アグリッヒ・ティラ・オンライン

サイ

第1話

「とうとうこの日が来た」


6畳の部屋にはベッドと机と大きな段ボールしかなかった


「この日のためにベッドと机しかない部屋に1年耐えたんだ」


この部屋の主人の相川拓斗20歳大学生、1年間アルバイトを頑張りこの段ボールに入っているあるものを当日に手に入れることができた


「優しく開けてあげるからねぇグへへ」


カッターで中にあるものに傷をつけないように開封すると人がすっぽり入ることができるサイズのカプセルが入っていた


「これ重すぎだろ」

よいしょよいしょとベッドに平行に並べると部屋にはもう歩く場所がなくなっていた


「せ、狭い・・・がしかしだ、初日からプレイして最速攻略とかしちゃって有名人になっちゃったり〜」


今日はアグリッヒ・ティラ・オンラインの発売日、フルダイブ技術が詰まった注目の作品である

拓斗は早速カプセルに入りゲームを起動すると意識は暗闇の中へ落ちていき気がつくと白い空間に立っていた

今の服装は村人Aと言った感じだ。

いきなり目の前に画面が現れた


『名前を入力してください』

「相川拓斗だからアイトで」


『容姿を決めてください』


目の前には等身大の自分が写っていた


「特にかえなくていいや」


『それではアグリッヒ・ティラ・オンラインをお楽しみください』


目の前の空間が草原に書き換わる


「おぉここがATOの世界か」


見渡す限り草原が広がっていて心地いい、後ろを見ると町が見えたのでひとまずそこへ行こうと思う


「えっと確か」

何もない空間に指でトントントンとタップすると画面が現れる


「マップマップ〜」

画面にはステータスやアイテムなどの項目が書いてあった。その中のマップを開くと周辺の地図が書いてあった


「始まりの町、そのまんまじゃん」



始まりの町に向かいながらどんな職業につくか考える


「接近戦特化の戦士にしようかな、いや待てよ遠距離火力の炎魔法使いもいいな、いやいや待て待て鍛冶師になって聖剣を作るのもいいなぁ」



職業につくには転職クエストをこなす必要がある。職業を変えたいときは専用のアイテムを使うことで転職可能になるがレベルが1からやり直しである。ユニーク職業と言う特別な職業は通常の職業とは仕様が異なる


「でも、ユニーク職業を探してこの世界を攻略できたらどれだけ楽しいことか」


そんなことを考えながら20分ほど歩くと始まりの町に到着した

石で作られた建物が建ち並ぶこの町は中世ヨーロッパを彷彿とさせる



「まずは転職からだな、戦士の転職クエストは剣を持つNPCに話しかけると始まるんだっけ」


発売前に公開されている職業は19種類あり、各職業のNPCに話しかけるとクエストを受けられるが剣を持っているからと言って全員戦士と言うわけではないので少し探す必要がある


「ひとまず剣を持つ人を探そう」


町を歩くと装備屋と薬屋を見つけたが剣を持つ戦士NPCが見当たらなかった


「いないんだが・・・」


もう少し奥の方に行くと住宅街が広がっていた


「ここにはもっといないよなぁ、そうだ外にいるかもしれないから一回町を出てみるか」


始まりの町北側から外に出ようとすると


「待つんだ君!」

右手に包帯を巻いた青年が声をかけてきた


「君は戦士になりたいのか?戦士よりもいい職業があったらどうする」



(転職クエストっぽいな)

「それならそれになりたいですけど



青年は得意げに

「そうかそうかそれはよかった、うぐ!右腕が疼く!!」


『クエスト』

青年の力を受け取ろう

・報酬

ユニーク職業の転職権利

装備一式


(報酬がユニーク職業!?嬉しいけど嫌な予感が)


「さあ君もやるんだ、ウがぁあああ!右目が疼く!!」


アイトはじーっと見て

(絶対変な職業だよこれ、クエスト終わったら違うの探そ)

「うわー右手ガーイタイー」

雑に終わらせようとするが


「違う違う右手をあげて、こう!」


「・・・はい!右手がうずくぅぅぅ!!」


この後10分ほど繰り返すと


「この力を君に託した」

『クエストクリア』

・報酬

邪剣士

装備一式


「それじゃあまた会おう」

青年はどこかへ去っていった


「やっと終わった・・・」

その日他のプレイヤーの間では中二病が叫んでいると噂になっていた


ヘトヘトになりながらベンチに座り込む


「報酬の確認するかぁ」

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