赤子トレーニーセクシャル
エチ神がブチギレし、神界ではエチチキンニク戦争が行われている頃。
キン・ニクオ(日本人トレーニー)ことセクシャルは赤子ながらもトレーニングをやり続け、すくすくと成長していった。
「あら、セク様ったらまた変な重りつけてハイハイしてらっしゃるわ」
「どこどこ……ほんとだ。ちょっと変な子だけど、お顔が可愛らしくてたまらないわ!」
いつものように手足に重りをつけて地面を這いずり回っているセクシャルを見つけ、侍女である2人が話に花を咲かせた。
「ふふ、セレナはほんとにセク様がお気に入りよね」
「当たり前でしょ!? 顔が可愛いのはもちろんだけど、前の2人みたいにやばいことはしないし」
「前の2人…….ああ、スメル様とエレクトロニック様のことね……。ふふ、確かにあの2人のときはすごかったわよね……」
侍女の2人が思い出しているのは、セクシャルの兄に当たるスメル・ハラスメントとエレクトロニック・ハラスメントが起こした数々の事件のことであろう。
セクシャルと同じく生まれた直後から能力を発現していたスメルとエレクトロニックだが、その発現した能力に少し問題があったのだ。
まず、長男のスメルの能力は【悪臭】。幼い頃のスメルはこの能力を制御することができず、常に耐えがたい悪臭を撒き散らす災害となったのだ。
しかも、能力とは使っていくほどに成長していくもの。常時能力を使い続けていたスメルの魔力、能力熟練度はどんどん成長していき、スメルが能力の制御を覚えるまでの屋敷には常に悪臭が漂っていたのだ。
「いやぁ〜あの時は本当に辛かったわよ! ずっと口呼吸してなきゃいけないから口が乾燥するし、もし間違えて鼻呼吸しようものなら……恐ろしくて思い出したくもないわ」
「……エレクトロニック様の時も相当屋敷の中は荒れたわよね……それに比べたらほんとうに、ちょっと変なことをしてるだけのセク様が可愛くて仕方がないわね」
そう、当時の屋敷の人々は常に口呼吸を行うことでなんとか耐えていたのだとか。
マスクなどこの世界には存在しないし、ハンカチを鼻に当てたとしても悪臭は貫通して襲ってくる。全く恐ろしい能力である。このエピソードがゲームにて登場していたとしたら、スメルはアデノイド製造機とあだ名をつけられてネットのおもちゃになっていたことだろう。
ちなみに、セクシャルのネット上でのあだ名は『エチエチジャイ◯ン』である。
そして、ハラスメント公爵家次男であるエレクトロニックの能力は【電磁波】である。
電磁波による攻撃、嫌がらせは現代においても稀に存在するらしく、皮膚のただれ、頭痛、痒み、吐き気などの原因になるらしい。
そのような人体に悪影響を与えるような能力を、スメルと違いエレクトロニックは故意的に嫌がらせの手段として使っていた。流石はハラスメント一族である。
そんなエレクトロニックの被害にあった使用人は多く存在し、それが原因で多くの使用人が辞めようとしたこともあったのだとか。
結局その騒動はエレクトロニックを別館へ閉じ込め、教育を施すことで収まったらしい。
そんな兄弟に比べたら、確かにセクシャルはまだマシなほうである。彼がいじめているのは自身の肉体と精神のみなのだから。
赤子がプロテインをビルダー飲みする光景はきしょすぎるが、そういった背景もあって周囲の人間たちには受け入れられていた。
※ビルダー飲み……プロテインを粉のまま口の中に入れ、その後に口に水を含み、口の中で粉を溶かして飲む方法。粉を溶かすために顔を振ってグチュグチュしている姿はとてもきしょい。
ところで、成長期に筋トレをすると成長が止まるだとか、そういう話を聞いたことはないだろうか。
「筋トレ?……んー俺はまだ背が伸びるかもしれないからまだやめとく」
とその理論を理由にして筋トレから逃げてきた人も少なからず存在するだろう。
実際、筋トレのせいで成長が止まると言う人もいれば、筋トレを正しい方法で行えば逆に成長を促す効果があると話す人もいる。
どっちが正解なのかはまあどうでもよくて、セクシャルのような赤子がゴリゴリのトレーニングを行ったら、成長に何かしらの影響があるのは想像に容易いだろう。
しかし、セクシャルに至ってはその心配は無用であると言っておこう。
ご都合主義の主人公補正があることはもちろん、有り余る生命力という名の精力に、悪役としての優秀なDNA。そして、体に合ったトレーニング器具を作り出せる能力。
それに何より重要なのが、トレーニング歴40年のキン・ニクオの知識、経験である。
玄人であるキン・ニクオがセクシャルの筋トレにおける最強遺伝子を効率的に使いこなすことで、爆発的な速度でセクくんの肉体は成長していった。
ただし、本来爆発的な成長を迎えるはずだった【デカ・マラ】を犠牲にして……。
男として勿体無いような気もするが、普通のサイズがあれば十分であろう。形はそのままなのでカリ高だし。
それにもしかすると、幼少期からの下半身トレーニングにより股関節周りの血流の流れが増進し、自然の力で【デカ・マラ】を手にする可能性だってある。
しかし、イカレ一族出身の脳筋であるセクシャルにそういうことをできるチャンスが巡ってくるとは思えないが……。
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