極上プロテインで乾杯
「ちょっとセク! プレゼント持ってきてないって本気なの!? この前は私があげたじゃない!」
「すまんすまん、冗談だ。半分だけ」
「半分本気ってこと!? どういうことよ!」
プレゼントを持ってきていないことを告げたセクシャルは、現在鬼のような顔をしたアクティに詰められていた。
最初は昔のようにほっぺたをつねろうとしていたアクティであったが、セクシャルの背が伸びたせいで届かず、現在お腹をつねっている。
いや、そりゃそうだよねwwwww自分はプレゼントあげたのに返ってこなかったらブチギレですわwwwwwwwww。
しかも、セクシャルは貴族であり、金に困っているわけでもないのだ。プレゼントの一つや二つくらい、用意しておくべきであろう。
「持ってきていないのは本当だが、プレゼントする気はあるぞ? ほら、何が欲しいんだ。なんでも作ってやる」
「あ…….そういうこと? もう、すっかりセクの能力の事忘れてたから焦っちゃったじゃない! ひどいわ!」
流石のセクシャルでもプレゼントのお返しをしないほど鬼畜ではなかったようだ。
どうやら本人の望むものをその場で作ってあげる形式でプレゼントをするらしい。
まあ、結構いい案だと思うよ?実際なんでも作れるわけだし。セクシャルにプレゼントのセンスなんてあるとは思えないので、本人に選ばせて正解だろう。
しかもアクティは貴族であるので、欲しいものは自分で手に入れることができるし、既にたくさんのプレゼントをもらっている。
下手なものをあげると、既に持っている物をあげたり他の人のプレゼントと被って地雷を踏むことになっていただろうからな。
「すまんすまん。それで、どうする?」
「んーそうね……私が決めるのもいいけど、自分で全く考えようとしないのは腹立つし……じゃあ、セクにしか作れない特別なものとか?」
セクシャルが催促すると、アクティは顎に手をついて悩み始めた。
そして、どうやら結局、セクシャルにプレゼントする物を選ばせる選択肢を取ったようだ。
さっきは冗談で意地悪されたし、少し仕返ししてやるつもりなのだろう。
それと単純に、彼女のいう通りセクシャルの丸投げスタイルに腹が立ったようだ。確かに少しも考えないのは良くないね、うん。
あぁ〜今日は手のひらがよく回るわぁ〜。
「俺にしか作れず、特別な物……つまり、プロテインということだな? いいセンスだ」
「プロテイン……あ! いっつもセクが飲んでたやつね! いいじゃない! それ、ずっと飲んでみたかったし!」
いや、いいんかい。
幼馴染(6歳公爵令嬢)の誕生日にプロテインをプレゼントするキチが居たと思ったら、まさかの承諾。それどころか、手をバタつかせてかなりウキウキである。
「ふむ、これも半分冗談だったのだがな。まさか、プロテインで喜ぶ公爵令嬢が居るとは思わなかった。お前はトレーニーになるべき逸材だ」
まさかの、セクシャルの方が冗談で令嬢がプロテイン本気で欲しがってるパターン。これにはセクシャルもニッコリである。
筋トレ仲間になりそうな人とか見つけた時嬉しいよね。わかるよセクシャル。
「違う違う、それ飲んだら筋肉がつきやすくなるのはセクに散々聞かされたから知ってるけど、別に筋肉つけたいわけじゃないのよ?」
「ふむ。女性トレーニーというのは意外と居る物でな、最初は抵抗があるかもしれないが、恥ずかしがることはない」
アクティトレーニー疑惑が生まれているが、本人は即否定。しかしそれをセクシャルは恥ずかしがっていると解釈したようで無駄なことを言い、またもや腹をつねられていた。
「そもそも私、昔からプロテイン飲んでみたいって言ってたじゃない。セクが自分の分がなくなるからダメって言ってたんでしょ?」
「ぬ、確かにそんなことを言っていたような気がするな。だか、あの時は仕方なかったのだ。自分の飲む分を作るので精一杯だったからな」
記憶を辿ると、確かにそんなこともあったような気がする。
数年前、アクティの家に泊まりに行っていたセクシャルは、向こうの家でも相変わらず筋トレばかりしていた。
そして、そこでセクシャルが度々飲むプロテインをみて、アクティが欲しがっていた。
しかし、その時のセクシャルは今より幼くて魔力が少なく、プロテインを作れる量が少なかった。それから、アクティの有能回復能力により筋トレ頻度が上昇。その結果、普段よりも摂取するプロテインの量が増えていたのだ。
そのためセクシャルは、アクティにプロテインを一滴も飲ませることなく独り占めしていた。確か、あの時もセクシャルはほっぺをつねられていたような……。微笑ましい思い出である。
「ふふっ。まあ、許してあげるわ。そのかわり、特別美味しいのを頂戴ね?」
「ああ、いいだろう。俺の作る最強プロテインはマイ◯ロのホエイプロテインア◯ソレートにも、ウマテ◯ンにも負けぬ!」
「よくわかんないけど美味しいならいいわ」
そしてセクシャルはシェイカーとプロテインを召喚し、プロテインを作っていく。やけに手慣れたその仕草は、さらに貴族達の注目を集めた。
能力を使用する時に発する神々しい緑光に当てられて、キラキラと光る真っ白で繊細な粉。それが水に溶けた瞬間赤色に染まっていく様は一種の芸術作品のようで、思わず歓声が上がる。
「おお……」
「見まして? 真っ白な粉がいきなり鮮やかな赤にかわりましてよ?」
「ええ、キレイね……」
「それに何か、いい香りが……」
セクシャルが生成したのはただのプロテインではなく、クッソ美味いプロテイン。少し生成に手間がかかるし魔力が多く必要なので普段セクシャルはあまり飲まないが、クッソうまいらしい。
「ほらよ、いちごプロテインだ。」
「やった! 流石セク、わかってるわね〜」
そうそう、確か、アクティはイチゴが好きだったはずだ。それも、毎食後にデザートとして2.3粒摘むくらいに。
しかし、よく覚えてたなセクシャル。えらいぞ。
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