殺し屋VS殺し屋専門の殺し屋
前の仕事から3日後
「ブレッドー、起きてる?」
「寝てる。」
「いや、起きてるやん!」
「寝てる。」
「メチャクチャ起きてますやーん!!」
「……………………」
「仕事っぽい話なんだけど。」
「なんだ。」
簡易ベットから飛び起きたシルバーブレッドは、すぐにカラスの元に向かった。
「仕事、好きねぇ。てか、オジサンなのに、良く寝るね。」
「まだ40代だから。それに体力があって、良い事じゃないか。」
「ホイホイ。それで仕事の話なんだけど、例の大型新人君が仕事をするみたいですよ。」
「ジャックポットが?」
「そうそう。何でも、どっかの実業家を狙うらしい。」
「分かった。」
「ただ、この実業家が怪しいぃ〜くて。」
「???」
「いくら調べても、その実業家の経歴とか事業が出てこないんですよお~」
「伝説の情報屋なのにか?」
「……すんません…………」
「そんなに落ち込むな。で、狙ってるのは間違いないんだな?」
「それはモチのロンです!殺りますか?」
「殺る。怪しいが、構わん。場所は?」
「場所はー、ココです。」
メモを受け取ると、シルバーブレッドは古びたロングコートを颯爽と羽織り出ていった。
「ここか。」
ターゲットが狙われる場所の付近にたどり着いたシルバーブレッドは、路地裏から周囲を見渡した。ジャックポットのやり方は聞いていたのだが、やり方がやり方だけに居場所を見つけるのが難しい。狙撃するタイプならば見つけやすいのだが、無差別となるとどんなやり方でくるか想像が出来ない。とりあえず、シルバーブレッドは駆け回って探す事にした。
「…………」
そのとき、後頭部に冷たい物が当たった。すかさず当てられている物を左手で掴み上に向けさせると、そのまま懐の銃を右手で握って自身のコートごと撃ち込んだ。すぐに振り向くと、腹から血を流した眉間に丸いヤケドがある小さな黒服が倒れていた。
「なかなかやるな、オッサン。」
若い男の声がした。聞いたことは無かったが、予想はついた。声のした方をシルバーブレッドが向くと、そこにいた若者に声をかけた。
「お前が、ジャックポットか?」
「だったら?殺すのか???」
「まだ未遂だ。」
「未遂じゃない、現在進行形さ。」
「なに?まだターゲットは来てないが……まさか!」
「ターゲットはアンタだ、シルバーブレッド!」
ジャックポットはそう叫ぶと、ポケットからナイフを取り出し投げつけた。シルバーブレッドは、すかさず体を曲げ避けたが、そこにジャックポットが突っ込んできていた。ナイフを投げると同時に、一緒に走り込んで来ていたのだ。不意を突かれ倒れ込んだシルバーブレッドを、またぐ様に立ったジャックポットは拳銃を突きつけてきた。さっきの黒服が落とした銃だった。
「やっぱし、オッサンだな。全体的に衰えてる。」
「だったら、労われ。」
「じゃあ、死ね。」
「その前に、2つ言いたい事がある。」
「うーん……まぁ、冥土の土産に聞いてやるよ。」
「1つ、なんで俺がターゲットなんだ?」
「それは簡単。この街で名を上げる方法として手っ取り早いのが、アンタを殺すことだと思ったから。でも出会う方法が無いから、そこに転がってるヤツに協力してもらって、偽の情報を流したのさ。オレが殺しの仕事をしようとしてるってね。」
「なるほど。お前みたいなバカは、初めてじゃないがな。」
「カッカッカッ!負け惜しみか。」
「2つ、その銃。安全装置はちゃんと外したか?」
「当たり前だろ!そんなミスはしない。」
「目で見たか?」
「そんなことしなくても大丈夫だ。2つ言い終わっただろ。死ね。」
ジャックポットは、ゆっくりと引き金に指を当てた。ただそのとき、チラと、時間にして刹那、安全装置を目で見た。見てしまった。シルバーブレッドから、目を離してしまったのだ。その隙を、ベテランは見逃さなかった。その瞬間、シルバーブレッドは、左手で銃を横に押した。パンッと1発、地面に撃ち込まれた。ジャックポットは撃ち殺そうとそのまま引き金を引ききり、弾切れするまで地面に鉛弾を食らわせてしまった。カチカチと音が鳴る中、シルバーブレッドは右手の拳を、ジャックポットの股間に殴り当てた。
「ハウッ!!!」
シルバーブレッドは、力が緩んだところでジャックポットを突き飛ばし、起き上がると同時に銃口を向けた。そこにはジャックポットの姿は無かった。正確には、路地から飛び出すジャックポットの後ろ姿が、チラリと見えた。急いで追いかけ路地から出ると、大量の刃物が飛んできた。ジャックポットが露店のホットドッグ屋から奪って投げつけてきた物だった。シルバーブレッドは避けられたものの、何人かの通行人には突き刺さってしまった。
「置き土産だっっっ!」
ジャックポットが叫ぶと、ホットドッグの大きな重いワゴンを蹴り飛ばしてきた。後ろに倒れている人がいるため、庇う為にもシルバーブレッドは受け止めた。が、しかし、ワゴンのソーセージをゆでる場所の中に、ピンの抜けた手榴弾がいくつも入っていた。それに気づくと同時にシルバーブレッドは、ワゴンを思いっきり先程まで居た路地に突き飛ばした。
二人は走る。爆発し、かなりの煙が上がる路地裏には、目もくれず。
逃げるジャックポットと追うシルバーブレッド。
偶然か必然か、アスタリスクシティの中心に新しく出来た、セントラルタワーへと向かう。
全てが交わる、運命の場所へ。
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