の王道レールから外れた「はぐれ」的な人間だろう。
「どうした少年、そんなにジッと見つめられると照れるじゃないか。あまりの可愛さに一目惚れでもしたかい?」
「あーいや、考え事してただけ。別に何でもないよ」と答えた途端。
鬼姫の目尻が上がる。
「はぁッ!? 何でもないとはなんだいッ、失礼だなキミは!!」
「え? あぁ、ゴメン。失礼だったね。それで、大金が稼げる仕事って何?」
「………………」
ムスッとした顔で急に無言。
そのままスタスタとボクの横を通り過ぎ、鬼姫は扉の無い入口から外に出た。
(おかしいな、ちゃんと謝った筈なのに)
コレはどうしたものかと受付の男性を見ると、彼は「やれやれ」と肩を竦める。
「金が欲しけりゃ追いかけることだ。あまり鬼姫の機嫌を損ねるなよ?」
「ボク、謝ったけど?」
「謝って済むなら管理者は要らねーんだよ。ま、管理者なんて居ない方が俺達は仕事し易いけどな」
彼に構っていても時間の無駄だと、ボクは『
相変わらず暗い空の下。
そこそこ人通りの多い道を急ぎ早に歩き。
彼女の背中に追いつくかどうかのタイミングで、先を歩いていた鬼姫が脚を止めることなく口を開く。
「――キミ、脱獄者だろう?」
「ッ!?」
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